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旧車専門店に学んだ、いま社会に求められるビジネスの本質

旧車専門店に学んだ、いま社会に求められるビジネスの本質

目次

森 大地 (平成28年度公認会計士試験合格)

 

はじめに

旧車ならではの、「操る自由」

最近、人生初のクルマとして、1991年発売のホンダ ビートの購入を計画しています。この車に決めた理由は、アナログ感とオープンスポーツの楽しさです。現代の車には、安全性能や燃費向上といった様々なテクノロジーが詰め込まれている反面、「自分で操っている感」がどんどん失われています。一方で、ビートには電子制御はなく、運転下手なら悪い挙動が、上手ければ良い挙動が得られる「自由」があります。さらに、オープン時の爽快感は格別で、心地よい風とエンジンサウンドは、乗っている誰もが虜になるほどの魅力です。

社長の情熱と愛情が、お店の屋台骨

そこで先日、ビートを取り扱う有名な旧車専門店にお邪魔し、実際に購入する個体選びから購入後のメンテナンスまで、様々な相談をしてきました。驚いたのは、社長のクルマに対する情熱と深い愛情です。カッコよく、楽しく、そして長く乗って欲しい。こうした熱い思いを3時間以上に渡って語っていただきました。決して安くはない販売価格や整備工賃でも、なぜお店は栄え、長く続くのか。今回の経験で感じた社会におけるビジネスの本質の一端を、会計専門家として「経営者の右腕」になり得る受講生の皆さんにご紹介いたします。

 

1.手をかけて、同じクルマに乗り続ける魅力

30年前の車に新車価格以上の値をつける理由

旧車の一番の難点は、パーツの経年劣化や金属疲労にあります。そのため、30年乗り続けるためには消耗品を中心にたくさんのパーツ交換が必要なのですが、中古市場で出回る個体のほとんどは、「買ってからお金がかかる」状態です。ビートの新車価格は約140万円。一方で私が目をつけた個体は約160万円でした。中古市場を探せば、20~80万円程度の個体がまだまだ見つかるなか、なぜ相場を超える価格なのでしょうか。それは、「最高の状態」に整備された車だからです。厳選したボディ、10年以上乗り続けられる整備、さらには社長の情熱と愛情が込められた付加価値の高い商品なのです。

クルマへの「想い」は、心を豊かにする

ビート所有者の中には、30年程前に新車購入してから乗り続けている人、事情により何度か手放したがまた乗りたくなって現在が2台目、3台目となる人や、10年以上所有している人も珍しくありません。もともとバブル期の軽スポーツブームに始まり、当時F1で圧倒的な速さを誇っていたホンダの技術と、「走って楽しいクルマ作り」への熱意が込められた名車です。現在では、今回取り上げている専門店などの情熱と愛情によって、長く乗るために不可欠なメンテナンスが行われています。こうしたクルマへの「想い」を感じながら1台に乗り続けると、次第に湧き上がる愛着とともに、心の充実感豊かなカーライフを送れるのではないでしょうか。

 

2.ビジネスの本質は、「お金と価値」の等価交換

価値のわかる客を、大切にする

前述のとおり、こちらの専門店の車体販売価格や整備費用は高く、原則として値引きや割引を一切行いません。それでも、整備された中古車を買うお客さん、他店購入を含めたメンテナンス管理を任せるお客さんを多く抱えています。ここに、ビジネスの本質があるのではないでしょうか。

ビジネスの本質は、等価交換

ビジネスとは、社会において新たな価値を生み出し、それらとお金を交換する行為です。私は、この専門店は「価値」に重きを置いているため、必要なお金を「適正価格」として担保しているのだと思いました。適正価格を頂いたうえで、最高の価値を提供する。価値をお金に換算して評価できる人がいるからこそ、お店の情熱が実を結ぶのです。

 

3.車を通じて、感動という価値を売る

社長自らが、3時間の接客で魅力を語りつくす

本格的な旧車専門店に行くのが初めてだったため、どんなことを話せばよいのか、何を聞けばいいのかなど、右も左もわからない状態でした。蓋を開けてみると、社長自らが接客を担当し、ビートの魅力だけでなく、長く維持するために必要なメンテナンスポイントについても説明してくれました。中でもメンテナンスについては、膨大な量の整備写真とともに、自動車専門学校の講義さながらの詳細な説明をしていただきました。

「自分だったら」が100%の提案営業

特に感心したのが、メンテナンスに対する視点です。長く乗るためはもちろん、「追加整備でここにお金をかけると、こんな乗り味になってより面白い」というように、ユーザー目線での提案営業がありました。もちろん追加費用がかるので、一見当たり前の営業トークとも思えますが、私が感じた印象では「自分が乗るならここにこれだけお金をかける」というユーザー目線100%の提案でした。「パーツ供給があるうちにヘタリ気味のこのパーツを交換しよう」「消耗気味のここを変えれば、乗り味がシャープになってより楽しめる」。ご自身が一番のヘビーユーザーだからこそできるこの提案営業は、結果的にムダのない先行投資となります。こうした店と客が双方に満足できる関係は、愛される商売を永く続けていくうえで不可欠なのではないでしょうか。

 

おわりに

決断のスピードは、夢への距離に比例する「(千田琢哉)」

たった数時間の滞在時間でしたが、はじめて購入するクルマを目の前にして興奮しっぱなしでした。最終的に残った選択肢は、「今買うか、将来買うか」。どちらがワクワクするかを考えたとき、私は迷わず「将来買う」を決断しました。今すぐ欲しいという気持ちは強かったものの、「会計士2年目の今しかできないこと」に焦点を当てた時、私の最優先事項は「稼ぐ力を培う経験」と「起業資金の貯蓄」だと確信したからです。なにより、「今すぐビートを手に入れる」より、「今の10倍稼ぐ力をつけてから、ビートを手に入れる」というストーリーの方が、カッコイイ気がしたからです。「決断のスピードは、夢への距離へ比例する」。受講生の皆さんも、迷ったときは、瞬時に、そして自分のワクワクする方に決断する癖をつけてみてください。数週間後には、目標への到達スピードの差を実感できるはずです。

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