司法書士試験<過去問題肢別チェック ■民事訴訟法等「保全命令に関する手続」>
問題1 仮の地位を定める仮処分命令の申立てにおいては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、証明しなければならない。○か×か?
誤り。仮の地位を定める仮処分命令の申立てにおいては、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならない(民保13条2項)。迅速かつ暫定的な保護を債権者に与えるために、証明ではなく疎明で足りる。【平20-6-イ】
問題2 保全命令の申立ての取下げは、保全異議又は保全取消しの申立てがあった後においては、債務者の同意を得てしなければならない。○か×か?
誤り。保全命令の申立てを取り下げるには、保全異議又は保全取消しの申立てがあった後においても、債務者の同意を得ることを要しない(民保18条)。保全命令の申立ての取下げによって債務者は不利益を被らないからである。【平20-6-エ】
問題3 民事保全の手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができるが、口頭弁論を開いたときは、判決によらなければならない。○か×か?
誤り。民事保全の手続に関する裁判は、口頭弁論を経ないですることができる(民保3条)。そして、口頭弁論を開いたときであっても、審理の柔軟化・迅速化のため、その裁判の形式はすべて決定である(オール決定主義)。【平16-6-ア】
問題4 民事保全事件の審理において書証が提出されたときは、これを民事保全事件の資料とするには、その成立について認否をとる必要がある。○か×か?
誤り。決定手続は書面主義であり、任意的口頭弁論を開いても、それは書面審理で足りないところを補充し、釈明するものにすぎない。したがって、オール決定主義を採用する民事保全事件の審理においては、書証は提出しさえすれば、口頭弁論で陳述しなくても、資料とすることができる。【平16-6-イ】
問題5 保全命令は、当事者に送達しなければならない。○か×か?
正しい。保全命令は、当事者に送達しなければならない(民保17条)。【平4-8-1】
問題6 裁判所は、仮差押命令を発する場合には、仮差押えの執行の停止を得るため、又は既にした仮差押えの執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭(仮差押解放金)の額を定めなければならない。○か×か?
正しい。仮差押えは金銭債権の保全を目的としているので、債務者が被保全債権を担保するに足る金銭を供託すれば、債権者の債権の保全となり、債務者に対する不必要な執行を避けることもできるので、仮差押解放金の制度が設けられている(民保22条)。【平9-7-4】
問題7 保全命令の申立てを却下する裁判に対しては、債権者は、告知を受けた日から1週間内に限り、即時抗告をすることができる。○か×か?
誤り。民事訴訟法における即時抗告又は民事執行法における執行抗告は、裁判の告知を受けた日から1週間内にすることとされている(民訴332条、民執10条2項)が、民事保全法における即時抗告は、裁判の告知を受けた日から2週間内とされている(民保19条1項)。【平14-7-ウ】
問題8 不動産の仮差押命令は目的物を特定して発しなければならないが、動産の仮差押命令は目的物を特定しないで発することができる。○か×か?
正しい。仮差押命令は、特定の物について発しなければならない。ただし、動産の仮差押命令は、目的物を特定しないで発することができる(民保21条)。動産については、仮差押命令の申立て又は発令の時点で特定を要求することが困難だからである。【平14-7-エ】
問題9 仮差押命令は、支払期限が到来していない金銭債権を保全する場合でも、発することができる。○か×か?
正しい。民事保全法は、民事訴訟の本案の権利の実現を保全するための規定なので、停止条件付債権あるいは将来の請求権についても、仮差押命令を発することができる(民保20条2項)。【平8-7-2】
問題10 仮差押命令の申立てに当たり、保全をすべき権利又は権利関係及び保全の必要性の立証は、即時に取り調べることができる証拠によってしなければならない。○か×か?
正しい。保全命令の申立てに当たり、保全すべき権利又は権利関係及び保全の必要性は、疎明しなければならず(民保13条2項)、疎明は、即時に取り調べることができる証拠によってしなければならない(民保7条、民訴188条)。【平21-6-1】
問題11 仮差押命令は、動産を目的とする場合であっても、その目的物を特定して発しなければならない。○か×か?
誤り。仮差押命令は、特定の物について発しなければならない。ただし、動産の仮差押命令は、目的物を特定しないで発することができる(民保21条)。【平25-6-イ】
問題12 仮差押命令において定められた仮差押解放金を債務者が供託したときは、その仮差押命令は、発令の時に遡ってその効力を失う。○か×か?
誤り。債務者が仮差押解放金を供託したことを証明したときは、保全執行裁判所は、仮差押えの「執行」を取り消さなければならない(民保51条1項)。仮差押命令自体が発令の時に遡って効力を失うわけではない。【平25-6-エ】
問題13 不動産の処分禁止の仮処分の命令の申立ては、当該不動産の所在地を管轄する地方裁判所にもすることができる。○か×か?
正しい。保全命令事件は、本案の管轄裁判所又は仮に差し押えるべき物若しくは係争物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する(民保12条1項)。【平6-7-1】
問題14 被保全権利が条件付である場合であっても、係争物に関する仮処分命令を発することができる。○か×か?
正しい。被保全権利が条件付である場合であっても、係争物に関する仮処分命令を発することができる(民保23条3項、20条2項)。【平19-6-ア】
問題15 占有移転禁止の仮処分命令であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは、債務者を特定しないで、これを発することができる。○か×か?
正しい。占有移転禁止の仮処分命令であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務者を特定することを困難とする特別の事情があるときは、裁判所は、債務者を特定しないで、これを発することができる(民保25条の2第1項)。占有移転禁止の仮処分命令発令後に、占有者を不明にしたり、変更したりするといった執行妨害に対処するためである。【平19-6-エ】
問題16 仮の地位を定める仮処分命令及び係争物に関する仮処分命令は、いずれも急迫の事情があるときに限り、裁判長が発することができる。○か×か?
正しい。保全命令は、急迫の事情があるときに限り、裁判長が発することができる(民保15条)。【平22-6-ア】
問題17 仮の地位を定める仮処分命令及び係争物に関する仮処分命令は、いずれも債権者に担保を立てさせないで発することができる。○か×か?
正しい。保全命令は、担保を立てさせて、若しくは相当と認める一定の期間内に担保を立てることを保全執行の実施の条件として、又は担保を立てさせないで発することができる(民保14条1項)。【平22-6-オ】
問題18 裁判所は、仮の地位を定める仮処分命令において、仮処分解放金を定めることができる。○か×か?
誤り。裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる(民保25条1項)。仮処分解放金を定めることができるのは、係争物に関する仮処分だけである。【平26-6-エ】
問題19 仮の地位を定める仮処分命令に対し保全異議の申立てがあった後に、当該仮の地位を定める仮処分命令の申立てを取り下げるには、債務者の同意を得ることを要する。○か×か?
誤り。保全命令の申立てを取り下げるには、保全異議又は保全取消しの申立てがあった後においても、債務者の同意を得ることを要しない(民保18条)。【平26-6-オ】
問題20 保全異議の手続において、裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない。○か×か?
正しい。裁判所は、口頭弁論又は当事者双方が立ち会うことができる審尋の期日を経なければ、保全異議の申立てについての決定をすることができない(民保29条)。当事者対等という手続上の地位を保障するためである。【平5-2-3】
問題21 債務者が保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない。○か×か?
正しい。保全異議の申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない(民保35条)。取下げによって債権者は不利益を被らないからである。【平18-6-3】
問題22 保全取消しの申立てがあった後に、保全命令の申立てを取り下げるには、債務者の同意を得なければならない。○か×か?
誤り。保全命令の申立てを取り下げるには、保全異議又は保全取消しの申立てが債務者からなされている場合でも、その同意を得る必要はない(民保18条)。取下げによって債務者は不利益を被らないからである。【平7-7-1】
問題23 保全異議の申立て又は保全取消しの申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない。○か×か?
正しい。保全異議の申立て又は保全取消しの申立てを取り下げるには、債権者の同意を得ることを要しない(民保35条、40条1項)。【平23-6-イ】
問題24 保全異議の申立て又は保全取消しの申立てについての決定には、理由を付さなければならず、理由の要旨を示すことでは足りない。○か×か?
正しい。保全異議の申立て又は保全取消しの申立てについての決定には、理由を付さなければならない(民保32条4項、37条8項、38条3項、39条3項、16条本文)。民事保全法16条ただし書は準用されておらず、理由の要旨を示すことでは足りない。【平23-6-オ】
問題25 債務者は、保全命令に対し、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる。○か×か?
正しい。保全命令に対しては、債務者は、その命令を発した裁判所に保全異議を申し立てることができる(民保26条)。【平27-6-ア】
問題26 保全命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、仮処分命令により償うことができない損害を生ずるおそれがあるときその他の特別の事情があるときは、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件として仮処分命令を取り消すことができる。○か×か?
正しい。仮処分命令により償うことができない損害を生ずるおそれがあるときその他の特別の事情があるときは、仮処分命令を発した裁判所又は本案の裁判所は、債務者の申立てにより、担保を立てることを条件として仮処分命令を取り消すことができる(民保39条1項)。【平27-6-オ】
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