第388条【法定地上権】
土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物につき抵当権が設定され、その実行により所有者を異にするに至ったときは、その建物について、地上権が設定されたものとみなす。この場合において、地代は、当事者の請求により、裁判所が定める。
目次
【超訳】
抵当権設定時に、土地の上に建物がある場合において、その土地と建物の所有者が同一であり、かつ、土地又は建物が競売され別々の所有者に帰属したときは、その建物のために建物所有目的の法定の地上権が設定されたものとみなされる。【解釈・判例】
法定地上権の成立要件要件 | ① 抵当権設定当時、土地の上に建物が存在すること ② 抵当権設定当時、土地と建物の所有者が同一人であること ③ 土地と建物の一方又は双方に抵当権が設定されること ④ 抵当権実行による競売の結果、土地と建物の所有者が異なるに至ったこと |
効果 | ① 法定地上権成立の時期 → 競売によって土地又は建物の所有権が買受人に移転する時。具体的には、買受人が代金を納付した時である(民執188条、79条)。 ② 地代は当事者の協議で定める。 → 裁判所に請求することもできる(本条後段)。 ③ 法定地上権を第三者に対抗するためには登記(民177条)又は建物の登記(借地借家10条1項)を要する。 |
Aは、甲土地及びその土地上に存在する乙建物を所有し、甲土地にBのための抵当権を設定した。この場合において、A及びBの間で、将来抵当権が実行されても乙建物のための法定地上権を成立させない旨の特約をしたときであっても、法定地上権が成立する
① 更地に抵当権が設定された場合→ 抵当権設定当時すでに建物の建築に着手し、抵当権者がその築造をあらかじめ承認していたとしても、法定地上権は成立しない(最判昭36.2.10)。 |
② 更地に対する先順位抵当権の設定後、後順位抵当権の設定前に地上に建物が建築された場合、後順位抵当権の実行がなされても当該建物のために法定地上権は成立しない(最判昭47.11.2)。 |
③ 土地と地上建物が同一所有者に属する場合において、土地への抵当権設定時に、地上建物の登記が未だ土地所有者に移転されていない場合(前主の所有名義)でも、法定地上権は成立する(最判昭48.9.18)。 |
④ 建物抵当権設定時、土地建物は同一人の所有に属していたが土地については所有権移転登記を経由していなかった場合にも、抵当権の実行により建物を買い受けた者のために法定地上権が成立する(最判昭53.9.29)。 |
⑤ 土地及び建物の所有者が土地に抵当権を設定後、建物を取り壊して再築した場合には、旧建物のために法定地上権が成立する場合におけると同一の範囲内において法定地上権が成立する(大判昭10.8.10)。 |
⑥ 土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、建物が取り壊され、土地上に新建物が建築された場合、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しない(最判平9.2.14)。 |
【問題】
Aが、その所有する更地である甲土地にBのために抵当権を設定した後、甲土地上に乙建物を建築し、さらに甲土地にCのために抵当権を設定し、その後、Cの申立てにより抵当権が実行され、Dが甲土地の所有者になった。この場合、AB間の抵当権設定当時、BがAによる乙建物の建築に同意していたときは、乙建物のための法定地上権が成立する
【問題】
Aが、Bの所有する甲土地をBから買い受けて、甲土地上に乙建物を建築し、甲土地について所有権の移転の登記をする前に、乙建物にCのために抵当権を設定し、その後、その抵当権が実行され、Dが乙建物の所有者になったときは、乙建物のための法定地上権は成立しない
抵当権の目的たる土地又は建物の一方が、その競売に至るまでの間に譲渡されて同一所有者に属しないこととなった場合でも、法定地上権は成立する(大判大12.12.14)。 |
① 抵当権設定当時において土地及び建物の所有者が各別である以上、その土地又は建物に対する抵当権実行による競落の際、たまたま、当該土地及び建物の所有権が同一の者に帰していたとしても、法定地上権は成立しない(最判昭44.2.14)。→ 建物のための敷地利用権は、混同の例外として存続するためである。 |
② 建物に抵当権設定当時、土地・建物が所有者を異にしていたとしても、土地・建物が同一所有者に帰属した後に設定された建物に対する後順位抵当権が存在する限り、法定地上権が成立する(大判昭14.7.26)。→ 同一人所有に帰属してから後に、建物に対する後順位抵当権が設定され、競売されると、敷地利用権が法定地上権に転化する。 |
① 土地に先順位抵当権が設定された当時は土地と建物の所有者が異なっていた場合において、その後、土地と建物が同一人の所有に帰した後に後順位抵当権が設定され、先順位抵当権が実行されたときであっても、土地に対する法定地上権は成立しない(最判平2.1.22)。→ 建物のための敷地利用権が、混同の例外として存続するためである。 |
② 土地を目的とする先順位抵当権の消滅後、後順位抵当権が実行された場合において、土地と地上建物が先順位抵当権の設定当時には同一所有者に属していなかったとしても、後順位抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立する(最判平19.7.6)。 |
【問題】
A所有の甲土地上にB所有の乙建物がある場合において、BがCのために乙建物に第1順位の抵当権を設定した後、BがAから甲土地の所有権を取得し、更にDのために乙建物に第2順位の抵当権を設定し、その後、Cの抵当権が実行され、Eが競落したときは、乙建物について法定地上権が成立する
① B単独所有の土地にB・C共有の建物があるとき、Bが土地について抵当権を設定している場合 | 土地と建物が同一所有者として、法定地上権が成立する(最判昭46.12.21)。 |
② B・C共有の土地上に建物を単独所有するBが、土地の共有持分について抵当権を設定している場合 | 土地と建物が同一所有者といえず、法定地上権は成立しない(最判昭29.12.23)。 |
③ B・C共有の建物があるとき、B・CがBの債務を担保するため各共有持分に抵当権を設定している場合 | 法定地上権は成立しない(最判平6.12.20)。 |
【問題】
Aが、その所有する甲土地にBのために抵当権を設定した当時、甲土地上にA及びC共有の乙建物があった場合において、抵当権が実行されたときは、乙建物のために法定地上権が成立する
【問題】
A及びB共有の甲土地上にA所有の乙建物がある場合において、AがCのために甲土地の持分に抵当権を設定したときは、抵当権が実行され、Dが競落したとしても、乙建物について法定地上権は成立しない
【問題】
Aの所有する土地及び同土地上の建物双方について、Bのために共同抵当権が設定され、土地のみについて抵当権が実行されて、Cが買受人となった場合、民法第388条は、「その土地又は建物につき抵当権が設定され」と規定しているので、土地及び建物双方に抵当権が設定された場合は、法定地上権の成立は認められない