司法書士試験<過去問題肢別チェック ■不動産登記法「根抵当権の登記」>
問題1 極度額の変更の登記は、元本確定後は申請することができない。○か×か?
誤り。極度額の変更は、元本確定の前後を問わず認められている(民398条の5参照)。根抵当権の枠支配権としての性質は、確定後であっても異なるものではないからである(確定後は新たな取引によって生じる債権は担保されないが、確定した債権の利息・損害金については、極度額の範囲内であれば全額担保される。)。【平元-17-5】
問題2 A株式会社(取締役会設置会社)を債務者兼設定者とする根抵当権につき、同社の代表取締役BがA社の債務を引き受けた場合、Bを債務者に追加する根抵当権の債務者を変更する登記の申請は、申請情報と併せてA株式会社の取締役会の承認を得たことを証する情報を提供しなければならない。○か×か?
正しい。代表取締役の債務を会社が担保することになるので、取締役会の承認を得たことを証する情報の提供が必要になる。【平12-13-ウ】
問題3 不動産と登記された船舶とを共同担保とする根抵当権設定の登記の申請は、することができる。○か×か?
誤り。不動産とみなし不動産(各種財団・登記された立木)とは、共同担保とすることができるが、不動産と農業用動産・登記船舶・建設機械とは、共同担保とすることはできない。【平2-22-3】
問題4 共同担保の関係にある根抵当権を全部譲渡するときは、すべての不動産につきその登記をしなければ、全部譲渡による移転の効力は生じない。○か×か?
正しい。純粋共同根抵当権を譲渡する場合、すべての不動産について譲渡の登記をしなければ、その効力を生じない(民398条の17第1項)。【平8-12-イ】
問題5 甲・乙不動産について、同一の債権を担保するために共同根抵当権設定契約を締結し、根抵当権設定の仮登記をした場合、これらの仮登記を本登記にするときに共同根抵当権設定の本登記とする登記を申請することはできない。○か×か?
誤り。共同根抵当権が成立するためには、共同担保の定めの登記を要する(民398条の16)。したがって、実体法上存在しない共同根抵当権設定の仮登記はできないが、あらかじめ各不動産ごとに累積式の根抵当権の仮登記をしておくことにより、本登記の段階で、共同根抵当権設定の申請をすることができる。【平11-22-イ】
問題6 準共有の共同根抵当権の設定登記がされている甲・乙不動産のうち、甲不動産についてのみ優先の定めの登記がされている場合、丙不動産に対する追加共同根抵当権設定の登記を申請することはできない。○か×か?
誤り。共同根抵当権において、極度額、債権の範囲、債務者がすべての物件につき同一であることが必要とされるのは、同一の債権を担保するための根抵当権だからである。優先の定めは、債権の同一性とは関係がないから、共同根抵当権の追加設定の妨げにはならない。【平11-22-オ】
問題7 同一の登記所の管轄に属する甲土地及び乙土地を目的として確定前に共同根抵当権設定登記を申請する場合、各根抵当権の被担保債権の範囲、債務者及び極度額は同一でなければならないが、確定期日は異なる日とすることができる。○か×か?
正しい。共同根抵当権は同一の債権を担保するものであるから、債権の範囲や債務者が同一でなければならないのは当然であり、極度額についても民法392条の適用を受けるものである以上、同一であることが必要である。しかし、共同根抵当権においては、いずれかの不動産について確定事由が生じた場合には、すべての不動産の根抵当権の元本が確定する(民398条の17第2項)ので、仮に異なった確定期日を定めていても、結局同時に確定するため、不動産ごとに異なる日を確定期日とする共同根抵当権設定登記の申請を認めても差し支えない。【平15-26-オ】
問題8 A所有の甲土地とB所有の乙土地にAを債務者とする共同根抵当権を設定した後、元本確定の登記がされないままAが破産手続開始の決定を受け、甲土地につき破産手続開始の登記がされた場合に、乙土地について根抵当権移転の登記申請をするには、その前提として元本確定の登記をしなければならない。○か×か?
正しい。債務者の破産手続開始の決定は、根抵当権の元本の確定事由であり(民398条の20第1項4号)、乙土地についてする根抵当権移転の登記申請は、元本の確定を前提とした申請と考えるべきである。しかし、破産手続開始の登記がなされている甲土地と異なり、乙土地は、登記記録上元本の確定が明らかとはいえない。したがって、前提として元本確定の登記をしなければならない。【平11-23-ア】
問題9 根抵当権者を異にする複数の根抵当権が設定されている不動産について、元本確定の登記がなされないまま一つの根抵当権の実行による差押えの登記がされている場合に、他の根抵当権につきその被担保債権を全部譲渡したことによる根抵当権移転の登記申請をするには、前提として元本確定の登記をしなければならない。○か×か?
正しい。債権譲渡を原因とする根抵当権移転の登記は元本確定後でなければできない。根抵当権の実行による差押えにより、当該根抵当権の元本は確定し(民398条の20第1項1号)、差押えの登記もなされている。しかし、他の根抵当権は、差押えのあったことをその根抵当権者が知った時から2週間の経過が元本の確定事由とされている(民398条の20第1項3号)。したがって、他の根抵当権については、登記記録上元本の確定が明らかとはいえないから、元本確定の登記を先行させる必要がある。【平11-23-ウ】
問題10 根抵当権者による元本の確定請求があったことを原因とする元本の確定の登記を共同して申請する場合には、根抵当権者を登記権利者、根抵当権設定者を登記義務者としてする。○か×か?
誤り。根抵当権の元本の確定の登記は、根抵当権設定者が登記権利者、根抵当権者が登記義務者となって申請するものとされている(昭46.10.4-3230号)。これは、元本確定の原因を問わない。【平19-19-イ】
問題11 元本が確定すべき期日の定めが登記されている根抵当権について当該期日を変更した場合において、当該変更の登記をしないうちに当該変更前の期日及び当該変更後の期日が経過したときは、当該変更後の期日に元本が確定した旨の登記を申請することを要する。○か×か?
誤り。元本確定期日を変更した場合でも、その変更にかかる登記をする前に、変更前の確定期日が到来したときは、当該期日に元本は確定する(民398条の6第4項)。したがって、変更後の期日において元本が確定した旨の登記を申請することはできない。【平19-19-エ】
問題12 A名義の根抵当権をA名義の根抵当権、B名義の根抵当権及びC名義の根抵当権の3個に分割しようとする場合、当該登記を1個の申請ですることはできない。○か×か?
正しい。分割譲渡とは、1個の根抵当権を2個の根抵当権に分割してその一つを全部譲渡することである(民398条の12第2項)。したがって、いきなり根抵当権を3個に分割譲渡することはできない。【平10-21-ア】
問題13 根抵当権者を変更することなく2個の根抵当権に分割し、一方の根抵当権の債務者を変更する登記を申請することはできない。○か×か?
正しい。単有の根抵当権を分割して同一人が2つの分割された根抵当権を所有しても実益がない。分割譲渡はあくまでも譲渡の方法として認められる。【平10-21-イ】
問題14 A・B共有の根抵当権をB・C・D三者の共有にするためには、根抵当権の一部譲渡の登記と、Aの権利の移転登記とを申請しなければならない。○か×か?
正しい。本問の方法のほかに、Aが権利を放棄し、Bの単有とした後にBがCに一部譲渡し、BCがDに一部譲渡する方法がある。【平10-21-エ】
問題15 元本確定前の根抵当権につき、根抵当権者に相続が発生した場合で、遺産分割協議書に、相続人の一人が既発生の債権を相続しない旨が記載されている場合、当該相続人を指定根抵当権者とする合意の登記は、申請することができない。○か×か?
誤り。既発生の債権を相続することと根抵当権者としての地位を相続することは、無関係である。【平10-22-イ】
問題16 元本確定前の根抵当権につき、根抵当権者である会社の合併を原因とする根抵当権の移転の登記の申請には、申請情報と併せて消滅会社の権利に関する登記識別情報を提供しなければならない。○か×か?
誤り。相続による移転登記には、被相続人の登記識別情報は不要であることと同じように、包括承継である合併による移転登記も登記識別情報は不要である。【平10-22-エ】
問題17 根抵当権の元本確定後、登記原因を債権譲渡として、根抵当権移転の登記を申請することができる。○か×か?
正しい。元本の確定後に、「債権譲渡」を登記原因とし、登記の目的を「根抵当権移転」として登記を申請することができる。【平14-20-3】
問題18 相続を登記原因とする債務者の変更の登記及び指定債務者の合意の登記がされた根抵当権の共同担保として、他の不動産に根抵当権を追加設定する旨の登記を申請する場合において、申請情報の内容とすべき債務者の氏名は、登記された指定債務者の合意において定められた者の氏名のみである。○か×か?
誤り。相続を登記原因とする債務者の変更の登記及び指定債務者の合意の登記がされた根抵当権の共同担保として、他の不動産に根抵当権を追加設定する旨の登記を申請する場合の債務者の氏名は、「債務者(何某(年月日死亡)の相続人)」として、相続人全員の氏名を表示した上、「指定債務者(年月日合意)」として、指定債務者の氏名を表示する(昭62.3.10-1083号)。【平22-17-ウ】
問題19 元本確定前の根抵当権の債務者がA及びBの2名として登記されている場合において、Aについてのみ相続が生じたときは、相続を登記原因とする債務者の変更の登記及び指定債務者の合意の登記を申請することができない。○か×か?
誤り。根抵当権の債務者が複数である場合において、そのうちの1人に相続が生じたときは、当該債務者の死亡後6か月以内であれば、相続を登記原因とする債務者の変更の登記及び指定債務者の合意の登記を申請することができる(登研515号)。【平22-17-オ】
問題20 根抵当権の元本の確定前に債務者について相続が開始した場合において、共同相続人中に行方不明者があるときは、合意の登記をすることができない。○か×か?
誤り。相続を原因とする根抵当権の債務者の変更登記は、登記権利者を根抵当権者、登記義務者を設定者として申請する。したがって、債務者以外の第三者が設定者となっているときは、根抵当権者とその第三者ですることができる。なお、行方不明者が債務者兼設定者のときでも、行方不明者のために不在者の財産管理人を選任して(民25条1項)、根抵当権者とその不在者財産管理人とですることができる。【平4-23-2】
問題21 権利能力なき社団を債務者とする根抵当権設定の登記の申請は、することができない。○か×か?
誤り。権利能力なき社団であっても、債務者として記載又は記録できる。債務者の表示は、根抵当権の内容の一つに過ぎないからである。【平5-15-エ】
問題22 共同根抵当権の目的である不動産の一部について極度額の増額による変更の登記の申請をする場合において、共同担保となっている他の不動産に他の登記所の管轄に属するものがあるときは、その登記を証する情報を提供することを要する。○か×か?
誤り。共同根抵当権について極度額の増額による根抵当権変更登記を申請する場合、他の管轄の登記所に共同担保の目的である不動産があるときでも、本問の情報を提供することを要しない。追加設定の場合に前に受けた登記事項証明書が必要なのであり(不登令別表56ロ)、極度額の増額は、追加設定ではないからである。【平5-15-オ】
問題23 根抵当権の共有者の権利についての分割譲渡による登記の申請は、することができない。○か×か?
正しい。根抵当権の共有者の権利については、全部譲渡のみが認められており、分割譲渡は認められていない。法律関係が複雑になるおそれがあるからである。したがって、根抵当権の共有者の権利についての分割譲渡による登記の申請は、することができない(昭46.10.4-3230号)。【平6-13-ア】
問題24 元本の確定前に、根抵当権の共有者の権利についての譲渡による移転の登記を申請する場合には、申請情報と併せて根抵当権設定者が承諾したこと及び他の共有者が同意したことを証する情報を提供することを要する。○か×か?
正しい。元本の確定前に、根抵当権の共有者の権利についての譲渡による移転の登記を申請する場合には、申請情報と併せて根抵当権設定者が承諾したこと及び他の共有者の同意があったことを証する情報を提供することを要する(民398条の14第2項)。根抵当権設定者にとっては、根抵当権者が変わることによって被担保債権が増大する可能性があり、その場合には、他の共有者にとっても、その優先弁済権に不利益が及ぶ可能性があるからである。【平6-13-エ】
問題25 Aが、その所有する不動産に甲を債務者とする根抵当権をBのために設定し、Bが、Eに元本確定前の根抵当権を全部譲渡する場合、申請情報と併せてAが承諾したことを証する情報を提供しなければならない。○か×か?
正しい。確定前の根抵当権の全部譲渡は、根抵当権設定者の承諾を得てすることができる(民398条の12第1項)。設定者の承諾が効力要件であるので、当該登記の申請には設定者が承諾したことを証する情報の提供を要する。【平7-22-ウ】
問題26 根抵当権の分割譲渡の登記は、譲受人を登記権利者、譲渡人を登記義務者として申請し、分割譲渡の登記の申請情報と併せて、根抵当権設定者及び当該根抵当権を目的として転抵当権を有する第三者が承諾したことを証する情報を提供することを要する。○か×か?
正しい。根抵当権の分割譲渡をするためには、設定者の承諾のほか、当該根抵当権を目的として権利を有する第三者の承諾を得なければならない(民398条の12)。当該根抵当権を目的とした第三者の権利は、分割譲渡される部分について消滅するからである(民398条の12第2項)。【平7-22-エ】
問題27 分割譲渡による根抵当権の登記をしたときは、原根抵当権の極度額は当然に減額するので、その旨の登記を、根抵当権設定者と分割譲渡した根抵当権者とで共同して申請しなければならない。○か×か?
誤り。分割譲渡の登記をしたときは、分割後の原根抵当権の極度額を表示する必要があるので登記官は職権により分割後の減額した極度額の登記を付記登記により行う(不登規165条4項、3条2号ハ)。【平10-25-イ】
問題28 根抵当権が分割譲渡された場合、分割譲渡された根抵当権の債権の範囲を変更するには、分割譲渡した根抵当権者の承諾を得ることを要する。○か×か?
誤り。一度分割譲渡がされるとそれぞれ別個独立の根抵当権となるので、他の根抵当権者の承諾は不要である。そもそも債権の範囲の変更は、後順位担保権者などの第三者の承諾を要しない(民398条の4第2項)。【平10-25-ウ】
問題29 甲・乙不動産に共同根抵当権設定登記がされている場合には、甲不動産についてのみ元本の確定事由が生じたときでも、乙不動産についても元本の確定の登記を申請することができる。○か×か?
正しい。共同根抵当権は一つの不動産に確定事由が生ずると他の不動産についても確定する(民398条の17第2項)。【平13-27-オ】
問題30 根抵当権の優先の定めの登記は、根抵当権の元本の確定の登記がされた後でも、申請することができる。○か×か?
正しい。元本確定前において、根抵当権の共有者の合意により、債権額の割合と異なる割合を定め、又は共有者のうちある者が他の者に優先して弁済を受けるべき旨を定める優先の定めができる(民398条の14第1項ただし書)。しかし、優先の定めの登記については、債権の範囲、債務者や確定期日の変更登記のように登記時期の制限はなく、元本確定前に優先の定めの合意がなされていれば、元本確定後でも、優先の定めの登記を申請することができる。【平17-19-ウ】
問題31 根抵当権の一部譲渡を受けた者を債権者とする差押えの登記がされている場合は、根抵当権の元本の確定の登記がされていなくても、債権譲渡を原因とする第三者への根抵当権の移転の登記を申請することができる。○か×か?
正しい。根抵当権の一部譲渡を受けた者が、抵当不動産についての競売の申立てをしたときは、民法398条の20第1項1号により根抵当権の元本は確定する(平9.7.31-1301号)。この場合、登記記録上元本の確定が明らかであるため、元本確定の登記がされていなくとも、元本の確定後にのみすることができる債権譲渡を原因とする根抵当権の移転の登記を申請することができる(民398条の20第1項1号、昭46.12.27-960号)。【平21-26-ア】
問題32 A及びBを根抵当権者とする共有の根抵当権において、共有者Aの権利の一部に関し、Cに対する一部譲渡を登記原因とする根抵当権の一部移転の登記を申請することができる。○か×か?
誤り。元本確定前の根抵当権の共有者の権利は、全部譲渡のみすることができ、一部譲渡をすることは認められていないため、共有者の権利の一部に関し、一部譲渡を原因とする根抵当権の一部移転登記を申請することはできない(昭46.10.4-3230号)。これを認めると、権利関係が複雑になるからである。【平23-20-ウ】
問題33 A株式会社が所有する不動産にA株式会社を債務者、Bを根抵当権者とする根抵当権の設定の登記がされていたところ、A株式会社を吸収分割会社、C株式会社を吸収分割承継会社とする会社分割があった場合において、当該根抵当権で担保すべき債権の範囲を会社分割後にC株式会社がBに対して負担する債務のみとする合意が成立しているときは、当該根抵当権の債務者を直接C株式会社に変更することができる。○か×か?
誤り。元本の確定前に債務者を分割会社とする会社分割があったときは、根抵当権は、分割の時に存する債務のほか、分割会社及び承継会社が分割後に負担する債務を担保する(民398条の10第2項)。この効果は、法律上当然に生じるため、当事会社間でこれと異なる契約をしたとしても、直ちに契約の内容とする変更登記を申請することはできない。よって、本肢の場合、まず会社分割を登記原因として、根抵当権の債務者をA株式会社及びC株式会社とする根抵当権変更登記を申請しなければ、債務者をC株式会社とする変更の登記を申請することはできない。【平23-20-オ】
問題34 A株式会社(以下「A社」という。)を吸収分割株式会社とし、B株式会社(以下「B社」という。)を吸収分割承継株式会社とする吸収分割があった場合、A社を根抵当権者とする元本の確定前の根抵当権について、吸収分割契約においてB社を当該根抵当権の根抵当権者と定めたときは、分割契約書を提供すれば、会社分割を登記原因として、根抵当権者をB社のみとする根抵当権の移転の登記を申請することができる。○か×か?
誤り。元本確定前に根抵当権者を分割会社として会社分割がされた場合、当該根抵当権は法律上当然に分割会社と吸収分割承継会社との準共有になる(民398条の10第1項)。分割契約書において当該根抵当権の帰属について、これと異なる定めがされている場合であっても、いったん根抵当権の一部移転の登記を申請した上で、所要の登記をすることになる(平13.3.30-867号)。【平25-25-ウ】
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