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独立開業司法書士インタビュー 小菅和彦先生(1)「司法書士の実務について」

合格してから開業までの道のり

小菅和彦先生

――近年司法書士の職域は、広がっていると言われています。本日は開業なさっている司法書士の方がどのような仕事をしているのだろうか、あるいは一口に独立開業と言ってもどのような経緯で独立開業するまでに至るのか、ということをこれから司法書士を目指そうと考えている方からよく質問されますので、司法書士の実務の現状をお聞かせ頂きたいと思います。小菅先生よろしくお願い致します。

一般的には、司法書士の試験に合格してからは実務を経験した後、独立という道を歩む方が多いと思います。小菅先生が試験合格後からどんなお仕事の実務経験を積んで独立に至ったかという過程をお聞かせいただきたいと思います。

小菅:私の場合は、司法書士試験に合格してから、1年間クレアールさんの非常勤講師としてお世話になりました。その後、いきなり独立というのは無理ですから、千葉にある某司法書士法人に約3年半勤務させていただきました。この司法書士法人での、私の業務は債務整理が多かったのですが、ほかに不動産登記、商業登記、そして相続手続まで幅広く業務を担当させていただき、いわば修行したようなものです。勤務してから、3年半経過した頃、そろそろ独立してもいいかなと思って、習志野市に新津田沼司法書士事務所を開業しました。

――3年半の実務経験を積んで開業というのは、独立するまでの期間としては早い方ですか、それとも結構実務経験を積んだ方ですか?

小菅:標準的だと思います。勤めた事務所にもよるのですが、私の場合はある程度大きな規模の司法書士法人に勤務していたため、業務は分業化されていました。私は主に債務整理を担当していましたから、債務整理はだいぶ経験を積んだといえますが、不動産登記や商業登記は別の司法書士が担当していたので、あまり経験を積むことができませんでした。

このように業務が分業化されている事務所で働いていると、幅広い仕事はなかなか経験することができません。この点、ボスが一人で事務員が一人ぐらいの比較的小規模の事務所ですと、2年あればいろいろな種類の業務ができます。早く開業したいならば、むしろ小規模な事務所に勤務した方がいろいろなことが経験できて良いのかと思います。私自身は、もっと早く開業したかったので、3年半という実務経験は長かったかなと思いましたが、周りの司法書士からいろいろな話を聞くと標準的みたいです。

現在携われているお仕事

――ありがとうございます。では続いて小菅先生の現在のお仕事内容について聞かせてください。

昔は司法書士と言えば不動産登記や商業登記という登記関係のお仕事が中心でしたが、現在は司法書士の職域は非常に広がってきていて、登記関係はもちろんですが、今お話を聞かせていただいた訴訟関係、そして企業法務、成年後見、相続手続やその相談と多岐に渡っていると聞くことが増えています。小菅先生の場合、独立開業後、実際どのようなお仕事の内容をどんな割合でなさっていらっしゃるのでしょうか。

小菅:私の場合は、幅広くいろいろな仕事をやっていると思います。専門でこれというものはないと言っていいくらい、今は裁判業務、成年後見、不動産登記、商業登記、民事など、依頼がある限り、本当にいろいろな内容の仕事をやっています。時間的な割合ですと、成年後見業務が全仕事の半分ぐらいの時間を割いてやっています。あとは3割が不動産登記で、残りの2割がその他いろいろな仕事という感じです。

顧客を大事にすることからスタート

――ありがとうございます。今度は独立開業してからどのようにお客様を獲得するのかということについてお聞かせください。

司法書士を目指して勉強している方やこれから司法書士を目指そうと考えている方は、最終的には独立開業したいとお聞きすることが多いです。そこで開業してから事務所をどんな手法で認知してもらうのか、そしてお客様をどのような方法で獲得できるのかという、司法書士試験合格後の道筋をよく聞かれます。もちろんいろいろなやり方があると思うのですが、小菅先生の場合、独立されてからお客さんを獲得するために、どのような手法を取っていたのでしょうか。

小菅:私の場合は、不動産会社や銀行などとの繋がりがない状態で事務所を開業しましたので、なによりも、一人一人の顧客を大事にしようと思っていました。以前勤務していた司法書士法人のときの顧客に挨拶状を出しました。すると、そこから何件か紹介をいただき仕事をしました。あとは、若干ですが広告も出しています。ありきたりですがNTTのタウンページやバス広告、地域へのポスティングもやっています。

徐々にですが、その広告から、ぽつりぽつりと相談が来るようになって、相談を受けたお客様からまた紹介という形で、少しずつですが、人脈は広がっていると思います。また、私は地域のロータリークラブに所属させていただく機会を得て、その繋がりで仕事をいただくこともあります。そのクラブには、メンバーが約50人位いるのですが、地元の社長さんや有力な方が多く、そこから人的な繋がりができて、仕事をいただくこともあります。

――開業直後は、当然のことながら最初はお客さんが全然いない状態ですから、軌道に乗るまでは一般的には多少辛抱する時期も必要だと思うのですが、事務所を開業したということが浸透して、そこそこビジネスになり得るまでには、どのくらいの時間が必要だと考えるべきでしょうか。

小菅:非常に難しいご質問です。というのは、自分がどれぐらいの範囲の業務をするかによって違うからです。私は開業してから2年ですが、決してまだまだ軌道に乗ったとはいえないと思っています。私の場合、自宅とは別の場所に事務所を構え、手広く業務をやりたいと考えたので、それなりの初期投資もしました。そうしますと、出ていく経費も結構あるし、その分の収入もそこそこあるという感じで、開業してから今まで2年では、まだまだ軌道に乗っているとまではいえないでしょう。

一方、開業した時点でハウスメーカーや不動産業者とのつながりが2~3社ある方の場合は、非常に早い段階で軌道に乗ると思います。また、自分の自宅を事務所にして、月3~4件ぐらいの仕事をやって早い段階で軌道に乗るというのも一つの方法だと思うのです。ですから、軌道に乗るまで何年かかるかの考え方は、開業する人それぞれによると思います。手広く業務をやろうと思えば、かなり顧客を集めなければいけないですし、普通に細々とやるのであれば、それなりのツテがあれば食べていけるとは思うので、ビジネスになるまで何年必要かというのは難しいご質問といえます。

司法書士としてのやりがい

――よくわかりました。ありがとうございます。では続いて、小菅先生が実際に実務を行っていく中で、司法書士として心掛けていることをお聞かせください。

小菅:お客様の信頼を得ることだと思います。やはり我々の業務というのは正確でミスをしてはいけない性質の業務ですから、うっかり字を間違えたとか、ちょっと変な言動をしただけでも、お客様から信頼を失うことがあります。そういう意味で正確、緻密、かつ丁寧な仕事をしてお客様の信頼を得るということを心掛けています。

――小菅先生は、司法書士試験合格1年後から司法書士法人に勤務して、その後独立と今日に至るまで司法書士として5年少々経過しましたが、実際に仕事を行っていく中で、こんな嬉しいことがあったということをお聞かせください。

小菅:今思い付いたのは、仕事が終わった後に、お礼のお菓子が増えたこと(笑)。開業すると、自分が責任者として、最初から最後までお客様の仕事をやるわけです。重圧もありますが、その反面、仕事が終わった後にお客様から「ありがとうございました。助かりました。」と言われ、それなりの報酬もいただいたときは、仕事をやっていて充実感があり、本当に嬉しくなります。

――似たような質問になってしまいますが、司法書士としてのやりがいを感じるのはどんな時ですか。

小菅:そうですね。やはり資格がないとできない業務で、かつ専門的業務ですから、『誰もができない仕事を私はできるんだ』ということにやりがいを感じます。司法書士という資格があるからこそ公的な機関との応対も違います。例えば法務局、裁判所での応対でも、司法書士であるからこそ、相手もそういう態度で接してくれます。このような社会的地位があるところにもやりがいを感じますし、本当に資格を取って良かったと思っています。

――そうすると、司法書士の資格取得のメリットや魅力というのもやはり今伺った内容になりますか。

小菅:そうですね。資格というのはあくまでもスタートだと思うのですが、ただこの資格を取ったからこそできる業務が広がっていくと思います。先ほどお話が出ましたように登記業務だけではなくて、裁判業務、後見や相続などの業務もいろいろやることが増えてきているということも魅力ですね。

司法書士としての今後のビジョン

――とてもよくわかりました。ありがとうございます。続いて今度はなかなか生の声が出てこない報酬について伺わせてください。報酬は個人差があると思いますし、独立なさってからまだ2年ぐらいしか経過しておりませんが、差し支えない範囲で報酬がどのくらいになるのかお聞かせ頂けますでしょうか。

小菅:報酬ですか、それとも売上や年収ですか?

――どちらでも、差し支えない範囲でお聞かせ頂きたいと思います。

小菅:そうですか(苦笑)。去年の売上は約1,300万円ぐらいです。

――例えば同年代のお勤めしている友人や知人と比較すると実際どうですか。

小菅:私の場合は経費が相当掛かりますので...。売上中、半分近くが経費なんです。経費の用途にもよりますが、同年代の勤め人よりは、ちょっといいぐらいですかね。

――そうすると、まだ開業してから2年位ですし、さきほどお聞かせ頂いたとおり、まだまだこれから業務範囲を拡大して増やしていき、事務所の規模も大きくしていきたいということですね。

小菅:はい、それは目標です。

――わかりました。今度は将来的なビジョンを伺いたいと思います。司法書士の場合、例えば法人化を目指すということなどが考えられますが、将来的なビジョンというのはありますか。

小菅:まず目先としては従業員を増やして、もう少し業務を増やしていきたいですね(苦笑)。

将来的なビジョンとして、今後は成年後見の需要が非常に多いので、私は成年後見のセンターのようなものを作りたいと思っています。成年後見専門の従業員を置いて、もしこちらが忙しくなれば司法書士事務所とは別の、例えばNPO法人を作って、成年後見の支援センターのようなものを作ろうかということは自分の頭の中にあります。

1日の業務スケジュール例

――なるほど。よくわかりました。ありがとうございます。続いての質問になります。

仕事は多岐に渡ってなさっていらっしゃるので、例えばどんな仕事内容ということもその日によって違うと思いますが、一般的に司法書士の方がどのように1日仕事をしていらっしゃるかということも一般の方にとっては気になるので、例えば実際に朝起きてから寝るまでの一日の仕事例のようなものを、お聞かせいただきたいのですが...。

小菅:今日の場合、家から直行で朝9時15分に市川の家庭裁判所へ行きました。私が作成した成年後見開始の申立書を裁判所に提出して、その後、申立人、後見人候補者、私と参与員の4人で面談をしました。約2時間でそれが終わって、その足で今度は千葉の法務局に行って、登記事項証明書や書類を入手したり、不動産評価額の閲覧をしてきました。その後、昼に事務所に帰ってきまして、週明けに不動産登記の決済が2件あるので、この書類作りを始めました。その後、作成途中の裁判所へ提出する後見事務報告書や、遺産分割協議書の作成をやりました。これが本日の私の仕事の流れです。

大抵の司法書士は不動産登記の業務が多いので、不動産会社や銀行から電話がかかってきて、「何月何日決済をやるから用意してください」ということで、方々いろいろなところに電話をした後に書類を作って、銀行に金消契約に立ち会ったり、あとは決済に立ち会うという流れが多いのではないかと思います。

――司法書士の方々は、そんなに夜遅くまで仕事はやらないのが一般的なのですか。

小菅:夜遅くまで仕事はやらないのが一般的かもしれません。ただ私は夜遅くまで仕事をやっていることが多いです。一人でやっていますから、雑用で外に出るのが多いので、昼に事務所に帰ってきてから、これまで溜まった書類作成をやります。そうしますと、やはり夜8時、下手すると夜9時ぐらいまでやっていることもあります。

――そうしますと、やはりお客さんが集中するとそれに比例して遅くなっていくという感じですか。

小菅:一般的にはそうです。

――では、今度はプライベートの時間の使い方について伺いたいと思います。独立開業なさっているいわゆる士業の方が、どれぐらい自分の時間が取れるのかということもこれから司法書士を目指すことを検討していらっしゃる方からよく聞かれます。例えば休日などはどのくらい取れて、どんな過ごし方をされるのですか。

小菅:勤め人の司法書士と、開業した司法書士は違うと思います。勤め人は土、日、祭日は休みですし、有給休暇もありますので、比較的時間は取れて、普通のサラリーマンと同じ感覚でいいかと思います。ただ、年度末や決済が集中している時期は夜遅くまでやっているという話もよく聞きます。私が以前に勤務していた司法書士法人では、土、日と祭日、有給休暇をしっかり取っていましたので、自分の好きなことや、プライベートな時間も結構ありました。

一方、開業すると自分しかいませんので、忙しければ、もう四六時中仕事をやりますし、もちろん土曜日や日曜日でもやります。電話も待機していますから、日曜日に電話が鳴れば取ることもありますので、時間的拘束と言えば、開業するとサラリーマンのときと比べると雲泥の差があります。ただ、強調したいのは、自分に来た仕事を喜んで自分自身がやりますから、不思議と苦になりません。

とはいえ、最近はプライベートな時間がほとんどないというのが現実かと思います。週に1回は休んでいますが、休日の日も頭の中では常に仕事のことがめぐっている感じです。

――開業されているわけなので、ある程度自分でスケジュールのコントロールをすることはできるのですか?

小菅:それは、もちろんできます。

――一般的なサラリーマンとの違いは、ありますか。

小菅:朝は自分の好きな時間帯に出勤できますし、帰る時間も自由です。書類を家に持ち帰って、平日、家のパソコンで仕事をやったりすることもできますから、時間の使い方というのは工夫次第ではいくらでも自由にできると思います。

――司法書士が自由業と言われるのは、このような時間の使い方が自由になる点から、普通のサラリーマンとは違うということになるのですね。

小菅:はい。そうだと思います。

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