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いま、やるべきこと

公認会計士試験合格者 森大地

つい先日、弟の大学受験の合格発表がありました。残念ながら憧れの志望校に手が届きませんでした。大学受験の失敗は、人生の大きな挫折です。彼自身も、相当落ち込んでいたと思います。合格した学校が第一志望と偏差値が離れていたこともあり、両親は今から出願できる学校を探し、少しでも偏差値の高い学校に入ってほしいと弟を説得しましたが、彼は「合格した学校でやり切る決意をした」の一点張りで、断固反対しました。

精神的負担などから、これ以上受験したくない気持ちもあったでしょう。両親は、不合格のショックで何も手がつかない息子に冷静さを促し、少しでも賢明な判断をしてほしいと願っていました。落ち込んで自暴自棄になるのではなく、前を向いて進んでいこうと励ましていました。

ところが、弟によく話を聞いていくと、彼の決意が本物だったことがわかります。合格発表後、何も行動する気力が起きないくらい落胆していた彼は、その結果を時間をかけて少しずつ消化していました。心の内側と対話を進めると、「できなかったこと」「失ったもの」だけでなく、「できたこと」「手に入れたもの」も浮かび上がってきます。たとえば、「勉強は苦しんでやるもの」「みんなが入るから大学に進学する」という、盲目的な努力に疑問を持つこと。あるいは、大学生活の膨大な時間を使ってどんなことを成し遂げたいか、自分の興味関心をどうやって深めていけるかを想像し、目標を持つこと。実は、他でもない弟自身が、誰よりも前を向いていたのです。

弟は進路が決まってからというもの、今度は簿記、数学、ITなど、興味関心のある分野の勉強に没頭しています。溢れんばかりのエネルギーを注ぐ対象ができたことは、受験生活で得られた大きな財産であるとともに、進路の悩みを自分の力で乗り越えられたことの証拠だと思います。

「今に集中すること」は、禅の世界で非常に大切にされている考え方です。

私の弟は、受験生時代の「今」を自分なりに懸命にもがき、不本意な結果に直面した「今」を自分なりに整理して受け止め、大学進学を迎えようとしている「今」を本当にやりたいことに没頭する時間に費やしています。

いま、やるべきこと。このシンプルな言葉を胸に刻むことで、人生の大切な時間を自分の幸福に結びつけることができるのではないでしょうか。資格試験に合格し、専門職として働きながらも、当たり前のように過ぎていく毎日に疑問を抱きはじめた私自身に、この言葉を捧げたいと思います。

 

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