第356条【競業及び利益相反取引の制限】

第356条【競業及び利益相反取引の制限】

① 取締役は、次に掲げる場合には、株主総会において、当該取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない。

一 取締役が自己又は第三者のために株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするとき。

二 取締役が自己又は第三者のために株式会社と取引をしようとするとき。

三 株式会社が取締役の債務を保証することその他取締役以外の者との間において株式会社と当該取締役との利益が相反する取引をしようとするとき。

② 民法第108条の規定は、前項の承認を受けた同項第2号又は第3号の取引については、適用しない。

目次

超訳

② 株主総会の承認を受けた取締役が自己又は第三者のためにする株式会社との取引については、自己契約・双方代理は禁止されない。

解釈

承認を受けずに取引をした場合、当該競業取引自体は有効だが、取締役には任務懈怠責任が発生する(会423条参照)。

①一 「自己又は第三者のために」とは、「自己又は第三者の名義において」という意味である。また、取締役が競業関係にある他の会社の代表取締役に就任すること自体は「取引」に該当しない(他社の代表取締役として当該他社のために競業行為を行う場合は「取引」に該当する。)。

判例

1.利益相反取引の効果

会社の承認を得ずに利益相反取引をした場合、会社と取締役との間の取引は無効となる。ただし、会社は第三者の悪意(当該取引が利益相反取引に該当し、かつ、取締役が会社の承認を得ていないことを知っていること)を証明しない限り、第三者には取引が無効であることを主張できない(最判昭43.12.25、最判昭46.10.13)。

② 会社の承認を得ずに利益相反取引をした場合、取締役の側から無効を主張することはできない(最判昭48.12.11)。

2.会社の承認が不要となる場合

① 会社と取締役間に利益相反取引がなされる場合でも、当該取締役が会社の全株式を所有し、会社の営業が実質上その取締役の個人経営にすぎないときは、その取引によって両者の間に実質的に利害相反する関係を生ずるものでなく、その取引について取締役会の承認を必要としない(最判昭45.8.20)。

② 取締役と会社との取引が株主全員の合意によってされた場合には、その取引につき取締役会の承認を要しない(最判昭49.9.26)。

3.利益相反に該当するか否か

① 株式会社に対し、取締役が無利息、無担保で金銭を貸し付ける行為は、取締役会の承認を要する利益相反取引には当たらない(最判昭38.12.6)。

AB両株式会社の代表取締役である甲が、A株式会社の債務について、B株式会社を代表してなした保証契約は、取締役会の承認を要する利益相反取引(間接取引)に当たる(最判昭45.4.23)。

比較

競業・利益相反取引の承認(株式会社と持分会社)

株式会社

原則:株主総会の普通決議(356条1項)

取締役会設置会社では、取締役会決議(365条1項)

持分会社

競業取引:当該社員以外の社員全員の承認(594条1項)

利益相反取引:当該社員以外の社員の過半数の承認(595条1項)

問題

取締役会を設置していない株式会社において、当該会社の取締役が自己のために当該株式会社の事業の部類に属する取引をしようとするときは、株主総会においてその承認を受けなければならない

【平18-33-オ改:○】

問題

取締役会設置会社であるA社の代表取締役Xが、A社の取締役会の承認を受けることなく自己のためにA社と取引をした場合であっても、Xは、A社に対し、取締役会の承認の欠缺を理由として当該取引の無効を主張することができない

【平24-30-ア改:○】

問題

取締役会設置会社であるA社の代表取締役Xが、A社に対して無利息かつ無担保で金銭の貸付けをしようとする場合には、Xは、A社の取締役会の承認を受けることを要しない

【平24-30-エ改:○】

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