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司法書士一発合格者の開業までの道のり(4)

 

開業にあたり苦労された事

─── 開業されて実際に実務をスタートするにあたって、こんな苦労をしたことがあった、あるいは、こんなことに結構準備がかかったなどというようなことは何かありましたか。

中辻 ありました。6月頃に認定考査が終わって、身内から開業資金を借りて、そこからずっと1人で物件を決め、備品を購入し、デスクや本棚といったものは自分1人で全部組み立てて、何もかも1人でずっと準備をしてきました。8月の初旬に司法書士登録が完了し、いざ業務開始というときには、2カ月ぐらいにわたって準備してきた疲れがどっと出て、加えて実務も未経験で当然わからないことだらけで、「もしこんな依頼が入って来たらどうしよう」などの業務の遂行面もそうだし、「ひょっとしたら、1年間、1人もお客様が来ないのではないか」などの不安が一気に疲れとともに襲って来て、登録早々に何もする気が起きなくなってしまったのです。

ですから、クレアールさんへの挨拶も、開業してから1カ月半ぐらい後だったと思います。8月上旬登録で、9月半ばぐらいにやっと元気が戻って来たのですが、そこまでの1カ月半はグロッキーだったというか、気持ちが死んでいました。ですから、あまり思いつめて2カ月ぐらいずっと準備するのは、良くないのではないかと。組立て等の準備作業も誰かに手伝ってもらえば良かったと思っています。

─── なるほど。開業の準備も一人ですべてやると大変なことがありますね。

中辻 いざ開業となって業務をこなしていくことや、お客様を獲得していくことが本当に自分に出来るのだろうかという不安が開業直後に一気に来たので、何もする気がなくなってしまった原因は、おそらく準備してきた疲れよりも、そちらのほうにあるのではないかと思います。

─── 会社を自分でやるにせよ、事務所を開業するにせよ、主として自分でやっていかなくてはいけないというプレッシャーは、やはり経験した人でないとわからないことだと思います。事務所が形になってくると、そういったプレッシャーが一気にたくさん押し寄せて来たという感じですかね。

中辻 そうですね。準備が出来ていく部屋に入るたびに、いよいよスタートだと思うのと同時に、本当にやっていけるのだろうかという想いが…。ちゃんと決断したはずなのですが、開業に近づくにつれて、不安もどんどん大きくなっていくというのがありました。

─── 希望と期待と不安が一気に混ざって来たという感じですね。

中辻 そういう感じです。

 

顧客獲得のための工夫

─── では今度は、実際に業務をスタートなさってからのお話を伺っていきたいと思います。実際に開業すると決めていろいろな方に挨拶をなさったと思います。開業前からも少しずつ準備されているかもしれませんが、実際に開業した後、待っていてもお客様はそんなにすぐに来るわけではないと思います。企業秘密もあるかもしれませんが、お客様を獲得するために、まずどんなことからスタートしたのかということを差し支えない範囲でお聞かせ願えますか。

中辻 私は営業をほとんどやっていません。パソコンを購入するときに頼った会社に挨拶文を少し厚い紙で作ってもらいました。「事務所を開業したので、よろしくお願いします」といったものに地図を入れたA4用紙を透明のクリアファイルに入れました。そのクリアファイルに付いている名刺入れに自分の名刺を挟んで、それを知り合いに配っただけです。

まだ30人ぐらいにしか配れていなくて、知り合いのうちの半分にも全然届いていないのですが、それで不動産登記業務の依頼を3件いただいています。そのうち1件は挨拶文を配った知り合いの方からでした。今後は、全く仕事がない状況になったら営業も考えるでしょうけれども、今のところは不動産屋や銀行に挨拶に行くことはあまり考えていません。何だかしょうもなくて申し訳ないです。

─── いいえ。まだ開業したばかりですから。逆に、開業したばかりですぐにお客様がやって来るということになると、やはり依頼を受けたお仕事をまずはしっかりとやっていくことが後々の信頼にもつながっていくと思います。

中辻 私は16歳から社会に出ているため、多分、私と同じ年代の人たちよりも社会人として知り合ってきた方がたくさんいると思います。挨拶文もまだまだ半分も配り切れていないぐらいですが、年内には何とか配り終えたいとは思っています。

受験勉強をしている方々には合格・開業を見越して、今は疎遠になっているけれども昔は仲が良かった人や、付き合いがあった人との人間関係を開業前に掘り起こしておくことをお勧めします。

─── そうですね。中辻さんの同年代の方もいろいろなお仕事をされていると思うので、やはり学生時代から社会に出てまでの色々なお付き合いというのが1つのビジネスチャンスになっていくのではないかと思います。特に今は飛び込み営業がそんなに実を結ぶという時代でもないので、そういう面では、中辻さんという人をよく知っている人から付き合いを深めていくことにより、お仕事が頂けたらいいですよね。

中辻 はい、そうですね。知り合いがお客様を紹介してくれるようになるのが一番いいと思います

─── そういう面では、まだ開業したてで、できることはまだまだたくさんあると思いますし、少しずつ地道にお客様を獲得していくということが非常に大事なのではないかと思います。

例えばネット広告を掲載したり、事務所のホームページを作る、あるいは、司法書士として無料法律相談会に参加するとか、いわゆる告知の手段はいろいろあると思います。現在ホームページの開設などをなされる予定はあるのですか。

中辻 順調に行って、ある程度の収入がついてくれば作成しようかなとは考えていますが、今の段階ではまだホームページを持つということは考えていないです。

─── それは、もう少し先という感じですか。

中辻 そうですね。

─── あとは、司法書士会などから無料相談会の依頼というのが来ると思うのですが…。

中辻 これについては、司法書士会の相談委員に登録しないと無料相談会に参加することができません。ですから、相談員の研修も早く受けないといけないと思っているところです。

─── そうすると、司法書士会の相談員の登録をして、そういう相談会みたいなものには取り組んでいこうとお考えになっているのですか。

中辻 そうですね。そこから事件の受託に繋がるというのもありますし。

─── わかりました。あとは、金融機関や不動産関係の会社、ハウスメーカーなどへの営業などというのも1つの要素としてやっている司法書士さんと、やっていない司法書士さんがいらっしゃいますが。

中辻 それがいわゆる司法書士の営業の王道なのでしょうけれども、まだあまり行く気がしないです。

─── 開業したてでいろいろなことを試行錯誤されている部分もあると思いますので、これからいろいろ仕事をなさっていく上で、また何か人脈が広がっていく機会があればいいと思います。今は中辻さんの人間関係の掘り起こしも含めて、まず、知り合いの所に「私が開業しました」ということを伝えていく事に取り組んでいきたいという事でしょうか。

中辻 そうですね。まず、自分に近い周りの方に開業したことを知ってもらうことが大切ではないかと思っています。先ほどと似たようなことになりますが、自分の周りの輪を少しずつ大きくしていけたらと思っています。

 

業務を行う際に、心掛けている事

─── 今度は、司法書士の実際の業務を行うに当たってご質問をさせていただきます。先ほど、既に開業したてで仕事のご依頼が来ているというお話でしたが、司法書士の業務を行う中で、中辻さんご自身が心掛けていることをお聞かせいただけますか。

中辻哲郎先生

中辻 心掛けていることですか。お客様に対しては絶対に上から目線で話をしないということですかね。やはりお客様と一緒の目線に立って、何をしてほしいのか、何をしてあげたらいいのか、どういう方法を取ったら一番いいのかというのは常に考えて、お客様と一緒の視点に立って業務を進めていこうという心構えを持っています。

─── いろいろな司法書士の方にお話を聞くと、やはり法律のことを知らない方がお客様としていらっしゃるわけですから、やはり仕事をしていくときに法律の用語をわかりやすく伝えたり、お客様の立場に立ってアドバイスをするということが大事だとおっしゃいます。お客様を獲得している司法書士の方は、皆さんそういうふうにおっしゃっているので、やはりお客様の立場でわかりやすく説明することがすごく大事なことなのだと思います。

中辻 そうですね。法律用語は使わないというのは絶対ですね。できる司法書士は、お客様に対しては法律用語を使わずに分かりやすく説明をすることができる。みんながよく言うことです。

 

司法書士のやりがい

─── ただ一方では、法律の専門家には少し相談しにくいなどというような話も実際には聞くこともあります。そういう面では、司法書士の方は難しい試験に受かって、法律の専門家で知識もたくさんありますが、それをお客様の立場に立って、噛み砕いて色々な案件を一緒に考えていくという事は仕事を行なっていく上で大切な姿勢なのではないかと思います。

こうして実際に司法書士としては実務を始めたばかりですが、既にお客さんとやり取りをしていく中で、やりがいや喜びをもう感じたなどということはありますか。

中辻 いいえ、まだ常に緊張の連続なので、そこまで達していないです。この間やっと、依頼された登記業務が1件完了したのですが、どちらかと言ったら、無事に登記申請が終わって良かったという感じで。ホッとしたというほうが強くて、まだ、やりがいとか喜びを感じるところまでは全然行っていないです。

─── では、その辺はまた数年後にいろいろお話を伺いたいと思います。

中辻 はい。

 

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