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合格後の女性としての公認会計士の働き方

「合格後の働き方」

公認会計士 伊藤 ゆさと さん

 

公認会計士を目指した理由

 私が公認会計士を目指した理由は、より自由に、より柔軟に働きたいと考えたからです。
実家がもともと自営業を営んでいたこともあり、そもそも一生を誰かの下で働くというイメージが持てませんでした。このイメージは幼いころからぼんやりとは持っていたものですが、就職活動の時期になり改めて将来を考えたときに、それはより強固なものとなりました。また、将来結婚をして、子どもを産み育てていくことを考えたときに、結婚相手であるパートナーと協力をしながら、自分の裁量で自由に仕事と育児をしていきたいという想いも昔からもっていました。そんな中、在籍していた大学で公認会計士の養成講座のチラシを目にし、そこで初めて公認会計士という職業の存在を知りました。何か手に職をつけてほしいという両親の希望もあり、大学卒業後に公認会計士の勉強を始めることとなりました。

 

実際に働いてみて

 大学卒業から4年後の2011年、無事に公認会計士の論文式試験に合格し、翌2012年2月より私は会計ソフトを製作している一般事業会社に入社しました。私が配属された経理のアウトソーシング業務を行う部署は、立ち上げて間もないこともあり、早くからいろいろな経験をさせてもらい、大規模上場企業に係る案件に、開示業務リーダーとして従事しました。会計に関する勉強ばかりしている受験勉強時代には、私自身、開示というものは漠然としたイメージしか持っていませんでした。しかし、開示業務は会社の経営成績や財務状況をディスクロージャーに知らせる唯一のものであり、日々の会社の業務や監査法人の仕事のすべてが詰め込まれている重要なものであることを学びました。もちろん実務に関連する業務やビジネスマナーは、また一からのスタートとなったので苦労する部分もありました。しかし、会計に関する知識においては、公認会計士の試験勉強で学んできた一定レベルの知識があったため、即戦力として幅広い業務に携わることができたのだと思います。

 一般事業会社で約2年勤務したのち、2014年2月より現在働いている大手監査法人への転職をしました。転職をした理由は、前職で培った経験を活かしながら、公認会計士の独占業務とされている監査業務を経験してみたいと考えたからです。監査法人では、金商法監査や会社法監査はもちろんのこと、IPO業務や内部統制監査、会計コンサルの業務などに携わっています。特にIPO業務では、上場規定に則ったシステムを作り上げなくてはいけないので、監査人でありながらも会社内部の構築に深く関わることができたと思います。その会社を理解し、会社の方と協力して二人三脚で進んでいく上場までの道のりは、苦労する面も多かったですが、上場できたときの嬉しさはひとしおです。

 監査法人での働き方は、一般事業会社でのそれとは異なり、より柔軟でよりメリハリのあるものでした。監査法人ではチームで仕事をすることが多く、クライアントごとにチームが編成されます。チームメンバーはほぼ全員が公認会計士で、クライアントからもチームメンバーからも、新人といえど一人のプロフェッショナルとして扱われます。先輩や同僚のサポートはもちろんありますが、仕事のやり方は自分で考えることが基本です。やり方を自分で考えるということは、どんな仕事にも共通していることだとは思いますが、より自由度が高いように感じます。それはやはり、一人のプロフェッショナルとして任されている部分が多いからではないでしょうか。また、繁忙期と閑散期のメリハリがはっきりしていることも監査法人の特徴の一つであると思います。繁忙期は本当に寝る間も惜しんで業務にあたることもありますが、そんなときには先輩や同僚との結束力がいつも以上に強まり、大変な日々を乗り切ることができます。反対に、閑散期はしっかりと長期休暇をとりリフレッシュをすることができます。海外や国内の旅行に行く人も多く、お休み明けにはいろいろな地域のお土産が事務所に並びます。メリハリがしっかりあることは受験時代にも耳にしておりましたが、想像以上にはっきりとしており働きやすいと感じています。

一般事業会社と監査法人の両方で仕事をできたことは、結果として監査をされる側と監査をする側との両方の立場を経験できたという意味で、私にとってはとても有意義な経験であったと思います。

 

出産~復帰

 監査法人に入社して2年、2016年6月より出産のために約1年間の出産・育児休暇を取得し、2017年5月末より復職しました。復職後は、会社の福利厚生を利用して時間を短縮しての勤務をしています。一歳に満たない子どもを保育園に預けて働くことには、ずいぶん葛藤や不安がありましたが、実際に働いてみるととても充実した日々を送ることができています。それは、やはり柔軟な働き方ができているからだと思います。先ほども述べましたが、この仕事は一人のプロフェッショナルとして扱ってもらえる部分が多いと感じます。妊娠中に体調がすぐれないときや、子供が生まれたあとに頻繁に熱を出して保育園をお休みさせなくてはいけなくなるときなども、可能な範囲で自宅で作業をさせてもらうことができます。プロフェッショナルとして扱われる限り、自分に課される責任はもちろんありますが、プロフェッショナルとして信用されているからこそ、このような柔軟な働き方ができているのだと思います。

 

これから目指す方々へ

 正直なところ、公認会計士を目指して手に職を持とうと思ったときには、資格を取ったところでそんなに大きく人生が変わることはないだろうと思っていました。しかし、実際に資格を取得して仕事を始めてみると、公認会計士という資格の重みを感じるようになりました。特に、出産~復帰を経験してからそれはより強くなりました。女性は、男性に比べ結婚・出産というライフイベントがキャリアに大きく影響しやすく、働き続けたいと考えていてもこういったライフイベントのタイミングでキャリアを離れざるを得ない女性も多くいると思います。また、一度ドロップアウトしてしまうと、前のように働くことは難しくなったり、極端な場合、仕事に戻れなくなったりすることもあるかもしれません。学生の頃に漠然と考えていたこれらの結婚・出産を実際に経験してみると、仕事と家事と育児の両立が実際には如何に難しいものかを痛感しました。そんな中、公認会計士という資格を保有していることは、一本の揺るぎない芯をもつことになると思います。流動的な社会の中で、揺るぎない一本のこの芯は、少なくとも私に大きな安心感を与えてくれました。もちろん、資格があればそれだけで生きていけるわけではありません。しかし、これから先の将来、この資格を利用してできることは幅広くあると感じます。可能性と選択肢を与えてくれるものであると考えています。

 受験勉強は、辛く苦しいものです。先の見えない状況に不安になり、焦り、怖くなることもありました。もう辞めてしまいたいと考えたこともありました。それは長い目で見ると本当に短い期間のことだと、周りの人や様々な場面で言われますし、そんなことは言われずとも分かっていると思う方もいらっしゃるかもしれません。私もそうでした。しかし、本当に短い期間のことだけです。自分に投資できる時間は、人生でそう多くはないと思いますし、その苦しい期間は決して無駄な時間ではないと思います。私自身、受験時代を振り返っても無駄なもの、無駄な時間はなかったと感じています。今頑張っているみなさんもきっとそうであると思います。自分を信じて前へ進み続けてください。いつか同じフィールドでお会いできることを楽しみにしております。

 

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