司法書士試験<過去問題肢別チェック ■商業登記法「登記手続通則」>
問題1 商業登記における登記官の審査は、添付書類に基づく形式的審査であって、申請に係る登記すべき事項の存否等の実体関係には及ばない。○か×か?
誤り。登記官の審査は、確かに形式的審査であるが、登記簿・申請書・添付書面という資料を基にするのであれば、申請内容の実体関係の効力についても審査権が及ぶ(商登24条10号)。【平12-28-ア】
問題2 会社の登記については、一定の期間内に登記を申請することが義務付けられていることが多いが、この期間が経過しても、登記の申請はすることができる。○か×か?
正しい。登記期間が経過した場合は、登記義務の懈怠として過料の制裁を受ける(会976条1号)が、登記申請の却下事由(商登24条)には該当しないから、登記申請をすることができる。【平12-28-ウ】
問題3 商業登記法は、商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することを目的として制定されている。○か×か?
正しい。商業登記法の目的は、商法、会社法その他の法律の規定により登記すべき事項を公示するための登記に関する制度について定めることにより、商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することである(商登1条)。【平26-28-ア】
問題4 添付書類の内容を審査して登記事項につき無効又は取消しの原因がある場合には、登記をすることができないため、議事録の記載から取締役会に出席した取締役が定足数に満たないことが明らかであるときは、議事録に登記事項が可決された旨の記載があっても、その事項の登記申請は却下される。○か×か?
正しい。登記事項につき無効又は取消しの原因がある場合、その登記申請は却下される(商登24条10号)。取締役会の出席取締役の員数が不足する場合、その決議は無効である(最判昭41.8.26)から、登記の申請は却下されることになる。【平13-28-オ】
問題5 第三者Cが、株式会社A社の取締役会が開催された事実がないのに取締役会議事録を偽造し、自らをA社の代表取締役として登記した場合において、真の代表取締役Bがそのことに気付く前に、第三者Dがこの登記を信頼してA社の代表取締役と称するCと契約をしたときは、Dは、A社に対して契約の履行を請求することができる。○か×か?
誤り。故意又は過失により不実の事項を登記した者は、その事項の不実であることを善意の第三者に対抗することができない(会908条2項)が、本肢の場合は、当該不実の登記につき、登記をした者(株式会社A社)に帰責事由がないと考えられるので、株式会社A社は、責任を負わない。【平14-30-3】
問題6 登記すべき事項は、登記の後であっても、正当の事由によってこれを知らない第三者には対抗することができない。○か×か?
正しい。登記すべき事項は、登記の後は第三者の悪意が擬制されるため、善意の第三者にも対抗できる(会908条1項前段)。このような登記の効力を積極的公示力という。しかし、正当の事由によってこれを知らない第三者には、登記されている事項といえども対抗することができない(会908条1項後段)。正当の事由によって知らない善意の第三者について、悪意の擬制をすることは酷だからである。【平16-29-1】
問題7 株主総会における取締役の選任の決議を無効とする判決が確定した場合であっても、当該取締役の選任の登記を抹消する登記をしなければ、取締役の選任の決議が無効である事実を善意の第三者に対抗することができない。○か×か?
正しい。登記すべき事項は、登記の後でなければ、善意の第三者に対抗することができない(消極的公示力:会908条1項前段、商9条1項前段)。したがって、取締役の選任の登記を抹消する登記をしなければ取締役の選任の決議が無効である事実を善意の第三者に対抗することができない(東京地判大8.3.27)。【平18-28-ウ】
問題8 商人が商号を譲渡した場合において、その登記がないときは、当該商人は、悪意の第三者に対しても、商号譲渡の事実を対抗することができない。○か×か?
正しい。商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない(商15条2項)。この第三者については、悪意の第三者も含まれると解されている。したがって、商人が商号を譲渡した場合において、その登記がないときは、当該商人は、悪意の第三者に対しても、商号譲渡の事実を対抗することができない。【平18-28-オ】
問題9 取締役を辞任したが、法令又は定款に定める員数を欠いていないにもかかわらず会社が退任による変更の登記をしないときは、辞任した取締役は、当該登記を命ずる確定判決を得て、自ら退任による変更の登記を申請することができる。○か×か?
正しい。取締役が辞任した場合において、当該取締役が取締役の権利義務を承継するものではなく、退任登記が可能であるにもかかわらず、会社が退任による変更の登記をしないときは、辞任した取締役は、当該登記を命ずる確定判決を得て、自ら退任による変更の登記を申請することができる(昭30.6.15-1249号)。【平14-31-イ】
問題10 株式会社A社が新設分割により株式会社B社を設立するときは、B社の代表取締役となるべき者は、B社の新設分割による設立の登記の申請及びA社の新設分割による変更の登記を申請することができる。○か×か?
誤り。株式会社の新設分割がなされた場合、設立会社における設立の登記は、設立会社の代表取締役となるべき者からの申請によるが、分割会社における変更の登記は、分割会社の代表取締役からの申請による(平13.3.1-599号)。したがって、本肢の場合、B社の新設分割による設立の登記はB社の代表取締役となるべき者が申請し、A社の新設分割による変更の登記はA社の代表取締役が申請することになる。【平14-31-エ】
問題11 株式会社A社が株式移転により株式会社B社を設立するときは、A社の代表取締役は、B社の株式移転による設立の登記を申請することができる。○か×か?
誤り。株式移転による設立登記は、完全親会社となる会社の代表権を有する取締役となるべき者が申請する。したがって、本肢の場合、株式移転による株式会社B社の設立登記を申請するのは、A社の代表取締役ではなく、B社の代表取締役となるべき者である。【平14-31-オ】
問題12 株式会社の支店に置かれた支配人の住所の変更の登記の申請人は当該支配人であり、登記を申請すべき期間の起算日は支配人の住所に変更を生じた日である。○か×か?
誤り。支配人の登記を申請する場合の申請人は、会社の代表者である。そして、支配人の登記の登記期間は定められていない(会10条以下参照)。【平8-31-イ】
問題13 登記の申請書に押印すべき者が印鑑を提出する場合には、提出に係る印鑑につき市町村長の作成した証明書で、作成後3か月以内のものを添付しなければならない。○か×か?
誤り。商業登記規則9条5項1号は、商業登記規則9条1項後段の規定により印鑑届書に「押印した印鑑」(実印)について、市町村長作成に係る印鑑証明書で作成後3か月以内のものを添付する旨を規定している。「提出に係る印鑑」についてではない。【平10-31-イ】
問題14 株式会社の代表取締役が交替した場合、後任の代表取締役は、前任者が登記所に提出している印鑑と同一の印鑑を登記所に提出する印鑑とするときは、印鑑の提出を要しない。○か×か?
誤り。会社代表者の交替があった場合、たとえ新代表者が旧代表者と同じ印鑑を使用するときでも、改めて印鑑の提出をしなければならない(広島高判昭56.9.10)。【平10-31-エ】
問題15 会社の代表者が印鑑の提出をした登記所以外の登記所に会社の支配人の印鑑を提出する場合には、当該代表者が印鑑の届書に登記所が作成した作成後3月以内の当該代表者の印鑑証明書を添付してしなければならない。○か×か?
誤り。支配人がその印鑑を登記所に提出しようとする場合には、申請書に①商人が支配人の印鑑に相違ないことを保証した書面、②(商人が当該登記所に印鑑を提出していないときは)①の書面の印鑑につき登記所の作成した証明書を添付して、当該「支配人」が申請することを要する(商登規9条5項3号)。代表者が申請するのではない。【平15-30-ア】
問題16 代表取締役が数人いる株式会社について、これらの代表取締役が同一の印鑑を登記所に提出することはできない。○か×か?
正しい。代表取締役が数人いる株式会社について、当該代表取締役らが同一の印鑑を登記所に提出することはできない(昭43.1.19-207号)。【平17-31-エ】
問題17 株式会社の代表取締役がその提出に係る印鑑の廃止の届出をするときは、当該印鑑に係る印鑑カードを提示すれば、当該届出に係る書面に当該印鑑を押印することを要しない。○か×か?
正しい。印鑑の提出をした者は、印鑑届出事項のほか、氏名、住所、年月日及び登記所の表示を記載し、当該印鑑を押印した書面で印鑑の廃止の届出をすることができる(商登規9条7項前段)。この場合において、印鑑カードを提示するときは、押印を要しない(商登規9条7項後段)。【平21-32-イ】
問題18 株式会社がその本店を他の登記所の管轄区域内に移転したために新本店所在地を管轄する登記所に印鑑を提出する場合において、当該印鑑が旧本店所在地を管轄する登記所に提出している印鑑と同一であるときは、当該株式会社の代表取締役は、新本店所在地を管轄する登記所に提出する印鑑を明らかにした書面に押印した印鑑について市町村長の作成した証明書を添付することを要しない。○か×か?
正しい。本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合、新本店所在地を管轄する登記所への印鑑の提出は、旧本店所在地を管轄する登記所を経由してしなければならない(商登51条1項後段)。この場合に、提出する印鑑が旧本店所在地を管轄する登記所に提出している印鑑と同一であるときは、印鑑届出書の添付書面(商登規9条5項各号)の添付を省略することができる(平10.5.1-876号、平11.4.2-667号)。【平21-32-エ】
問題19 登記簿上存続期間の満了している会社の代表取締役は、印鑑証明書の交付を受けることができない。○か×か?
正しい。登記簿上の存続期間が満了している会社においては、すでに代表取締役はその地位を失っており、代表権を有しないので、印鑑証明書の交付を受けられない(昭42.1.31-244号)。【平7-33-ア】
問題20 職務執行が停止された旨の登記がされている代表取締役は、印鑑証明書の交付を受けることができない。○か×か?
正しい。職務執行を停止された代表取締役は、その期間は、代表権を有しない。したがって、印鑑証明書の交付を受けることはできない(昭40.3.16-581号)。【平7-33-ウ】
問題21 会社について会社更生法による更生手続が開始された場合には、管財人は登記所に印鑑を提出して印鑑証明書の交付を受けることができるが、当該会社の代表取締役は登記所に印鑑を提出していても印鑑証明書の交付を受けることができない。○か×か?
誤り。会社について会社更生法による更生手続が開始された場合、事業経営権等が取締役に付与されなかったときは、管財人は登記所に印鑑を提出して印鑑証明書の交付を受けることができ(昭42.9.14-716号)、当該会社の代表取締役も、登記所に印鑑を提出していれば、「会社更生法による更生手続開始決定の登記がある」旨の付記がされた印鑑証明書の交付を受けることができる(昭40.3.16-581号)。【平13-35-ア】
問題22 会社について破産手続開始の決定がされた場合には、破産管財人は登記所に印鑑を提出して印鑑証明書の交付を受けることができず、当該会社の破産手続開始の決定がされた当時の代表取締役も登記所に印鑑を提出していても印鑑証明書の交付を受けることができない。○か×か?
誤り。会社について破産手続開始の決定がされた場合には、破産管財人は、登記所に印鑑を提出して印鑑証明書の交付を受けることができる(商登12条1項)。また、会社の破産手続開始の決定がされた当時の代表取締役も破産手続開始の登記がある旨が付記された印鑑証明書の交付を受けることができる(平23.4.1-816号)。【平13-35-ウ】
問題23 登記の更正を申請する場合には、その更正すべき登記により抹消する記号が記録された登記事項があるときであっても、当該登記事項の回復を同時に申請する必要はない。○か×か?
正しい。登記の更正をする場合は、更正すべき登記事項を抹消する記号を記録し、その登記により抹消する記号が記録された登記事項があるときは、登記官が「職権で」その登記を回復する(商登規99条1項)。したがって、当事者が抹消する記号が記録された事項の回復を申請する必要はない。【平14-29-ウ】
問題24 株式会社が株主総会の決議により、準備金の額の減少によってする資本金の額の増加による変更の登記をした後、準備金が存在しなかったことを理由として先の準備金の額の減少によってする資本金の額の増加決議を取り消すことにより資本金の額の登記の更正を申請することはできない。○か×か?
正しい。本肢の場合、登記された事項が実体法上無効である。この場合、資本金の額の更正ではなく、準備金の額の減少によってする資本金の額の増加による変更の登記の抹消をすることになる。【平14-29-オ】
問題25 取締役4名及び監査役2名が選任されたことが記載されている株主総会の議事録を添付して取締役4名の就任による変更の登記のみが申請され、当該変更の登記がされているときは、当該株式会社は、監査役2名の就任につき遺漏による登記の更正を申請することができる。○か×か?
誤り。取締役4名及び監査役2名が選任されたにもかかわらず、取締役4名の就任による変更の登記のみが申請され、変更が登記されている場合、当該変更登記には錯誤又は遺漏はない。監査役2名の就任については、登記しなければならない事項を懈怠して登記していない状態にすぎないため、遺漏による登記の更正を申請することはできない。【平24-33-ア】
問題26 登記官の過誤により登記に遺漏が生じたときは、当該株式会社は、その登記の更正を申請することができない。○か×か?
誤り。登記官の過誤により登記に遺漏が生じたときでも、登記に遺漏があれば、当該株式会社は、その登記の更正を申請することができる(商登132条1項)。なお、登記官の過誤により登記に遺漏が生じた場合、登記官は、遅滞なく、監督法務局又は地方法務局の長の許可を得て、登記の更正をしなければならない(商登133条2項)。【平24-33-エ】
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