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研究テーマ:「ブロックチェーン:基本概念の再構築」

執筆:クレアールスタッフ金融経済研究チーム

「総論」

“A purely peer-to-peer version of electronic cash would allow online payments to be sent directly from one to another without going through s financial institution.”(純粋なp2p電子マネーによって、金融機関を通さない甲乙間の直接的オンライン取引が可能となる。)

ビットコインはこのような冒頭で始まるA4用紙9枚程の論文から生まれました。論文の著者には ”Satoshi Nakamoto” と記載がありますが、それが本名なのか、国籍はどこなのか、また一人の人物なのかグループなのか、今だにそれは分かっておりません。

当該論文の題は、”Bitcoin:A Peer-to-Peer Electronic Cash System”。手許のPCで今の相場を見てみますと日本国内で平均1BTC(BTCはビットコインの単位)が921,300円程度で推移しておりますが、価値変動の大きいビットコインですので、この相場は全く当てになりません。

本稿のこの導入をご覧いただきましたところだけでも、そもそも①仮想通貨と何ものなのか、②仮想通貨の価値はどうして生まれるのか、③近時でもコインチェック事件という仮想通貨の取引に関する事故・事件が日本でも発生しているが、仮想通貨はそもそも安全なものなのか、それは何によって支えられといるのか、④そして、これから先仮想通貨とそれを取り巻く市場はどうなるのか、経済社会への影響とその変化はどのようなものになると考えるべきか、など様々な疑問が湧いてまいります。

本稿は、これらの疑問を持つ中、巷で流通している仮想通貨とそれを支える基幹インフラとしてのブロックチェーンの解説書ではなかなか掴み難かった点を改めて整理し、今後の研究展望のベースを作る目的でまとめ上げたものです。

 

「通貨としての機能を創出する要件―ブロックチェーンに期待するものは何か」

ビットコインまたは仮想通貨を記述した冒頭導入から少し離れた感のある本節題名でありますが、このブロックチェーンなるものこそが、仮想通貨をその本来の機能を支える根本のインフラであり、そもそもが、ブロックチェーンというインフラ技術を使った完成度の高いアプリケーションの第一号が「ビットコイン」であるものと考えることができます。

仮想通貨やビットコインが「通貨」や「コイン」と呼ばれている以上、我々が日常無意識のうちに持っている通貨やコイン、貨幣に関する基本的機能が、これらのものには備わっていると考えられるわけで、その基本機能を構築しているのがここでいうブロックチェーンという技術です。つまり、このブロックチェーンという技術は、我々が、基本的には大きな信頼を寄せているお金の機能を創出することのできる技術であるということ、この事実をまず確認しておきます。

それではまず、このブロックチェーンという技術を理解していくにあたりまして、さしあたり簡単に我々が貨幣に期待する機能を以下では簡単に整理しておきます。

経済学的には、貨幣には、①決済手段(価値の移転を容易にする誰もが受容しやすい財や資産である)、②価値保蔵(将来に向けて資産を保存できること)、③価値尺度(財貨の価値を統一的に測る尺度になること)の3つの機能があるとされており、特に①の機能が、我々が貨幣というものに最も期待している機能であると一般的には認識されております。

そして貨幣の、この決済手段としての機能に対する期待とは、貨幣を持っていれば、基本的にはいつでもどこでも貨幣と交換に自分の満足度(経済学ではこれを効用という言葉で表現しますが)を簡単に高められる物やサービスが手に入り、当然交換の相手方の満足度も高められる(相手も貨幣を手にすればそれを持って自己の効用を高める機会が手に入るという意味で)ので、社会全体の効用水準も高まるということが実現できる物であるという点に求められ、それの期待機能を国家が保証しているのが法定通貨・ソブリン通貨と呼ばれる各国の通貨(円、ドル、ポンドなど)です。

つまり貨幣として人々が認識できる為の基本は、この決済手段としての機能が何によって担保されているかが重要なポイントであるということです。

それではこの担保は何によってもたらされるのかというこという点について考えるにあたりましては、イングランド銀行が2015年に公表したレポート”Old Money、New Money” でマイケル・カムホフ(Michal Kamhof) が、この信頼を担保する構造という問題を解くきっかけを、歴史的考察から引き出すという洞察力に富んだ発表を行っており,
以下これを参考にこの点を整理していきます。

これによりますと、カムホフは、貨幣というものが成立する根拠を「クレジット型」と「トークン型」の二つに分けて説明されています。

ここで、「クレジット型」とは人々が信頼の対象とする主体、例えば今の経済環境でいえば銀行などの専門機関が、貸し借りの記録を帳簿に記載し、その記録の正確性を担保として貨幣としての機能を提供するものをいいます。これは、そもそも貨幣の決済機能は、ある任意の人がその時点でどれだけの支払い能力を有するのかを証明できればよいもので、その時点での支払い能力は、その人の過去の他の人々との価値の交換の歴史の積み重ねの上に蓄積されていくものであるから、その正確な記録があれば、その人のその時点での支払い能力は確実に掌握でき、その帳簿の正確性が保証され、そしてその帳簿に記載されている価値の単位と同等の単位でその人が新たに欲する財やサービスが表現される限りは、その人にその財またはサービスと交換に、帳簿記録を財またはサービスの提供者に移し替えれば、確実に提供者側の以後の支払い能力が上がるという状況はつくることができるとの考え方に基づくものです。

一方「トークン型」とは、貴金属片や紙片などの物理的存在に価値があるという社会的約束を成立させて、この物理的存在をトークンと呼び、このトークンの所持を価値保有、すなわち支払い能力の証左の担保とし、このトークンを移転させることによって貨幣としての機能を果たすものをいいます。これは所謂通貨の占有をもって価値交換を行うことであり、この通貨に対する信任を、現代では一般的には国家が担保することで、トークンの無条件の受領つまりいつでも、誰にでも受け取ってもらえる、つまり決済機能を創出しているということになります。

このように整理していきますと、我々は、日常感覚的には法定通貨もしくはそれとの交換の保証がなければ安心・安定した決済機能が働かないというイメージをどうしても持ってしまいがちですが、これは間違った感覚であり、確実な帳簿があれば、それは十分決済機能を創出することのできるシステムが構築できるとの論理的帰結を得ることができ、このことを、カムホフは先のレポートにて言及しています。以下このレポートの内容を簡単に要約します。

歴史的には古代メソポタミアで世界最初の決済システムが、クレジット型として登場(BC600以前)し、それは帳簿を管理する主体が国家でありその権威に基づき、宗教上の観点を根拠として帳簿を管理する主体の信用に依存する形で形成されております。
それ以後初期トークン型の貨幣が登場したのは、小アジアのリデイアにおいて、希少金属の合金に刻印を押したエレクトロン貨でありました。これがギリシャ・ローマ時代のトークン型の貨幣の原型となりましたが同じようにインド文明・中華文明におきましても、トークン型の貨幣として、希少金属に刻印し、もしくは鋳造した貨幣が流通しております。そしてこれらの文明においてトークン型の貨幣に存在根拠を与えたのは、国家ないしは皇帝の権威でありました。

その後一部対外交易ではトークン型の貨幣は存在したものの、日常生活では流通しない中世を経て、大航海時代の幕開けとともにトークン型の貨幣は復活を遂げます。
この時代は、欧州域内におきましては銀行制度の発達により、紙と万年筆で作り出されるクレジット型の貨幣が信任を得たこととは対照的に、植民地諸国におきましては、金貨や銀貨によってあらゆるものが購入できるという新しい価値観の輸出が推進されております。
これは域内と植民地という二面性を持つ欧州の立場から見て、トークン型の貨幣は好都合な道具としての役割を果たしたものと推測できます。

そしてこのような基本形態は第二次大戦まで続き、それ以後はクレジット型の社会に急傾斜していきます。第二次大戦後の現代におきましてもトークン型の貨幣としてコインや紙幣は世界で流通はしていますが通貨総量において見た場合には、銀行の預金通貨のようなクレジット型の貨幣が占める割合が圧倒的に高く、トークン型の貨幣は数量の面でごく少量に留まっています。
参考までに2018年7月に日本銀行から公表されている2018年6月のマネーストック速報を確認してみますと、ここでいいますところのトークンに近い現金通貨と呼ばれるものの残高は99.1兆円。一方クレジット型の貨幣の一部に近い預金通貨と呼ばれるものの残高は660.4兆円(この2つの合計がマネーストック統計上M1と区分されるものとなります)と、割合でいえば13%対87%という状況です。

結局のところ現代は限りなくクレジット型の貨幣の時代として分類されるとし、この貨幣の歴史考察を終え、カムホフは仮想通貨の登場以降の時代を、従来の延長線上におけるクレジット型が続くとしつつも、歴史的に見た場合の国家や専門機関などの権威に基礎を置いたクレジット型から、そのような権威主体に依存しない帳簿の信頼性によるクレジット型の信頼は成立できるとしつつも、その意味ではこの時代はクレジット型には分類できず、新たな権威に基づいたトークン型の時代の再到来と説明しています。

「新たな信頼の構造をブロックチェーンはどう構築しているのか」

「ブロックチェーン」は仮想通貨の代表であるビットコインの創出を支えた技術であり、大胆にそれを定義すると、

「様々な主体間での取引成立の事実とその履行履歴を全て記載した帳簿・台帳であり、その帳簿・台帳が中央集権的に一元管理されているものではなく、いくつかの分散した主体がそれぞれそれを保有している電子的な分散型帳簿・台帳である。」

のようなものにとなるものと思います。ただしこれはここで試みた定義の一例で、現在のところ汎用的な定義は成立していません。

ところでブロックチェーンは仮想通貨と一対一対応のものとして想起されることの多いものでありますが、この技術は実は応用範囲が広く、現代社会の様々な契約とその履行のあり方を発展的に変えていける可能性のある技術と考えられます。ここでは一先ず、この技術の概要を掴むため、ビットコインの成立システムを例示に、ブロックチェーンの構造をまとめてみることとします。

先にブロックチェーンを定義しましたが、これが単なる定義としてだけではなく、使える仕組みであるためには、大きく3つの成立条件があります。

一つは取引の記録が全て記載されているべき台帳であるということから、これから起こるいかなる取引についてもそれがスムーズに記録されるようになっていなければならないという観点から、故障・破損しないという①障害耐性が高い仕組みであるということです。

二つめは、取引を電子帳簿上で間違いなく行えることを担保するために、二重取引、ビットコインの仕組みを概観するときにはこれを②二重払いが防止されている仕組みであるという言い方で言えわれますがが、これがそれです。

そして三つ目は、当然過去の履歴が変更される等があります公正な取引が行えず、そのシステムは信頼性を失い継続的な利用はなされなくなりますので、この点から③データが改竄困難な構造で保持されている仕組みであるということは必要となります。

以下では上記①~③のブロックチェーンの成立要件が、いかなる工夫でビットコインでは実現されているのかをまとめていきます。

(1)障害耐性が高い仕組みである

ビットコインの仕組みでは、ブロックチェーンを活用した台帳にすべての取引を記録することになっていますが、ブロックチェーンの定義でも行いましたように、この台帳はどこか一つの大きなサーバーに、中央集権的に保存されているわけではなく、世界中に分散しているノード(結節点)と呼ばれるコンピュータにそれぞれ保存するというようになっています。このノードをインターネットも含めたネットワークで結ぶことで台帳の分散共有をはかるようにしており、現在世界にはおよそ11,000個のノードが存在すると言われています。これらのノードは、ビットコインの仕組みに賛同する技術者の方々などのボランティアなどで支えられており、これによってビットコインのコミュニティが作られています。

そして一つ一つのノードは言わば碁盤の目に置かれている碁石のような状態にあり、一つのノードは縦横斜めの計8つの手を出し隣のノードにネットワークで結ばれている構造となっています。

このネットワークを基本インフラとし、各ノードは自分が得た新しい台帳の情報を隣にある8つのノードに伝えていくという仕組みで台帳の情報連携を相互にはかり、台帳の分散保有と共有利用がはかれるようにしています。そしてこのインフラにより、例えば一つのノードが故障したり、また破損したりした場合でも、他のノードで台帳が担保されており、また一部のネットワーク障害に対しても、一つのノードから計8つの手が伸びていることで迂回経路が確保され、取引ができなくなるというリスクを大きく低減させた完全性と可用性の高い仕組みとなっています。

このノードによる分散型台帳の基本アイデアが、本稿冒頭のS.Nakamotoの論文にあります ” Peer-to-Peer”(コンピュータとコンピュータがそれぞれ互いに直接つながっている)の意味となります。

(2)二重払いの防止と改竄の困難性

次に二重払いの防止と改竄の困難性について、その仕組みを概観します。これにあたりましては、ビットコインの仕組みを、①支払→②記録→③採掘→④報酬→⑤承認→⑥流通の順で整理し見ていきますと見通しがよくなりますので、それぞれをこの順で確認し、この過程で二重払防止と改竄困難性の仕掛けを明らかにしていきます

以下ではビットコインの説明がなされる際、慣習的に使われているアリスとボブという2人主体をここでも登場させていただき説明の記述をしていきます。

①支払

はじめに、「アリスがボブへ1BTCを送金」するものとします。するとこの取引情報はネットワーク上に発信され記録されなければなりません。通常の銀行振込の場合にはこの情報はATMやPCなどを起点として、銀行のオンラインで銀行のホストコンピュータに唯一保管されている元帳に記録されますが、ビットコインの仕組みではPeer to Peer(以下P2Pと記述します)ネットワークですので、銀行のオンライン元帳が保存されているようなサーバーにあたるホストコンピュータはありません。その代替が先ほど見ましたノード群で、アリスはここに向け取引の事実を発信していきます。

それを実現していくためにビットコインの仕組みでは、ビットコインを使い取引を行おうとする主体のPC(もちろんスマホでもかまいません)にはウォレットと呼ばれるビットコイン専用の財布アプリがインストールされている必要があり、このアプリを使ってアリスは取引の事実を発信します。

ここで、ビットコインのウォレットは、必ず一つのノードを知っているという仕組みで作られていますので、アリスのウォレットもある一つのノードと常につながっており、アリスが取引の事実を発信するとは、このノードに対して送金の情報を送信するということになります。
そしてアリスの送信情報は、先に見たノード群のつながりにより、ビットコインのコミュニティを形成する全てのノードに連携されていきます。

②記録

アリスからボブへの送金情報のこのようなネットワーク内での伝達方式はブロードキャスト呼ばれますが、P2Pネットワーク上にブロードキャストされた情報は少しずつ伝播し最終的には世界中の全てのノードに伝わります。

ここで、「アリスからボブへ1BTCを送金」というのが一つの取引で、この事実を1トランザクションと数えます。ビットコインのネットワークでは毎秒数件ほどのトランザクションが発生しており数分のうちには1000件~2000件程度のトランザクションが生成されネットワークに発信されます。一つ一つのトランザクションは、まずはそのトランザクションが発生した場所に一番近いノードにこれが送られ、そのノードからブロードキャストされ、この2000件ものトランザクションは全てのノードに共有され記録されます。

このようにして、1カ所に台帳を置いて記録するよりも世界中に散らばっている多数のノードに同じ記録を持つ方が相互監視もでき確認もできることから、誰も事実を改竄することができにくくなり安全であるというのが、ビットコインの分散的台帳保持の基本思想で、ここに改竄防止の仕掛けを一ついれているわけです。

しかしながら当然これだけでは改竄防止策としては盤石な体制ではありません。各ノードが結託すれば改竄を行えるということは理論的にも、場合によっては現実的にも可能です。

実際、ここでは証明抜きの事実紹介にとどめますが、理論的には全ノードの51%が結託すれば全体を騙し全ノードの台帳の改竄に成功できるという事実があり、これが「51%攻撃」と呼ばれるものです。

コンピュータ・サイエンスではこれは「ビザンチン将軍問題」として扱われています。
「ビザンチン将軍問題」とはかつての東ローマ帝国をテーマに、その国の将軍たちがそれぞれ軍団を率いて敵を包囲しようとしているものと仮定し、それぞれの将軍が仲間の将軍に伝令を出し敵に一斉攻撃を仕掛ける手はずを整えている場合、敵に寝返る者や嘘の伝言が伝達されると攻撃に失敗し敗戦となるわけですが、裏切り者の将軍がN人の時、誠実な将軍が2N+1人以上いれば、全員で同じ合意形成に導けるということ論理的に証明された理論ですが、これが先の「51%攻撃」に相当します。

この事実のもとビットコインのシステムを考えますと、この「ビザンチン将軍問題」を解決しない限り改竄防止を担保できないということになります。

この問題を、S.Nakamotoは、人間の行動原理である利潤追求といういう全く別の要素を組み込むことによって、ビットコインシステム上での改竄防止の担保としております。これが次の採掘です。

③採掘

採掘は通常マイニングと呼ばれ、採掘する主体はマイナーと呼ばれます。
マイニングと呼ばれる作業は、ビットコインシステム上に発信されたトランザクションを、通常は数百件から2000件程度の束にまとめて「ブロック」と呼ばれる特殊な記録方式にすることをいいます。そしてこのブロックの記録には「ハッシュ関数」という演算が用いられます。
そしてこの操作を行う手順は次のように定められています。

ステップ1いくつかのトランザクションを任意に集める。(集める個数は任意)
ステップ2これからつくるブロックの一つ前に完成されているブロックを、これから作るブロックの1要素として組み込む。
ステップ3一定の条件を満たすある数(これをノンスと呼びます)を見つけ出しブロックの中に組み込む。
ステップ4ステップ1からステップ3の全ての条件を満たすテキスト群をハッシュ関数に代入しハッシュ値を求めこれを新しいブロックとする。

この全体像を眺めたところで、以下マイニングの内容詳細を具体的に記します。

(ハッシュ関数について)

ハッシュ関数というのは、どのような文字列「x」を代入しても、常に同じ長さ、具体的にはビット数ということになりますが、の答え「y」(これがハッシュ値と呼ばれるものです)を返す性質を持った関数です。

このような性質の関数はいくつも開発されていますが、ビットコインのマイニングにあたっては「SHA256」(シャーにごろ、と通常呼ばれています)という関数が使われます。

この「SHA256」はこの関数にどんな文字列を代入してもその答えが64ビットの文字列になるという性質がまずあり、関数である以上一つの文字列には必ず一つのハッシュ値返ります。さらにはハッシュ関数には代入する文字列が1字違うだけでも得られるハッシュ値が似ても似つかない英数字列に変化するという特殊な性質があります。

ここでこれらの性質を具体的に確認するため、SHA256に(a)「ブロックチェーンの考察」、(b)「ブロックチェーンの洞察」、(c)「クレアール」という3つの異なる文字列を代入した場合のハッシュ値をそれぞれ以下に記します。

(a)のハッシュ値
93a10af28f9a74f54bd2f82513838e4851971cbc86510b41d6628d533629a52b

(b)のハッシュ値
f25e229b72bc8bef3e6b4f713758ef2d089110bc1575c599949a2d59ac543abb

(c)のハッシュ値
6274c0679377dbc42190edbd436337b3250aeae8026d95e8d03a02ab0f15d0a0

このように、文字数の違う文字列を代入してもハッシュ値は64ビットで一定ながら、一文字違うだけでも全く違うハッシュ値が返ります。

この性質は取引などの記録保管には、①どんなサイズのデータでも必ず64ビットという一定のコンパクトなサイズで保管できる、②後になってデータが改竄されたかどうかに
ついては、両者のハッシュ値を比較することで容易に確認ができる という2点で大変優れたものとなっています。

さらにハッシュ関数には、「一方向性」という性質も備わっております。これは、ハッシュ関数にある文字列を代入してそのハッシュ値を求めることはパソコンがあれば簡単にできますが、その反対に、ハッシュ値としての形式を備えている64ビットの英数字文字列
から、元になった文字列がどのような文字列であったかを推測する方法は発見されていないということを意味します。つまり保存データとしての不可逆性が保たれるということです。

この一方向性という性質は特にお金や取引履歴を表現するには相性の良い性質で、一度起こったことをなかったこととにしたり、または巻き戻して書き換えたりすることが不可能であるようにする必要のあるこれらの記録にはマッチします。

(マイニングへの応用)

ここからは、このSHA256の、マイニング手法ステップ1~ステップ4への応用手順です。
まずステップ1については任意のトランザクションの選択ですので問題はないでしょう。ステップ2につきましても、既に作成されている直近一つ前のブロックのハッシュ値を
持ってくるだけですのでこれも問題はありません。

ポイントはステップ3で、ここでノンスを探し当てるのが実は大変な試行錯誤を要する作業で、その意味この一連の作業が採掘・マイニングと呼ばれています。

マイナーはステップ1・2のデータに適当にノンスを付け加えてその文字列に対してのハッシュ値を求める作業を行いますが、その際得るべき解の条件として、得られた64ビットの先頭にゼロが15個並ぶようになるノンスを見つけつというような条件が、必ずその時々でマイナーに共通の条件として、アルゴリズムで与えられます。そこでマイナーはナンスを変えていきながら条件を満たすナンスを探し当て、それをマイニングしたマイナーがそのブロックのマイナーとなり、ビットコインのシステムではこのマイナーに対し、次の報酬が与えられるプロセスに入ります。

④報酬

マイニングはノードの主体が競争しながら行う作業で、この競争に勝ち新しいブロックを作ったマイナーに与えられます。

ビットコインのシステムでは、先に見たステップ1のトランザクションの塊の先頭に自動的に、送信者:エンプティー、受信者:マイニングに成功したマイナー、送金量12.5BTC という1件のトランザクションが自動セットされる仕組みになっており、マイニングに成功するとこのマイナーに12.5BTC(本稿執筆時の相場では約11,500,000円相当)の報酬がシステムから自動生成され与えられます。

この報酬のシステムこそが、先の「ビザンチン将軍問題」をビットコインのシステムの中で、S.Nakamotoが解決策として用意した仕掛けとなっています。

報酬をキーにしてマイナーの競争促進をはかり、マイナーが不正を働いてゲームを台無しにしてしまうよりも、誠実に計算をして報酬を得ることの方が高い便益が得られるという環境をつくることにより「ビザンチン将軍問題」に決着をつけたということです。

このブレークスルーの手法を、S.Nkamotoはその論文で、“Proof-0f-Work”(POW:仕事量による証明)と命名しています

⑤承認

ブロックが作成されると、このブロックに取り込まれたトランザクションは取引が完了したと見なされ、それらのトランザクションは未承認のステータスから承認のステータスへと変更され、取引が実行されたものとして確定されます。

⑥流通

最後のビットコインの流通量の確認です。ビットコインは現在はマイナーがブロックを作成するたびに12.5BTCが自動生成される仕掛けとなっていて、ブロックは現在の平均では約10分に1個のペース作成されていることから、約10分に12.5BTCが新しく供給されることになります。このブロックの作成と同時に生成される新たなビットコインは、マネタリーベースになぞらえて、コインベースと呼ばれています。

実はこのコインベースはビットコインが創設されたはじめの頃には50.0BTCでありましたが、ビットコインのルールで、コインベースは一定のルールで半減するようになっています。そのルールによりますと、ブロックは作られた順番に番号が振られており、これはブロック高と呼ばれています。そしてビットコインのルールでは、ブロック高が21万を数えるごとに、コインベースが半減することになっています。

実際に、2009年1月に0番目のブロックがマイニングされたのち、2012年11月28日に20万9999番目のブロックがマイニングされ、同じく2012年11月28日に21万個目のブロックが発見されその時からコインベースは25BTCとなり、2016年7月9日に42個目のブロックがマイニングされコインベースは12.5BTCとなり現在に至っています。

ただしこの連鎖は、692万9999番目のブロックのマイニングで終了するように設計されており、コインベースの創出はここで止まり、発行総量は上限約2100万BTCとなっており、ビットコインの流通システムは金本位制に近似しているものとなっています。

 

一旦のまとめ

以上本稿の目的とした、ブロックチェーンの分かりにくい論点の再構築を試みてみましたが、第三者のお読み頂いた段ではこの目的がどこまで達せられたかは甚だ不安なところです。しかしながら、一般的にはあまり紹介されることのないハッシュ値の具体的な例示や、二重払の防止、改竄の防止がどの段階でどのようなアイデアで構築されているのかを対応関係を明確にし、まとめることができたなど、一定の価値は作れたのではないかとも思います。
そして、そもそもの本稿の前提となる研究取り組みの動機は、今後の会計制度や登記システムへのブロックチェーンの影響を考察するという点にあったことを振り返りますと、この技術は十分にこれらを変えていける技術的インフラは有りと認識できる基礎整理になり、その点では研究チームとしても有意義なまとめで、以後の研究継続につなげていけるものと思っております。
最後に、返す返すもS.Nakamoton の知見には敬服いたします。

以上

 

(参考文献)
「仮想通貨とブロックチェーン」 木ノ内敏久 日経文庫
「ハーバードビジネスレビュー2017年8月号 特集:ブロックチェーンの衝撃」
「Bitcoin:A Peer-to-Peer Electronic Cash System」 S.Nakamoto
「徹底理解 ブロックチェーン」 Dnniel Drescher インプレス

 

 

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