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マメ知識の杜「パワーハラスメント(パワハラ)とはどんなもので、どう対処すべきか」

パワーハラスメント(パワハラ)とはどんなもので、どう対処すべきか

クレアール法律問題研究チーム

現在の世の中では様々なハラスメントが存在しています。

代表的なものとして皆さんが良く耳にするハラスメントとしては、セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、モラルハラスメント、アルコールハラスメント、マタニティハラスメントなどがあります。今回は、ハラスメントの中から、性別問わず直面する可能性が高いパワーハラスメントについて考えていきたいと思います。

近年、雇用形態や経済環境の変化を背景として労働問題が増加しています。 そして大企業であっても経営が安定している時代でなくなり、企業や労働者を取り巻く環境が激変し、パワーハラスメント(以下パワハラ)問題がますます注目を集めています。

パワハラとはそもそも何か

まずパワハラ問題を考えていくにあたり、どのようにしてパワハラが生まれたのかということを考えていきます。
パワハラという言葉が生まれたきっかけは、岡田康子さんという方が2001年にセクシャルハラスメント(以下セクハラ)の研修を行っていく中で、女性社員に対して「望まない誘いはきちんと断る」というレクチャーをしていたこところ、男性社員から「男だって夜や休日の誘いを付き合わなければならないのでしょうか」という声があがったことでした。

セクハラとは、対象者の性別については、加害者が男性、被害者が女性となることがほとんどですが、用語の本来の意味では性別は無関係であり、特に2007年4月1日施行の改正男女雇用機会均等法では、男性から女性、女性から男性、男性から男性、女性から女性の全ての場合で禁止されています。

したがって男性からの「夜や休日の誘いを不快に感じても付き合わなければならないのでしょうか」という悲痛な声を聞き、「女性だけでなく男性も職場で大変な思いをしているのかもしれない」という視点に立って職場のハラスメント調査を開始しました。すると岡田さんたちの予想を超えて「バカヤロー」「死んでしまえ」などの暴言は当たり前のように使われ、足を蹴る、胸ぐらをつかまれる、書類を投げられるなどの身体的暴力も少なくない状況で、ハラスメントを受け続けた結果、心身の不調を訴える方がかなりの割合にのぼっていました。具体的には「上司の前に出ると体が震えて言葉が出なくなる」などの身体症状を訴え、これは明らかに「これ以上我慢をしたら自分が壊れてしまう」という体からのSOSです。またハラスメントを受け続けた結果、「胃潰瘍になった」「うつ病と診断された」などの相談者も少なくなく、岡田さんたちは大きな衝撃を受けました。

また電話相談を開始した当時は、相談電話が鳴りやまず、相談員が電話を切るとすぐ次の電話がかかってくる状態で、多くの方が苦しんでいる状況を実感することになったのです。上司から部下に対しては、教育的態度をとることは職場内では当たり前のことです。それが指導・叱責・罵倒とエスカレートしたとしても「教育的指導である」と上司が言ってしまえば部下は何も言えない側面があり、理不尽であっても我慢し続けるしかありませんでした。このような主に職場を舞台として権力を背景にして行われることが多いことを、「パワー」による「ハラスメント」であることから、パワーハラスメントと名付けられたのです。

パワハラへのエスカレート

パワハラはある日突然起こるものではなく、様々な要因の積み重ねにより、発生に至ります。
例えば職場での上司が部下の育成指導をしていくことを事例としてみます。最初は上司が部下の成長を期待して指導をしていたはずが、いつのまにか指導がうまくいかないと少しずつコミュニケーションがうまくいかず、いわゆるコミュニケーションのズレが生じてしまいます。第一段階では上司が部下に対してのミスの注意や指摘だったのが、第二段階ではミスが積み重なるにつれて叱責の内容がエスカレートし、部下の存在そのものの否定までしてしまいます。そして第三段階になるとさらに言動が過激化し、上司は感情をコントロールできず、部下の個人攻撃を繰り返すようになり、部下は精神障害や心身症にかかってしまうようになります。こんな状況が続くとさらに部下の症状が悪化し、休職や退職せざるを得なくなってしまうところまで追いつめられてしまうのです。上司としては決して部下を追い詰めるつもりではなく、部下のための指導が「よかれとおもったのに」、「つい感情が抑えきれなくなって」といったことがきっかけとなって、パワハラまでエスカレートしてしまったのです。
上司からの部下への指導と言うことでは、許される注意や叱責とパワハラへの境界線を意識した部下指導が求められています。

パワハラにならないコミュニケーションを身に付ける

「どんなにパワハラをしないようにする」と注意したとしても上司と部下指導の境目がはっきりとわかることはありません。そう考えると大切なことはいかに普段から部下と良好な関係を築いておくことです。そのためにいくつか効果的なコミュニケーション術について考えていきます。

① メールやLINEで叱責を伴う指導はしない

もともとメールやLINEは伝達事項を伝えるには便利なツールですが、感情や細かいニュアンスを伝えるのは苦手です。少なくとも上司が部下に叱責を伴う内容を伝える時は、対面で話し、自分の伝えたいことが伝わっているかを確認しながら進めたり、部下の言い分もしっかり聞くべきです。

② 部下の意欲を引き出す伝え方

上司が部下に対して様々な指示を出すことは、当然起こりえます。もし上司が伝えたことを部下が守らなかったとしても、何かの理由があるかもしれません。部下の指導については、成長課題を見つけ部下自身に考えさせる関わりを続けることにより、自分で考えて行動できるように育てていくことが成長につながります。そして自分の責任において行動できるように部下が成長した場合は「よくやった」と認めて、信頼していくことが次のステップにつながっていきます。

最後に

現在の世の中は、スピード化、グローバル化など企業間の競争は激化していきます。
また社会全体が不確実で混沌とした状況に置かれ、人々は疎外感や不安感を抱きやすくなっています。だからこそ人間性を尊重した経営が求められています。
組織そのものの存在価値、戦略、人事も含めて根本から見直す時期に来ており、この見直しの先にはハラスメントフリーな職場による企業の成長と発展があると思います。

以上

(参考文献) 
パワーハラスメント 岡田康子 稲尾和泉 日経文庫

 

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