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研究テーマ:「ストレスを知り、ストレスに克つ」

執筆:クレアールスタッフ心理学研究チーム

「本稿の目的」

合格を目指す受講生の皆さんにとって、日々ストレスを感じることは多いのではないでしょうか?しかしながら学習を進めるだけでなく、日常生活を当たり前のように送っていてもストレスは蓄積されて行きます。

現代人の1日の情報量は、人類の夜明けから2003年までに生み出された情報量とも、江戸時代人の一生分とも言われています。10年前は江戸時代の人の一年分、平安時代の人の一生分に匹敵するとも言われていました。ネットで検索した情報なので論拠、出所はまったくわかりませんでしたが、現代の情報量は加速度的に増加しているということだけは間違いありません。

このように知りたいことはインターネットで検索し、気になる情報にどんどんHPにアクセスすることはもちろん、アクセスしなくても情報は至る所から集まってくるので「消化しきれない情報」がひたすら溜まっていきます。更に情報量が多すぎて何が正しいのかがわからない、いつも情報ネットワークと繋がっていて管理されているような感覚、このような不安がストレスとなって日々蓄積されているわけです。

またビジネスパーソンであれば仕事そのもの、仕事がらみの人間関係、通勤ストレス、近隣関連の問題など様々なストレスにもさらされています。しかし同じ局面や難題に直面してもストレスに感じない人もいます。何故でしょうか?

ストレスとは、他人や外界の出来事によって引き起こされるものではなく、それらに対する自分の反応で引き起こされるものだと言われています。メカニズムやストレスの克服に影響する要因、ストレス克服のプロセスをストレス緩和に役立つ心の習慣作りを考えてみましょう。

ストレスの原因を知る

心理学ではストレス反応をもたらす要因をストレッサ―といいます。例えば、蒸し暑くて何もやる気になれないケースでは、蒸し暑さという気候条件がストレッサ―となって意欲喪失というストレス反応をもたらしていると考えます。

期日や限られた時間内に様々な仕事をこなさなければならないプレッシャーや、人間関係がうまくいかない、環境の変化に対応できないことなどが多くの人にとってストレッサ―となっていることでしょう。このようなストレッサ―が胃潰瘍など身体的な反応や疲労感、不眠、抑うつなど心理的な反応を生みます。慢性的に悩んでいる人は冠状動脈疾患のかかりやすく免疫力が低下することも証明されています。ストレス反応は心に過度の負担がかかっていること、かなり無理をしていることを知らせるシグナルです。ですから、危険なシグナルが出る前に、ストレスの問題に対処してくことを考えていく必要があるわけです。

ストレッサーの受け止め方

このストレス反応をもたらす原因はストレッサ―ではありますが、ストレッサ―があるからといって必ずしもストレス反応が出るわけではありません。同じストレッサ―が存在してもストレス反応が出る人と出ない人がいます。何故でしょうか?これはそれぞれの人のストレッサ―の受け止め方にあります。身に降りかかってきた出来事や、自分をとりまく状況をどのように評価するかを認知的評価と言いますが、ネガティブ・ライフイベントや逆境をどう認知的評価するかによって、ストレス反応度が変わってきます。

更に「反芻」という要素が加わる、つまり過去や未来の出来事を負の感情を伴いながら繰り返し考え続けることもストレッサ―がストレスに変化してしまう原因です。

例えば「仕事でミスをした」という出来事に対し、取返しのつかない出来事、人生を台無しにする出来事など、否定的な認知的評価をしてしまうと深刻なストレス反応に見舞われてしまいます。「なぜ自分はこんなにダメなんだ」と自分を責めたり、「もうイヤだ」と逃げの姿勢をとると、ネガティブな感情反応が強いストレス反応を生じやすくなってしまいます。

また「以前にも同じようなことがあった、次も同じミスをしてしまうに違いない」という思考プロセスを継続的に行う「反芻」、が加わることで更に心の健康度を悪化が進むでしょう。

感情的にならず、事実を受け入れ、前向きに捉えようとすればストレス反応は出にくくなります。物事を大局的に捉えス、ストレッサ―をどう評価するかがポイントです。

ストレスにどう対処するか

さストレッサ―が生じた時の対処行動をストレスコーピングと言います。ストレスコーピングには3つあり、気分の発散を中心とする①「情動コントロール志向」のコーピング、打開策を検討し、ストレッサ―そのものの解消を目指す②「課題解決志向型」のコーピング、ネガティブな状況の中に潜む、ポジティブな意味を見つけようとする③「肯定的意味づけ志向のコーピング」に分類されます。

ビジネスの場だけではなく、人生は思い通りにはらないことの連続です。②「課題解決志向型」のコーピングは現実的には中々難しく、例えばイヤ上司を今すぐ変えることなどはおそらく現実的ではありません。

そこでネガティブな気分を発散させる①「情動コントロール志向のコーピング」を行い、被る心のダメージを出来るだけ軽減させていきます。心理学の調査研究によればコーピングのレパートリーを多く持つほどストレスに強いことがわかっています。お酒を飲む、美味しいものを食べるといったコーピングしかできない人より、スポーツ観戦をする、ジムで体を動かす、友達とカラオケに行く、一人で美術館に行くなど、多様なコーピングレパートリーをもっている人の方がストレスに強いと言われています。

その上で③「肯定的意味づけ志向のコーピング」を行ってみましょう。自分が置かれている難局を新たな角度から見直す方法です。「この状況下で私がまだ気づいていない、どんなチャンスがあるのだろうか」、さらに「この状況の面白い点は何か」とまで考えてみて下さい。
イヤな出来事からもきっと何か学ぶことがあるはずと、成長と繋がると意識的に肯定的に意味づけが認知的評価にも繋がります。

レジリエンスを高める

レジリエンスは復元力と訳され。物理学用語で弾力を意味しますが、心理学の世界では「回復力」立ち直る力を意味します。つまり、強いストレス状況下に置かれてもストレスの悪影響を緩和できる性質とも言えます。思い通りにならない現実をいかにタフに生きていくか?そこで今注目を集めているのがレジリエンスなのです。
レジリエンスの研究はもともと逆境に強い人と弱い人がいるが、両者の違いはどこにあるかといった疑問から発しています。

レジリエンスの高い人物は次のような特徴を備えていると言われています。

① 自分を信じて諦めない。
② つらい時期を乗り越えれば、必ず良い時期がくると思うことができる。
③ 感情に溺れず、自分の置かれた状況を冷静に見ることが出来る。
④ 困難に立ち向かう意欲がある
⑤ 失敗に落ち込むよりも、失敗を今後に活かそうと考える。

なるほどと思いつつも、どうしたらそのような高いレジリエンスを持てるようになるのか、一つのテクニックとして自己肯定に繋がる認知スタイルを身に着けることによって高めていけるものと考えられています。

ポジティブ心理学を推進しているセリグマンは「内的 外的」「永続的 一時的」「普遍的 特定的」という3つの軸でポジティブ思考とネガティブ思考を対比させています。

物事がうまく進まない時に、ポジティブ思考では「内的・外的(客観的事実) 一時的(情勢を見る) 特定的(原因を特定分析」となりますが、ネガティブ思考では、「内的(自分のせい)、永続的(ずっとこの状況が続く、普遍的(自分はダメだ 向いていない)」と捉える説明スタイルになります。

レジリエンスを高めるために、是非「外的 一時的 特定的」を意識して考えるクセをつけてみましょう。あまり、自分の内面的要因ばかりを深刻視せず、外的要因にも目を向ける、そのうち自体は好転することもあるだろうと考える、自分に能力がないと一般化せず、どんな知識やスキルが不足しているかといった発想に切り替える思考プロセスを意識する習慣をつけて行きましょう。

終わりに

いかがでしたでしょうか?
このようストレスの起きる原因 ストレスの起きるプロセスを考えることでその反応を緩和させることは可能です。「心の持ちよう」とはよく言ったもので、どう捉えるか、どう考えるかによってストレス反応は変わってきます。

今回のお話しは、ごくごく心理学の一部ではありますが、ストレス緩和に役立つ心の習慣作りの一助なれば幸いです。

 

(参考文献)
日経文庫 仕事で使える心理学 榎本博明
Harvard Business Review 2017年9月号 燃え尽きない働き方

 

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