労災保険法 3 通勤災害 [労災法7条ほか]
目次
問題
問1派遣労働者に係る通勤災害の認定に当たっては、派遣元事業主又は派遣先事業主の指揮命令により業務を開始し、又は終了する場所が「就業の場所」となるため、派遣労働者の住居と派遣元事業場又は派遣先事業場との間の往復の行為は、一般に「通勤」となる。(平成26年)
昭和61年発労徴41号・基発383号
設問のとおり。「就業の場所」とは業務を開始し、又は終了する場所をいう。
問2会社からの退勤の途中で美容院に立ち寄った場合、髪のセットを終えて直ちに合理的な経路に復した後についても、通勤に該当しない。(平成27年)
労災法7条2項、昭和58年基発420号
帰途で惣菜等を購入する場合、独身労働者が食堂に食事に立ち寄る場合、クリーニング店に立ち寄る場合、理美容院に立ち寄る場合等は、厚生労働省令で定める「日用品の購入その他これに準ずる行為」に該当するものとされている。したがって、合理的な経路に復した後については、通勤とされる。
問3業務の終了後、事業場施設内で、サークル活動をした後に帰宅する場合は、社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほど長時間となるような場合を除いても、通勤に該当することはない。(平成24年)
労災法7条2項、平成18年基発0331042号
業務の終了後、事業場施設内で、囲碁、麻雀、 サークル活動、労働組合の会合に出席をした後に帰宅するような場合には、社会通念上就業と帰宅との直接的関連を失わせると認められるほど長時間となるような場合を除き、就業との関連性を認めても差し支えないとされている。
問4通勤の途中、経路上で遭遇した事故において、転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合は、通勤によるものと認められる。(平成25年)
労災法7条1項、平成18年3月31日基発331042号
通勤の途中において、自動車にひかれた場合、電車が急停車したため転倒して受傷した場合、駅の階段から転落した場合、歩行中にビルの建設現場から落下してきた物体により負傷した場合、転倒したタンクローリーから流れ出す有害物質により急性中毒にかかった場合等、一般に通勤中に発生した災害は通勤によるものと認められる。
ポイント!!
通勤の範囲 | 通勤とは、労働者が、就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。① 住居と就業の場所との間の往復② 厚生労働省令で定める就業の場所から他の就業の場所への移動③ ①に掲げる往復に先行し、又は後続する住居間の移動(厚生労働省令で定める要件に該当するものに限る。) |
逸脱中断 | 労働者が、移動の経路を逸脱し、又は移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の移動は、通勤としない。ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない。 |
● 日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものの範囲
① 日用品の購入その他これに準ずる行為② 職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為③ 選挙権の行使その他これに準ずる行為④ 病院又は診療所において診察又は治療を受けることその他これに準ずる行為⑤ 要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに配偶者の父母の介護(継続的に又は反復して行われるものに限る。)
ポイント+α
● 通勤災害と認められない具体例
○ 一戸建て住居の玄関先における転倒事故(アパートの場合は、自室に入るまでの災害は通勤災害とされる。)○ 事業所施設内の階段で勤務終了後の転倒事故(業務災害である。)○ 勤務場所へ向かう途中選挙のため投票所へ立ち寄りそこで発生した事故(逸脱、中断中の災害は対象とならない。)○ 自宅から出張地に赴く途中の事故(業務災害である。)○ 事業場専用の通勤バスに乗車する際の事故(業務災害である。)
● 「通勤による」とは通勤と相当因果関係のあること、つまり、通勤に通常伴う危険が具体化したことをいう。