第181条【代理占有】
占有権は、代理人によって取得することができる。
【超訳】
占有は、占有代理人に物を所持させることによっても取得できる。
【解釈・判例】
1.意義
代理占有とは、代理人が所持をなし、これに基づいて本人が占有を取得すること。代理占有の例として、賃借人・受寄者・質権者・地上権者などを通じて、所有者が占有をなす場合などがある。
2.占有補助者
(1) 占有補助者とは、妻が借主である場合にこれと同居している夫のように、本人の事実的支配を補助する者をいう。代理占有者の場合と異なり、占有補助者には独立の占有権は認められない。占有補助者の占有を通じてする本人の占有は、自己占有となる。
(2) 株式会社の代表取締役が会社の代表者として土地を占有している場合には、土地の直接占有者は会社であって、特別の事情がない限り、取締役は、会社の機関としてこれを所持するにとどまる(最判昭32.2.15)。
【問題】
法人の代表者が法人の業務として動産甲を所持する場合には、代表者個人のためにも甲を所持するものと認めるべき特別の事情がない限り、代表者個人が甲の占有者であるとして占有回収の訴えを提起することはできない
【平23-9-ア改:○】
3.代理占有の要件
(1) 占有代理人が所持を有すること
(2) 占有代理人が「本人のためにする意思」を有すること
→ 意思の存否の判断は、権原の性質により客観的になされる。また、自己のためにする意思と併存してもよい。
(3) 本人と占有代理人との間に占有代理関係が存在すること
→ 占有代理関係とは、外形的に見て占有代理人が本人の占有すべき権利に基づいて所持しており、本人に対して返還義務を負う関係をいう。
ex. 賃貸借・寄託・質権など
【問題】
Aが自己の所有するアパートの部屋をBに賃貸して、Bがこれを使用しているという場合において、Aにアパートの部屋の占有権が認められるためには、AB間の賃貸借契約が有効である必要があり、賃貸借契約が瑕疵により無効な場合には、Aの占有権は否定される
【平22-8-ア改:×】
4.代理占有の効果
(1) 本人が占有権を取得する。
(2) 占有の善意・悪意は、第一次的には物を現実に支配している占有代理人について決する(大判大11.10.25)。
(3) 占有代理人に対する権利行使は、同時に本人に対する権利行使となる。