「合格に必要なことは、基本事項の徹底と合格するという気持ち」吉澤 遼さん

吉澤 遼さん

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司法書士試験受験の動機

一言で言えば、父の影響です。
周りが就活に忙しくなって来た頃、自分はどうしたいのだと考えた所、「時代こそ違えど父と同じ職業に就き、そこで生きて、そこからの景色を見てみたいな」と思い、司法書士試験の受験を決めました。「喜んでくれるかな」と思いながらの自分の進路を父に伝えると、かなり反対されました。理由はキツイから。この仕事は自分だけで良いと。悪い事は言わないから辞めておけ!と言われました。ここまでハッキリ言われて、逆に清々しい気分でしたし、父なりの愛情も感じましたし、今まで仕事に関してキツイなどという言葉を父から聞いた事が無かったので、父の思いとは裏腹に却って闘志が湧きました。これが受験の動機です。

0年目から一年目

予備校に行く選択肢は無かったです。というのも大学受験の際、完全な独学だったので、好きなように勉強する事が自分には合っているし、予備校に行って受かるより、独学で受かった方がきっと価値があると…。今思えば変な思い上がりの様なものがありました。 自分の中では、在学中一発合格を目指すつもりでいました。が4年次の4月あたりまで過去問はおよそほとんどの科目にも手が回りませんでした。分厚い基本書を一生懸命読んで10ヶ月で民法総則と、物権総論、会社法半分までしか読めませんでした。

大学4年次の本試験の直前に慌てて過去問を解いてみたら、何もわからない。あれだけ苦労して基本書を読んだのにわからない。絶望感でいっぱいになりました。このままじゃ基本書を全科目読み終わるまでに数年、過去問を解くのに数年。途方もないな。と感じました。そこで、体験記を読み漁った所、合格者の多くは、大なり小なり、予備校を利用している現状を知りました。

そして大学4年次の8月にいくつも予備校を回ってみた所、結局は自分次第だな、と感じたので受講料がリーズナブルなクレアールに決めました。当時の私は独学の弊害である、勉強方法の迷いを払拭出来れば良し。と考えていたのです。民法と不動産登記法は、1日6〜9時間分の講義を1.5倍速で見ました。講義を通して感じたのは、まさに目からウロコでした。体系的に講義が行われ、自分一人で勉強していた時はメリハリが全くつかなかったのに、あるキーワードを中心に、色々な側面から各科目各分野を紐解いていき、制度の相互関係が見えてきました。

以前、過去問を解いても全く分からなかったのが講義を聴いて、整理してみたら解けるから不思議でした。過去問は一年目で各科目10回は回しました。そして、自信をつけて臨んだ初受験!結果は午前20問、午後18問。惨敗でした。「え?何で?」という感じでした。受かるか否かは分からないけど、いい勝負は出来るはず!と思っていたので、全然納得出来ませんでした。

二年目

本試験が終わり、本試験の問題と自分が当日にどう解いたかをよく思い出してみた所、ある事に気付きました。過去問は何度も何度もやっている。答練は、知識の細かさや正確さを聞いてくる。本試験は、基本的事項を言葉巧みにうまく隠して聞いてきているな。と感じました。

一年目にした勉強は緻密さと理解するということが全然足りず、条件反射で過去問の正解を出せる様になったにすぎない。と感じました。それだと、同じ内容が聞かれていても、文章を変えられると対応が遅れてしまい、結局間違えてしまいます。表面的な勉強では幾らやっても、幹の理解が足りない為に、結局は問題に振り回されてしまいます。
スピード重視だった勉強から脱却し、過去問の解説に出てくる条文を丹念に引き、丁寧に進んでいきました。併せてクレアールの中上級講座を受講しました。中上級講座はある程度、基本知識(過去問で何度も問われている論点)は頭に入っている事が前提で、話が進んでいきます。

そして、丁寧に過去問を繰り返し、自信をつけて臨んだ本試験。結果は不合格。午前26問、午後25問でした。基準点にピッタリですが午後の部が基準点を超えました。前年に比べると進歩を感じました。その点は良かったですが、この年、更なる明確な克服すべき課題が見つかりました。こちらの方が収穫でした。それは会社法、商業登記法でした。
この年の会社法9問中5問間違い。商業登記法8問中5問間違いでした。この2科目さえ他科目並みに取れていたら合格点が取れていたな。と思いました。

三年目

夏の段階から会社法の解説に出てくる条文を一つも余すこと無く引き、重複した条文は正の字で回数を付けて行く事をしました。続けていくと、同じ条文が角度を変えて、色々な分野から聞かれている事に気付きました。この年は登記六法がボロボロになりました。会社法が克服できれば、実体関係を掴むのが容易になり、商業登記の理解も早くなりました。

他の科目は、昨年と同様にやれば大丈夫だと思っていたので、昨年までの過去問を丁寧に回すスタイルを踏襲しました。

そして臨んだ本試験。結果は午前28問、午後26問でした。書式もまずまずだったので微かな期待を持つも不合格!会社法、商業登記法は15問中14問正解で飛躍しましたが、他の科目で取りこぼしていました。あっちを立てればこっちが立たずで、難しいなぁと思いました。ですが一年目より二年目、二年目より三年目と、少しずつですが点が伸びているので、また頑張ろうと切り替えました。

余談

話が前後して申し訳ないのですが、三年目あたりから自分の中で、やばいなと感じつつも、悠長な気持ちが芽生えていました。

私は補助者のアルバイトをしながら勉強していました。なお、事務所は何回か変えていました。
一年目は初学者でしたので勉強のみでしたが、二年目は、週2日のアルバイトをし、三年目は勉強のペースが掴めていたので、週3日のアルバイトを。というように段階的に仕事をする割合を増やしていきました。

私は三年目までは実家暮らしだったので、自分で使えるお金が月に8万円位あれば、不自由しませんでした。アルバイトの無い日は昼まで寝て、午後から夜10時位まで勉強し、家に帰ってからは勉強せずに、ゲームをしたり、だらだらテレビを見たり、とても本気で勉強しているとは見えない堕落した生活をしていました。後ろめたさはあるけれど、別に最低限やれば他は遊んでいてもいいでしょ。こんな感じでも、毎年点数は伸びているし、このまま続けてれば、そのうち受かるでしょ?とも思っていました。

四年目

三年目の試験が終わった後、新しい事務所に入所し、年内は週3か4日程のアルバイトをしながら、気ままな生活と勉強をしていました。堕落した生活からは抜け出していませんでした。しかし、こんな私に転機が訪れました。年の暮れに、クレアールの講師の方主催の、忘年会である女性に出会いました。その出会いこそが私の転機でした。彼女も受験生兼補助者でした。歳が近かった事もあり自然と仲良くなりました。そして思い切って年明けに告白しました。結果は、渋々オッケーでした。彼女は、クレアールの中でも大変優秀な受験生でした。「合格まで2点足りず」という大変悔しい思いをしている方でもありました。私は久々に焦りました。こんなに出来る人でも、落ちる試験なのだ。俺なんて到底合格するはずも無い。と思いました。こうして刺激を受けながら付き合っていく中で、その後、プロポーズしました。そして、迎えた四年目の本試験。結果は基準点を全てクリア。総合点でどうか!というモノでした。期待しつつ発表を待ちました。しかし、結果は不合格、10点足りず、でした。その後11月に入籍し、次の試験に向けて、動き出しました。

五年目

今年ようやく合格することになるのですが、この一年間は本当に濃かったです。

今年は妻と同じ答練を受講しました。ある2月の答練で、あろう事か、私はぐっすりと寝てしまいました。妻の前で受験していたのですが、終わった瞬間、妻の顔はまるで不動明王の様でした。お互い別々の旅行に行く日の午前に受験していたのですが、駅に着くまでの間に、「あなたが思っているより遥かに厳しい試験だし、そんな調子じゃ今年もダメだし、もう辞めてちゃんと働けば?こんなにも試験に対して不誠実な人だと思わなかったよ!良く考えてみて」と言われました。私は何も言い返せずに、その場は別れ、友人との旅行に出発しました。この時、一緒に旅行をした友人は二年前に合格しており、今はもう実務バリバリの方です。彼は、私の様子がおかしい事をすぐ見抜きました。そして私は全てを打ち明けたところ、「お前は確かに甘い所がある。勉強も雑だ」と言われました。旅行先で滝を見に行ったのですが、私は妻に言われた事と、今までの自分を思い返しながら滝を見ていました。そして、滝を見ながら誓いました。帰ったら、本当に変わろう。と。普段優しい妻にここまで言わせてしまった。そんな自分が本当の意味で変わるなら今だ。と強く感じました。そして妻が帰って来て、私は約束をしました。言われた事は全てその通りだし、今変われなければ俺の事をいつか見限ると思う。変わるチャンスをくれてありがとう。このチャンスを活かして俺は絶対に今年、結果を出す。だから見ていて欲しい。もし、姿勢に不十分さを感じたら、その時は好きにしていいし、捨てていいよ。と約束しました。

試験に対して不誠実ということは、支えてくれている家族、友人に対しての裏切りだ。という事を強く、強く意識しました。もう自分は責任があるし、1人の人生じゃない。周りをこれ以上裏切る訳にはいかない。とも思いました。

この時、2月の初旬でした。それからの一週間、勉強は一切せずに過去の本試験、答練、自分の姿勢を紙に書きまとめて、精神状態や勉強方法を思い返し、昔買った資格試験の勉強方法の本、体験記を読み漁り、自分には何が足りないのだろうか?ということを深く思慮しました。

そして、ある事に気付きました。基本事項が不十分なんじゃないのかと。自分で勝手に基本はもうやったから大丈夫。後は応用力だから問題を沢山解いていけば、いい。そう思っていないか?と、気付きました。そこに落とし穴がありました。応用力の問題ではなくて、結局は、基本事項の徹底が足りないが為に、軸がぶれてしまい、安定しない。ぶれない基礎があってこそ、テクニカルな問題にも対応出来るし、それが合格に結び付く。それらの事を確信しました。何かが自分の中で氷解していきました。この時2月中旬、もうあまり時間がないので私は、基本事項の徹底のみを繰り返していこうと思い、一問一答形式の問題集を使用することに決めました。過去問をベースに作られていますし、頻出論点をカバーするには必要十分でした。また、すぐに解説があるので効率が良かったです。一問一問新鮮味を感じながら基礎の反復が出来る点も良かったです。3月以降は、試験一週間前から逆算して、1日に何ページ進めればどこまで進むのかを一週間の中で一日だけを予備日に設定し、割り振りました。割り振った分が終わるまでは、何時になろうと決して帰宅しませんでした。どこで勉強していたかというとファミリーレストランがほとんどでした。

私の取った勉強方法の肯定的な要素ばかり述べましたが、弱点もあります。それは答練で分かりました。私の方法の弊害は五肢択一の出題形式に疎くなってしまう点です。択一は、相互の選択肢の関連性で一見、正しい選択肢に見えるものを誤りと判断したりする事もあるのでそれらの解き勘が一問一答に慣れすぎると鈍るのです。一問一答形式に慣れすぎると、五肢択一が35問続く択一試験だと、どこかで綻びが出て来ました。特に各肢の文章が長い民法で綻びが目立ちました。なので、一問一答形式に飽きた時など、一週間に一度程、それも2時間程度ですが過去問を解いていました。ただ解くだけではなく解き勘を戻す目的を主としながら、一問一答形式で鍛えた基本事項を使って正確に判断出来ているかも併せて検討していました。かつ、自分なりに直近五年分の本試験出題分野を分析し、今年出そうな分野を解いていました。例としては、法定地上権です。

書式

今までは択一の勉強方法だけを述べましたが、次は書式について書きます。書式は4月いっぱいくらいまでは答練でしか解いていませんでした。その日の復習程度しかやっていません。最初に罫線の無いノートを用意しました。見開きで使い、左は答案構成に、右に解答を記載する様にしました。択一準備が軌道に乗りきった5月から今年度分の答練の書式を古い順に、その日の択一のノルマが終わり次第、不動産登記は35分。商業登記は40分以内を目標に時間を測りながら演習しました。5月の時点で1月に答練で解いた分からやる事で既にかなりの時間が経過しており、答えは忘れてしまっているので、初見に近い形で演習が出来、良かったです。時間設定をかなり厳しめにしたのは、本試験で最悪、択一が2時間弱掛かってしまっても、大丈夫だという自分を作りたかったので訓練の意味で上記の設定にしました。当然、最初の頃は、全く時間内に終わりませんでしたが、オーバーした時間を含めて計測していました。続けていくと段々と一題の処理時間が短縮されていきました。答案構成も無駄が消え、解答に必要なもののみ抽出できる様になりました。書式はなるべく早く、かつ、正確に解答出来る様、毎日毎日、負荷をかけて演習しました。

超直前期

答練は6月の超直前まで全く安定しませんでしたが、今まで述べてきた択一準備と書式準備が、ようやく上手く融合して答練や模試でもかなり安定してきました。特に直前三回分くらいは、コンスタントに択一は午前午後とも30問、書式も70点満点中50点は取れる様になりました。

自分に合った勉強方法を発見出来たのが2月中旬だったのもあり、安定する前に本試験を迎えてしまうのが恐かったですが、何とか間に合ったのかな。という感触でした。この時期はもう一問一答形式の問題部分は何度もチェックの入る箇所を解くに留め、ひたすら右側のページを繰り返していました。

一週間前

本試験一週間前は、択一の苦手分野よりも、出来ていると踏んでいる分野の見直しや書式を解いていたノートを見返し、基本的なひな形の確認をして過ごしました。

決戦前日

最後に択一の解き勘を持って本試験に臨みたかったので、民法のヤマを張った箇所を解きました。この時も法定地上権です。

本試験前日は父の事務所のスタッフの方から激励のメールを頂き、夜は妻の両親と夕飯をゆっくり食べ、決戦に備えました。勉強は午前中いっぱいまでに留めておくつもりが、結局、夜の七時までかかりました。
「やる事はやったぞ!」という気持ちと独特の緊張感の中で寝付けるか不安でしたが何とか眠れました。多分3時間位は眠れたと思います。妻は一睡も出来なかったそうです。

いざ決戦!本試験当日

妻と一緒に、早稲田大学に向かいました。受験番号は前後で受験しました。答練も大体、前後で受けていましたし、それは本試験でも変える必要は無いと思いましたので。そして、何より本試験は合格すると、受験番号が掲示されるので夫婦連番で合格する事を目標にやって来たからです。

会場に到着し席を確認し、トイレに行き最後に一服してから部屋に戻りました。暫くして説明が始まり開始までの待機時間がありました。そして、いよいよ午前の部が始まりました。会社法から民法組合せ、次に刑法、憲法の説以外、民法の組合せ以外、憲法の説で解きました。午前科目についての出来は、もう終わった事なので、全く振り返りませんでした。

昼休憩後、午後の部が始まりました。全体的に問題文が長く、解きにくい印象がありましたが、とにかく持っている基礎知識を基に余計な事は考えずに処理していきました。そして最後の峠の書式。事案がとにかく長い、長い。時間も押してきている中で、一度問題文から視線を外し、深呼吸をして、気を引き締めました。この際、一瞬目を閉じ、とにかく遮二無二なって力を出し切るだけだと強く念じました。不動産登記は分量がタフでしたが商業登記は普通より少なめだったので、先に不動産登記から解きました。時間がかかりそうな方から順に進めていくのが経験上、鉄則になっていました。実際この判断は正しかったです。

その後、後回しにしていた商業登記を解き、添付書面を何とか書き切って、誤字脱字をチェックし、残り3分あったので択一に戻りマークミスがないかを確認して、試験が終了しました。試験官が終了の告知をしている時、私の体は全身が熱くなっていました。あまりにも集中していたので体の異変に終了後まで、気付きませんでした。そしてふらふらになりながら会場を出ていく際にこんな事を思いました。毎年受験に来ていた早稲田大学に不思議と、来年は来ないだろうな。という感じがしていました。

ゆっくり会場を後にして、妻と人の流れが無い方に歩いて、たまたま見つけた喫茶店に入り、とにかくお互いを労いました。感覚的にはとにかくやり切ったのだという気持ちが強かったです。

結果は午前29問、午後30問、書式7割でした。それからの択一基準点の発表、合格発表までは、今年、択一の基準点が高かった事もあり、完全燃焼出来たから絶対に落ちるワケがない!と自分に言い聞かせながらの長い、長い情緒不安定気味な時間でした。

絶対に受かっている。と思う時もあれば、もしかしてダメかも。と思う時。そんな間を何回揺れ動いていたかわかりませんでした。

結び

今年、何とか合格する事が出来ました。最後は絶対に合格するという気持ちだけです。それさえあれば行動も変わります。勉強は確かに1人でする。でも、合格は1人では出来ないと思います。むしろ、合格はみんなでするものだと思います。周りの支えがあってこそ、力を発揮できたからです。

合格体験記の結びにこの場を借りて私の感謝の意を表しここに示したいと思います。

クレアールで出会った先生方。先に合格した先輩兼今後一生付き合っていく事になりそうな友人達。そして心配ばかりかけた母。四つも年下なのに時には厳しい事を言ってくれた弟。たまに冷たい目で見て、諌めてくれた七つ下の弟。見捨てず静かに見守ってくれた司法書士の大先輩である父。そんな父を支えてくれている歯に衣着せぬ言葉で私をぶった切ってくれる事務所の2名のスタッフの方々。俺が絶対にお前を司法書士にしてみせる!いいから信じて頑張れ!と勉強に打ち込む環境を与えてくれた妻の父。いつも、熱く激励してくれた妻の父の親友兼部下の方。僕等をいつも優しく包んでくれた妻の母。みんな、ありがとうございます。本当にありがとう。

そして、私の最後のピースを埋めてくれた。ギアを引き上げてくれた。私の能力を引き出してくれた。泣きながら怒ってくれた人。お前がいなかったら、出会えなかったら、俺は一生受からなかったよ。本当にありがとう。これからもどうか宜しく。最高で最愛の同志。妻へ。

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