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司法書士一発合格者の開業までの道のり(2)

 

司法書士を目指された理由

─── ご無沙汰しております。この度は、司法書士事務所開業のご連絡をいただきまして、ありがとうございました。 本日は、現在司法書士の勉強をなさっていらっしゃる方、これから司法書士を目指そうと考えていらっしゃる方の参考とさせていただくために、司法書士試験に一発合格した中辻さんが開業をするにあたって、どのような準備をなされて開業にたどり着いたかというお話をお聞かせ頂きたいと思います。よろしくお願い致します。

まずは、以前一発合格者インタビューを行った際にも、お伺いさせて頂きましたが、いろいろな資格試験がある中、何故司法書士を目指されたかという理由からお聞かせいただけますでしょうか。

中辻哲郎先生

中辻 理由としてはいろいろあるのですが、私は学歴がなく転職が厳しい立場で、当時は給料がすごく低く、他の職を考えても、なかなか良い条件がありませんでした。今さら高校・大学と行き直すのはあまり気が乗らなかったので、何か資格を取ろうと考えました。

私は以前から法律の学習がしたいと思っていました。なぜかと言うと、法律家は自分の考え方や物事を人に伝えたりするのがすごくうまい。うまいから、法律家出身の政治家が多い。別に政治家になりたいわけではないのですが、そういうふうに聞いていたので、自分の考え方や物事を人に伝えるのがうまいということは社会で生きていく中で1つの武器になるのではないかと思い、まず法律系の資格に絞りました。

法律系の資格と言ってもたくさんありますが、3カ月とか半年とかで取れる資格ではなく、やはり年単位で学習して、多少難しいといわれる試験に挑戦したかったという想いがあり、司法書士は難関資格と言われているので、ちょうど良いのではないかと考えて、チャレンジしようと決めました。

あとは、私は結構三日坊主的なところがあり、飽き性というか、何をやってもなかなか続かなかったので、1年や2年単位で取り組んで何か結果を出したい、自分を変えたい、そういうところもありました。ですから、私の場合は正確には司法書士になりたいというのが目標ではなく、司法書士試験に合格したいという目標で学習をスタートさせました。

─── 司法書士試験は、受験資格に年齢や性別や学歴などの制限が全くなく、誰でも受験ができるというのが大きな特徴の1つでもありますので、すべての方が平等に挑戦できる試験ではないかと思って目指されたというわけですね。

中辻 それもあります。やはり私の場合はだいぶ受験資格が気になるところなので、年齢・性別・学歴が関係なく受けられるということも大きかったです。

─── それと、将来的にいろいろな仕事ができて、ある程度の報酬が期待できるとなると、やはり難関資格で毎年の合格者がそれほど多くない資格試験だと、それだけ希少価値がありますので、そういった意味でも司法書士が浮かび上がって来たのでしょうか。

中辻 そうですね。やはり司法書士の数は行政書士や宅地建物取引士などの数に比べて少ないですから、司法書士であれば独立しても生き残っていけるのではないかという考えはありました。でも、受験開始当時というか学習を始めたときは本当に合格を目指しただけで、最悪、履歴書に「何年度司法書士試験合格」と書ければいいというレベルでした。

─── はい、わかりました。

 

合格後の研修

─── では今度は、また合格直後に戻って思い出していただきたいのですが、司法書士試験の場合は、合格した初年度にいろいろな研修が続くというのが大きな特徴です。中辻さんも司法書士試験合格後に研修を受けられたと思うのですが、司法書士試験合格後から開業に至るまでの流れが気になり、クレアールにも質問する方が多くいらっしゃいます。合格後の研修は時期や居住地によって研修内容そのものが違っている部分はありますが、司法書士試験合格後にどんな研修があって、おおよそどれぐらいの費用が必要だったかということを、覚えていらっしゃいましたら、お話を聞かせてください。

中辻 まず、口述試験の日に待合室で自分の順番を待つのですが、自分が待つときに座る椅子の上に新人研修の案内のような封筒が置いてありました。まだ最終合格していないのにと思いながら、それを見て口述試験の順番を待っていました。新人研修も特別研修も申込みは、11月の最終合格発表日からいつまでかは忘れましたが確か2週間ぐらいでしたので、合格してすぐ申し込んだと思います。

私は京都在住ですから、まず、12月の初旬か中旬ぐらいから、飛び飛びで土日中心に13日間の近畿地区のブロック研修がありました。内容的には、不動産登記業務、商業登記業務、裁判業務、成年後見業務、その他諸々の実務に関する研修が13日間続きました。12月と1月の間に13日間行われるのですが、その間に西日本の中央新人研修がありました。前期と後期に分かれており、前期は西日本全員だから300~400人ぐらいだったでしょうか。私たちのときは神戸に集まって講義形式で3日間か4日間ありました。

その中央新人研修の前期日程が終わって、近畿地区の13日間の残りの研修が終わったら、今度は中央新人研修の後期日程が近畿の合格者だけであります。それも3日間か4日間ぐらいです。
それが1月中旬か下旬ぐらいに終わると、その後すぐに簡易裁判所の代理権を取得するための特別研修が始まります。特別研修は1月後半から3月初旬ぐらいまでの一番長丁場の研修で、研修時間は100時間です。

特別研修は、講義形式の研修と、15人1グループになり、その中でもさらに5人ずつの班に分かれて、出された課題に対して訴状や答弁書を起案作成していくというグループ研修がありました。

─── 合格初年度は、場所によって日程が多少違いますが、全国を東西に分けて行う中央新人研修、また、全国を8つのグループに分けるブロック研修、そして最後に、今お話しいただきました特別研修と研修が目白押しにございますよね。

中辻 京都の場合は、特別研修が3月上旬ぐらいに終わった後、3月の中旬ぐらいに京都会だけの単位会研修がありました。兵庫県や大阪府などは1週間ぐらいやっているようですが、京都の単位会研修は2日間でした。単位会研修というのも各都道府県によって実施されていると思います。

─── そうすると、時間も結構拘束されますが、合格初年度は、研修費用もそれなりにかかりますね。

中辻 そうですね。京都会の場合、単位会の研修費用はいらなかったのですが、新人研修のブロック研修と中央研修を合わせて7~8万円ぐらいの研修費用がかかりました。特別研修が14~15万円ぐらいだったと思います。ですから、純粋に研修費だけで22~23万円でしょうか。それに会場までの交通費、また、遠方の方はホテルなどの宿泊費が必要になってきます。

あとは、研修が夕方5時~6時に終わるので、そこから終電まで時間の許す限り、飲み会が毎日のようにあります。その飲食代も必要ですね。私のときは、近畿で行われる研修は新大阪と天満がそれぞれ会場だったので安い店が多かったのですが、いくらぐらいでしょうか。研修と飲み代を合計すると全部で50万円ぐらい使ったと思います。ですから、研修期間中は40~50万円は必要になると思います。結構な金額にはなりますが、これでも司法書士会が研修費をいくらか負担してくれているようです。

─── よくわかりました。詳しいお話ありがとうございます。飲み代が純粋に研修費用に含むかは別としても、ただ、司法書士の世界というのは同期のつながりが本当にものすごく強く、実際に合格後に働くようになってから5年、10年、20年と経過しても同期の仲間と連絡を頻繁に取り合うという話は、私もいろいろな司法書士の方からよく聞きます。そういう合格した年度の仲間との付き合いというのはすごく大事なので、それはやはりお金に代えられない大切なことだと私も聞いています。そういう面では、飲み会のようなものも、研修とは違いますが、1つの大切な事だととらえてもいいのではないかと思います。

中辻 そうですね。

 

開業のご決断まで

─── では続いて、いよいよ本題に入っていきます。司法書士の試験に合格した後は、独立開業を目指してそれを実現する方もいらっしゃれば、司法書士法人や司法書士事務所に勤める道を選んでいく方や企業法務の道に進む方もいらっしゃいます。中辻さんは先ほど、まず司法書士試験の合格を目指したということをお話しなさっていました。実際に開業を決断するまでにはある程度の勇気も必要だと思いますが、いろいろな道や考えがある中で開業すると決断された経緯を差し支えない範囲で教えていただけますか。

中辻 私は平成25年度合格ですが、合格発表時は工場でアルバイトをしていました。合格の年に少し訳あって、特別研修だけ受けることができませんでした。これを読んでいる皆さんには絶対に合格年度の冬に受けてほしいのですが…。次の特別研修まで丸1年空くとせっかく新人研修で知り合った同期の合格者等と受講できないですし、民事訴訟法の知識も随分抜けてしまうのできついです。
私の悪いところで、せっかく司法書士試験に合格したにもかかわらず、アルバイト先の居心地が結構良く、家からも近かったこともあり、ずるずるとこれを続けてしまい、結局1月末から始まる特別研修のギリギリまでそこでアルバイトをしていました。

そして、特別研修を受講するということで、1月末にアルバイトを辞めさせていただき、26年度合格の方と一緒に特別研修を受けました。特別研修中に同期(25年度合格)で開業をされている方が何人かおられて、いろいろと話を聞いていく中で、私も独立しようかということを特別研修が終わってから認定考査の間までに決めました。

私の中で、勤務司法書士という選択はなかったので、開業か、そこのアルバイト先で正社員にしてもらうお願いをするか、どこか全然違う所で司法書士とは関係なく正社員の面接に行ってみるか、その3択だったのです。資金も何とかなりそうだったし、開業を1回やってみようかという感じで、認定考査が実施される前の5月辺りで開業することを決めました。認定考査までは認定考査の勉強に身を入れていましたので、決断したのはそのぐらいのときでした。

─── 難関と言われている司法書士試験にせっかく1回で合格なさって、それを全く活用もしないで、違う道に行くのは本当にもったいないことですから、そういう面では、開業の道を選んで良かったのではないかと思います。

実際に勤務をした後に開業するという方が多いのは事実だと思いますが、私の知り合いなどでも、勤務をしていてもできる経験は、司法書士の世界においてはほんの一部でしかないので、もう最後は思い切って開業してしまうか、もしくはいろいろな事情があったのかもしれませんが、特別研修が終わってからすぐに開業して、今も頑張ってお仕事をされている方もいらっしゃいます。

そういう面では、どれだけ実務経験を積んだから開業できるという話ではないので、思い切って開業するということは、もちろん選択肢としてあるのではないかと思います。

まして、いろいろわからないことが出て来たら、司法書士試験に合格したというベースがありますので、調べ方はご自分でわかるでしょうから、いろいろな案件が出て来たときにも必要に応じて調べてやっていけるのではないかと思います。私は実際に開業している司法書士の方々からお話をお伺いしていますので、実務経験はないよりはあった方が良いかもしれませんが、必ずしも実務経験がこのくらいの期間ないと開業ができないということではないですし、実務経験そのものは、あまり気にしなくても良いのではないかと思います。

中辻 司法書士会にはいろいろな委員があるのですが、その中に研修委員というものがあり、特別研修では、研修委員が毎日来て出欠を取ったり、様子を見たりします。私が特別研修を受けたとき、その研修委員である司法書士の先生と会場の1階で煙草を吸っていたのですが、そのときに先生は、自分は10年以上やっているけれども、知らないことは知らないし、初めての案件はたくさん出て来ると。みんなが思っているように、給料がそこそこ良くて、不動産登記業務も商業登記業務も裁判業務も後見業務もある程度経験させてくれて、土日は休みで、残業がないという事務所はないと。わからなければ、自分で調べればいい。それでもわからなかったら聞けばいいと。煙草を吸いながらそのような話をしてくださいました。

もしかしたら、それも思い切って開業した理由の1つにはなっているかもしれません。私も実際にいろいろな方に聞きまくっています(笑)。

─── まとめますと、研修を通して、研修委員の方からお話をお伺いしたり、研修のときに既に開業されている方から刺激も受けながら、最終的に独立を決断されたということでしょうか。

中辻 はい、そうです。

 

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