第101条【代理行為の瑕疵】
① 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
② 相手方が代理人に対してした意思表示の効力が意思表示を受けた者がある事情を知っていたこと又は知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとする。
③ 特定の法律行為をすることを委託された代理人がその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。
【解釈・判例】
1.代理における行為者は代理人自身であるから、代理行為の有効要件の存否や事実の知・不知は、原則として代理人を基準に判断する(1項、2項)。しかし、この原則を貫くと不都合が生じる場合があるから、例外的に、本人の主観的事情が代理行為の効力に影響を及ぼすことを認めた(3項)。
2.意思の不存在とは、代理人の心裡留保・虚偽表示であり、無効の主張権者は本人である。また、代理人の意思表示に瑕疵がある場合(代理人の錯誤、代理人が詐欺・強迫を受けた場合)、取消権者は本人である。
3.代理人が相手方に詐欺を行った場合の相手方の意思表示について、本条1項及び2項は適用されない。この場合の処理は96条1項による。
4.ある事情を知っていたか否かで法律効果が異なる場合としては、即時取得(192条)が挙げられる。代理人が悪意有過失であれば、本人は即時取得できなくなる。
5.代理人と相手方が通謀虚偽表示を行った場合
本人Aの代理人Bが、相手方Cと通謀して、Cを借主として虚偽の消費貸借契約を締結した場合、Aは94条2項の第三者に当たらないので、AはCに貸金の返還を請求できないのが原則である。しかし、そもそも代理人には相手方と通じて本人を騙す権限などないのであるから、Bは代理人として行動したのではなく、単に相手方の心裡留保に基づく意思を本人に伝達する機関にすぎない。したがって、AがCの真意を知り又は知り得べき場合でない限り、AはCに貸金の返還を請求することができる(大判昭14.12.6)。
【問題】
Aの代理人であるBは、Cに対し物品甲を売却した。Bの意思表示がCの詐欺によるものであったときは、Bは、その意思表示を取り消すことができるが、Aは、Bによる意思表示を取り消すことができない
【平22-5-ウ改:×】