問題1 売買予約を原因とする所有権移転請求権の仮登記がされた場合における当該売買予約上の権利の譲渡は、仮登記に権利移転の付記登記をしても、別に債権譲渡の対抗要件を具備しなければ、第三者に対抗することはできない。○か×か?

誤り。売買予約がされた場合の予約上の権利を譲渡した場合、譲渡の対抗要件としては、債権譲渡の場合に準じて、予約義務者に対する通知又はその承諾を要する(民467条)が、売買予約に基づく所有権移転請求権仮登記がされている場合には、当該仮登記に移転の付記登記をするだけで、第三者対抗要件となり得る(最判昭35.11.24)。【平15-17-ウ】
問題2 所有権に関する仮登記がされた後に、相続による所有権の移転の登記がされたときは、当該所有権の移転の登記の登記名義人である相続人は、所有権に関する仮登記に基づき本登記を申請する場合における登記上の利害関係を有する第三者に当たらない。○か×か?

正しい。仮登記義務者の相続人は、仮登記義務者の地位を承継するので、当該仮登記については、当事者の地位に立つ。したがって、当該相続人は当該仮登記の本登記においては登記申請の当事者であって、登記上の利害関係人となるものではない。【平17-21-イ】
問題3 所有権に関する仮登記がされた後に、数次の売買による所有権の移転の登記が連続してされたときは、現在の所有権の登記名義人のみが所有権に関する仮登記に基づき本登記を申請する場合における登記上の利害関係を有する第三者に当たる。○か×か?

正しい。所有権に関する仮登記がされた後に、数次の売買による所有権移転の登記が連続してされた場合、仮登記の本登記に際しての登記上の利害関係人は現在の所有権の登記名義人であり、中間の所有権登記名義人は該当しない(昭37.7.30-2117号)。中間の所有権登記名義人は、仮登記の本登記によって現に不利益を被る者ではないからである。【平17-21-オ】
問題4 真正な登記名義の回復を原因とする所有権の移転の請求権の仮登記を申請することはできない。○か×か?

正しい。本来、真正な登記名義の回復という権利の移転原因は存しないのであるから、その請求権というものも存在せず、したがって、当該請求権保全の仮登記を申請することはできない。【平19-23-イ】
問題5 同一の不動産について設定された数個の抵当権の順位を変更する旨の各抵当権者の合意に基づく当該抵当権の順位の変更の仮登記を申請することはできない。○か×か?

正しい。不動産登記法105条1号の仮登記は、権利の保存等があった場合において、必要な情報の提供ができない場合に認められるところ、抵当権の順位の変更は登記が効力要件(民374条2項)なので、順位変更にかかる合意があったのみでは、権利の保存等(本肢においては変更)があった場合に該当しない。したがって、順位変更の当事者の合意があったのみでは、その変更の仮登記を申請することはできない。【平19-23-オ】
問題6 所有権の移転の仮登記をした後でも、買戻しの特約の仮登記を申請することができる。○か×か?

正しい。買戻しの特約の登記は、売買による所有権移転の登記と同時にしなければならない(民581条1項、昭35.3.31-712号)が、所有権移転の登記について仮登記をするときは、同時に買戻しの特約の仮登記をすることもできるが、仮登記については、必ずしも同時にすることを要せず、本登記において同時に申請すればよい(昭36.5.30-1257号)。【平24-22-イ】
問題7 抵当権の設定の仮登記の登記権利者が死亡した場合の相続を登記原因とする当該仮登記の移転の登記は、仮登記でされる。○か×か?

正しい。1号仮登記された抵当権を他に移転した場合は、登記の目的を何番抵当権移転仮登記として、付記登記の仮登記により実行される(記録例584)。これは、登記原因が相続であっても異なることはない。【平24-22-エ】
問題8 代物弁済の予約を仮登記原因とする所有権移転請求権保全の仮登記の本登記の申請は、非金銭債務を担保するためにされたものであることを証する情報を提供すれば、登記原因の日付が仮登記原因の日付として登記されている日から2か月の期間の経過後の日でなくても、することができる。○か×か?

正しい。担保仮登記であることが登記記録上明らかな仮登記に基づく本登記を申請する場合、申請情報の内容とすべき登記原因の日付は、仮登記原因の日付として登記されている日から2か月の期間の経過後の日であることを要する。しかし、代物弁済の予約を原因とする仮登記の本登記の申請であっても、申請情報と併せて、非金銭債務を担保するためにされたものであることを証する情報を提供した場合には、当該仮登記を担保仮登記として取り扱う必要はない(昭54.4.21-2592号)。【平25-26-エ】
問題9 抵当権の設定の登記について当該抵当権の放棄による抹消の仮登記がされた後、債権譲渡による当該抵当権の移転の登記がされている場合には、当該抵当権の譲受人を登記義務者として、当該仮登記に基づく本登記を申請することができる。○か×か?

正しい。抵当権抹消の仮登記後、抵当権移転登記がされた場合において、抵当権抹消の仮登記の本登記を申請するときは、登記義務者は抵当権の譲渡人又は譲受人のいずれでもよい(昭37.10.11-2810号)。【平25-26-オ】
問題10 土地に代物弁済予約を登記原因とする所有権移転請求権の保全の仮登記がされている場合において、当該所有権移転請求権について、滞納処分による差押えの登記の嘱託をすることはできない。○か×か?

誤り。代物弁済予約を登記原因とする所有権移転請求権の保全の仮登記がされている場合において、当該所有権移転請求権について、滞納処分による差押えの登記の嘱託をすることができる(昭32.8.8-1431号)。【平27-24-ウ】
問題11 停止条件付所有権の移転の仮登記がされた土地につき、当該仮登記の登記名義人に錯誤があるときは、真正な登記名義の回復を登記原因として、当該仮登記の移転の登記を申請することができる。○か×か?

誤り。停止条件付所有権の移転の仮登記がされている不動産について、「真正な登記名義の回復」を原因とする当該仮登記の移転の付記登記を申請することはできない(昭41.7.11-1850号)。仮登記の登記名義人に錯誤があるということは、当該仮登記は当初から無権利者の名義でされた無効な登記であったことになるが、このような無効な登記が真正な登記名義の回復を原因として移転することは観念できないためである。【平27-24-エ】