第193条【盗品又は遺失物の回復】
前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。
目次
【超訳】
即時取得された目的物が盗品・遺失物の場合、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失のときから2年間無償で、その物の占有者に、物の返還を請求できる。【解釈・判例】
1.適用範囲 目的物が「盗品又は遺失物」の場合に限られる。詐欺・恐喝・横領など原権利者の意思に基づいて占有が移転した場合には適用されない。 2.回復請求の期間 本条の2年間の回復請求の起算点は、盗難又は遺失のときであって、相手方が占有を始めた時ではない。 3.請求権者 (1) 本条によって回復請求権を行使できるのは、被害者又は遺失者であれば足り、所有権者に限らない。賃借人や受寄者も回復請求できる(最判昭59.4.20)。 (2) 質権者が質物を盗取され又は遺失した場合、本条による回復請求はできない(大判明40.2.4)。質権者は占有回収の訴(200条)によって占有を回復し得るのみである(353条)。 4.請求の相手方 現に占有している「占有者」であればよい。直接の即時取得者に限らず、その後の特定承継人も含む。 5.回復請求権の法的性質(所有権の帰属) 民法193条は、原所有者の回復請求権の行使期間を制限したものであり、回復請求権は目的物の占有の回復を求めるものである。したがって、回復請求されるまでの2年間は、原所有者に所有権が帰属しており、即時取得者は2年内に回復請求を受けなかったときに、はじめて所有権を取得することになる(原所有者帰属説、大判大10.7.8)。【問題】
Aが動産甲をBに貸していたところ、Bの家から動産甲を盗んだCが、自己の所有物であると偽って、Cが無権利者であることについて善意無過失のDに動産甲を売り渡した場合には、Bは、盗難の時から2年以内であれば、Dに対して動産甲の返還を請求することができる
【問題】
Aから動産甲を詐取したBが、自己の所有物であると偽って、Bが無権利者であることについて善意無過失のCに動産甲を売り渡した場合には、Aは、詐取された時から2年以内であれば、Cに対して動産甲の返還を請求することができる