司法書士受講生専用
平成22年度司法書士試験 講評について
[10-11-20]

                     司法書士アカデミー受講生各位

 

【平成22年度 司法書士試験の概要】

 

<午前の部>

・各科目の出題数

前年度と同じく、民法の出題数が20問、商法(会社法)の出題数が9問、憲法、刑法は従来どおり各3問ずつの出題でした。

 

【憲法】

分野別内訳

人権:2問、統治:1問

出題形式

組合せ問題:2問

対話問題:1問

個数問題:1問

空欄を補充する問題:2問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題:1問

学説・推論問題:2問

 

【本年度の特徴】

① 3問中2問が空欄を補充する形式の問題。

② 3問とも論点自体は有名な典型論点と言える。

③ 第2問は、判例の結論だけでなく、判旨まで踏み込んで問われた。また、個数問題であったこともあり、正答率は若干低め(49.5%)となっている。

④ 憲法が出題されて以来、初めて地方自治の分野から出題がなされた(第3問)。

 

【今後の対策】

① 学説・推論問題については、従来どおり、典型論点について各説の根拠とそれに対する批判を押さえる。

② 判例の趣旨を問う問題については、判例付きの六法等で、各論点ごとの典型・有名判例の結論だけでなく、判旨の部分も読み込んでおく。

③ 統治分野の対策として、条文もしっかりと確認しておく。


【民法】

分野別内訳

総則3問、物権4問、担保物権5問、債権4問、親族1問、親族相続混合1問、相続2問

出題形式

組合せ問題:16問

対話問題:5問

個数問題:3問

比較問題:4問

計算問題:1問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題:11問

学説・推論問題:1問

 

【本年度の特徴】

① 前年度と同様、判例の趣旨を問う問題が非常に多い。

② 個数問題が3問と多かった反面(第8問、第15問、第20問)、純粋に学説の見解を問う問題は1問と少なかった(第14問)。

③ 過去問既出の論点及びその+αの範囲の周辺論点を問う問題が非常に多い。

④ 第10問において、土地の利用権全般を比較する観点からの出題がなされる等、条文の正確な知識も要求されている。

⑤ 第17問において、動産・債権譲渡特例法の内容が肢単位で出題された。これについては試験委員が今後予定されている民法の債権法分野の改正を意識していると見ることもできる。

 

【今後の対策】

① 過去問で出題されている論点は確実に押さえる。その上で、答練・模試等を利用して未出題の判例等、+αの論点を効率よく押さえる。

② 条文の確認、暗記を怠らない。

③ 学説・推論問題対策の一環として、条文の意義、制度趣旨や判例の理由の部分等、基礎的なことをテキストや判例付きの六法等で確認しておく。


【刑法】

分野別内訳

総論:1問(共犯)、各論:2問(強盗罪、暴行罪・傷害罪)

出題形式

組合せ問題:3問

対話問題:0問

個数問題:0問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題:3問

学説・推論問題:0問

 

【本年度の特徴】

① 3問とも全て判例の趣旨を問う問題。

② 総論の共犯については、2年に1度は出題されるという傾向どおりの出題(第24問)。

③ 各論については、必ず財産罪(本年度は強盗罪)から出題されるという近年の傾向どおりの出題(第25問)。

 

【今後の対策】

刑法は、学問として捉えた場合、その学習範囲は広範であるが、司法書士試験の出題傾向から見れば、出題される論点はほぼ一定していると言える。過去問を反復して頻出論点を優先的に押さえ、答練・模試等で未出題の判例を押さえるというスタンスで、効率の良い学習を心がけるようにしたい。

 


【商法・会社法】

分野別内訳

設立1問、株式1問、機関3問、会社の計算1問、新株予約権1問、訴訟1問、商法1問

出題形式

組合せ問題:9問

対話問題:1問

個数問題:0問

比較問題:4問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題:1問

学説・推論問題:1問

 

【本年度の特徴】

① 類似の制度を比較する問題は3問出題された(第27問、第30問、第35問)。

② 第28問において、社債・株式等の振替に関する法律の内容が肢単位で問われた。しかし、内容としては、肢ア、イ、オが会社法の条文知識で解ける問題であり、肢の組合せから正解が導けるものであった。

③ 第31問において、対話問題の形式で学説の見解を問う問題が出題された。

④ 第34問において、旧商法下での判例に関して判例の趣旨を問う問題が出題された。また、比較的最近の判例も出題されている(肢ウ、最判平20.2.26)。

⑤ 前年度と同様、商法から1問出題があった(第35問)。ただし、内容としては問屋と商事仲立人の異同に関する問題であり、これまでの商法の出題傾向からしても、これに対応することは困難であったと思われる(正答率28.0%)。

 

【今後の対策】

① 頻出論点(「設立」「株式」「機関」「役員」「会社の計算」「持分会社」「組織再編」)に関する条文知識は確実に押さえる。

② 比較問題に備えるために、類似する制度は図表等を用いて条文を丁寧に確認しておく。

③ 旧商法時代の判例について、過去問の範囲で確認する。

④ 商法に関する論点も基本テキストや過去問の範囲で押さえておく。


<午後の部・択一式>

・各科目の出題数

前年度と同じく、不動産登記法の出題数が16問、商業登記法の出題数が8問、民事訴訟法の出題数が5問、供託法の出題数が3問、民事保全法、民事執行法、司法書士法は従来どおり各1問ずつの出題でした。

 

【不動産登記法】

分野別内訳

総論:6問、各論:10問

出題形式

組合せ問題 15問

対話問題 1問

個数問題 1問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題 0問

学説・推論問題 1問

空欄を補充する問題 2問

 

【本年度の特徴】

① 過去問で繰り返し問われている普通抵当権、登録免許税に関する出題がなかった。

② 例年どおり典型論点からの出題が中心であった。

③ 近年は総論からの出題が目立っていたが、今年は少なめであった。

④ 過去問で既出の論点及びその+αの範囲の周辺論点を問う問題が非常に多い。

⑤ 組合せ問題が中心だが、穴埋め形式など、出題形式がユニークな問題が数問出題された。

 

【今後の対策】

① 過去問を反復学習し、過去問の肢は確実に正誤の判断ができるようにする。

② 過去問とは違う問われ方をされても正答できるように、頻出論点を中心に、テキスト、条文、先例に当たり、理解に努める。

③ 平成16年改正の論点に関する条文知識、先例を確実に押さえ、答練・模試等を利用して知識を確実に定着させる。

④ 不登法であっても、条文の確認、暗記を怠らない(主に総論対策のため)。


【商業登記法】

分野別内訳

役員変更:1問、募集株式の発行:1問、本店移転:1問、

登記の更正・抹消:1問、清算:1問、印鑑証明書の交付:1問、

持分会社:1問、一般社団(財団)法人:1問

出題形式

組合せ問題 7問

対話問題 0問

個数問題 1問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題 0問

学説・推論問題 0問

登記記録型問題 1問

※ 共通の注意として、「問題文中の株式会社には特例有限会社を含まない」とされた。

 

【本年度の特徴】

① 記述問題式において新設分割が出題されたためか、択一式では、頻出論点である設立、組織再編については出題されなかった。

② 前年に引き続き特例有限会社に関する問題は出題されなかった。

③ 第28問において、登記記録問題が出題された。

④ 前年に引き続き総論からの出題の比率が高かった(前年3問、今年2問)。

⑤ 第35問において、改正後初めて一般法人に関する問題が出題された。

 

【今後の対策】

① 頻出論点である(「設立」「株式」「機関」「役員」「持分会社」「組織再編」)に関する条文知識は確実に押さえる。

② 総論についても、過去問、テキスト、条文で頻出論点を中心に確実に押さえる。

③ 一般法人について、基本通達やテキストで、基本的な事項を中心に確実に押さえる。


【民事訴訟法】

分野別内訳

訴訟能力:1問、共同訴訟:1問、訴訟手続の中断:1問、

処分権主義:1問、裁判によらない訴訟の完結:1問

出題形式

組合せ問題 5問

対話問題 0問

個数問題 0問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題 1問

学説・推論問題 0問

 

【本年度の特徴】

① 個数問題や単純正誤問題は1問もなく、全て組合せ問題であった。

② 近年は正答率が低い傾向が続いていたが、今年は過去問レベルの出題であり、5問とも正答率はほぼ60%以上と高かった。

③ 証拠など、過去問で繰り返し問われている論点からの出題は少なかった。

 

【今後の対策】

① 過去問を反復学習し、過去問の肢は確実に正誤の判断ができるようにする。

② 民事訴訟における諸原則(公開主義、口頭主義、弁論主義、処分権主義など)を、過去問で問われているものを中心に正確に理解する。

③ 頻出論点を中心にテキスト、条文、判例に一通り当たる。


【民事執行法】

分野別内訳

執行抗告及び執行異議:1問

出題形式

組合せ問題 1問

対話問題 0問

個数問題 0問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題 0問

 

【本年度の特徴】

例年どおりの典型論点からの出題であった。過去問で問われたことのない肢もあったが、組合せから正答を導くことは容易であった。

 

【今後の対策】

民事執行法は、学習範囲は広範であるので、過去問でよく問われている頻出論点を、テキスト、条文で優先的に押さえるのが効率的である。また、条文レベルの出題がほとんどであるので、答練・模試等で出題された論点についても、条文にも当たるようにしたい。


【民事保全法】

分野別内訳

仮処分命令:1問

出題形式

組合せ問題 0問

対話問題 0問

個数問題 1問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題 0問

 

【本年度の特徴】

過去問レベルの内容であり、条文をしっかり読んでいれば正答できる出題であったが、個数問題であったため、問われている内容に比べて、正答率は29%と低かった。

 

【今後の対策】

過去問を反復学習することはもちろんであるが、民事保全法は、条文がそのまま出題されることが多いので、過去問に加えて条文をしっかり読んでおくことが有効である。条文数は67条と少なく、他の科目と関連する部分も多いので、他の科目をしっかり学習していれば、それほど時間をかけることなく対応することができる科目である。


【供託法】

分野別内訳

弁済供託:1問、担保(保証)供託:1問、執行供託:1問

出題形式

組合せ問題 3問

対話問題 0問

個数問題 0問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題 0問

 

【本年度の特徴】

① 3問とも過去問レベルの典型論点からの出題であり、正答率はいずれも非常に高い。

② 弁済供託は、ほぼ毎年出題されているが、今年も出題された(第9問)。

③ 第9問は出題ミスにより、正解なしの問題となったが、全員を正解とすることとされた。

 

【今後の対策】

① 過去問の内容がそのまま出題される傾向があるので、何度も反復学習する。

② 過去問でよく問われている先例と供託規則の条文知識を押さえる。

③ 頻出論点を中心にテキスト、条文に一通り当たる。


【司法書士法】

分野別内訳

司法書士法人の社員:1問

出題形式

組合せ問題 1問

対話問題 0問

個数問題 0問

問題文冒頭に「判例の趣旨に照らし」が付く問題 0問

 

【本年度の特徴】

平成15年以降は、司法書士の業務(3条)や業務を行い得ない事件(22条)、司法書士法人(41条、42条)からの出題が中心となっているが、この近年の傾向どおりの出題であった。

 

【今後の対策】

① 平成15年以降の出題傾向に沿って、テキスト、条文、過去問で頻出論点を優先的に押さえる。

② 平成15年以前によく出題されていた論点(登録や欠格事由等)については、過去問を題材にして、テキストと条文に一通り当たる。

③ 条文の確認、暗記を怠らない。

 

 

【午後の部(記述)】

 不動産登記については、別紙の数が昨年よりも減少し、近年にない事実関係との混合形式での出題であった。内容的には、数次相続による移転、相続人不存在、抵当権の効力を所有権全部に及ぼす変更と択一式と記述式をバランスよく学習し、記述式対策をしっかり行っていれば難しい内容ではなかったと思われる。問題文を正確に読み取り、問題文全体を意識した解答力を養うことが求められる。
 商業登記については、組織再編からの出題であり、新設分割の登記の問題であった。あまり出題実績のないところからの出題であったため、驚いた受験生が少なくなかったと思われる。出題内容は難しかったかもしれないが、問題を全体としてとらえることができれば、登記申請自体は定型的であり、ある程度の点数を取ることができたであろう。
 記述式全体として振り返ると、商業登記法での高得点を狙うのは難しかったのではないだろうか。そのぶん、不動産登記法ではオーソドックスな問題であったためある程度の得点を稼げた感がある。やはり、全体をバランスよく学習し苦手分野を作らないことが重要である。そうすれば、想定外の問題の出題があったとしても落ち着いて望むことができる。

 

                       クレアール司法書士アカデミー受験対策室



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