民法 第94条【虚偽表示】

第94条【虚偽表示】

① 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

② 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

目次

【解釈・判例】

1.相手方と通謀して行った虚偽の意思表示は、当事者間では無効である(1項)。

2.本条2項の趣旨は、虚偽の外観を信頼した者を保護する点にあることから、通謀によらない虚偽の登記を信頼した第三者にも本条2項が類推適用され得る。

3.婚姻、離縁、縁組等、当事者の意思が尊重される身分行為に対しては本条2項の適用はなく、常に無効となる(742条1号、802条1号)。

【暗記】

 1.94条2項の第三者に関する論点

第三者の意義 虚偽表示の当事者及びその包括的承継人以外で、虚偽表示の外形を基礎として、新たに独立した法律上の利害関係を有するに至った者(最判昭42.6.29)
第三者の範囲 該 当 ① 不動産の仮装譲受人から更に譲り受けた者(大判昭6.10.24、最判昭45.7.24)

② 不動産の仮装譲受人から抵当権を取得した者

③ 仮装の抵当権者からの転抵当権者(最判昭55.9.11)

④ 虚偽表示の目的物の差押債権者(最判昭48.6.28)

⑤ 仮装債権の譲受人(大判昭13.12.17)

非該当 ① 1番抵当権が仮装で放棄され、順位が上昇したと誤信した2番抵当権者

② 代理人や法人の代表者が虚偽表示した場合の本人や法人

③ 債権の仮装譲受人から取立てのために債権を譲り受けた者

④ 債権の仮装譲受人の単なる債権者(債権者が債権者代位権を行使する場合も同様、大判昭18.12.22)

⑤ 仮装譲渡された債権の債務者(弁済後は該当)

⑥ 土地の仮装譲受人が建物を建築してこれを賃貸した場合の賃借人(最判昭57.6.8)

善意の判定時期 第三者の善意・悪意は、当該法律関係につき第三者が利害関係を有するに至った時を基準として決する(最判昭55.9.11)。
無過失要件 不要(大判昭12.8.10)
対抗要件 不要(最判昭44.5.27)
転得者 ① 第三者・悪意② 転得者・善意 転得者は「第三者」に該当するとして保護される(最判昭45.7.24、50.4.25)。
① 第三者・善意② 転得者・悪意 転得者は権利を取得できる(大判昭6.10.24、絶対的構成)。

2.94条2項の類推適用

要件 ① 虚偽の外観を作出した本人の帰責性

② 虚偽の外観の存在

③ 第三者の外観への信頼(善意)

具体例 (1) 真の権利者の意思と作出された外形が対応する場合

① Aが建物を建築したが、B名義でその建物の所有権保存登記を経由していたところ、Bが無断で善意のCに対して当該建物を譲渡した場合。

→ 善意のCを保護する(最判昭41.3.18)。

② Bが、A所有の不動産の登記名義を無断でB名義にし、Aもそれを黙認していたところ、善意のCが、Bからこれを買い受けた場合。

→ 善意のCを保護する(最判昭45.9.22、48.6.28)。

(2) 真の権利者の意思と作出された外形が対応しない場合

A所有の不動産について、B名義の仮登記を経由したところ、Bが、Aの印鑑を無断使用して本登記に改め、Cに処分した場合。

→ Cは、94条2項及び110条の法意に照らし、善意無過失であれば保護される(最判昭43.10.17)。

A所有の甲建物について、AB間の仮装の売買契約に基づきAからBへの所有権の移転の登記がされた後に、BがCに対して甲建物を譲渡し、更にCがDに対して甲建物を譲渡した場合において、CがAB間の売買契約が仮装のものであることを知っていたときは、Dがこれを知らなかったときであっても、Dは、Aに対し、甲建物の所有権を主張することができない

【平27-5-イ:×】

【問題】

A所有の甲建物について、AB間の仮装の売買契約に基づきAからBへの所有権の移転の登記がされた後に、Bの債権者Cが、AB間の売買契約が仮装のものであることを知らずに甲建物を差し押さえた場合であっても、CのBに対する債権がAB間の仮装の売買契約の前に発生したものであるときは、Aは、Cに対し、AB間の売買契約が無効である旨を主張することができる

【平27-5-ウ:×】

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