1. 司法書士試験とは
司法書士は、「街の法律家」とも呼ばれる法律専門職のひとつです。従来は不動産登記と商業登記の申請代理が主な業務でしたが、近年では簡易裁判所での訴訟代理や成年後見などにも活躍の場を広げており、その役割には多くの期待が寄せられています。
この司法書士となる資格を取得するための試験が、司法書士試験です。受験資格に制限はありません。資格認定試験ではなく競争選抜試験ですので、得点よりも順位が合否を分ける試験ということがいえるでしょう。司法書士という職業が広く知られるようになったこともあり、ここ数年は受験者数が増加していますが、同時に合格者数も増加しているため、合格率は3%をやや下回る程度で推移しています。
2.筆記試験の概要と試験科目
筆記試験では、五肢択一形式で70問(午前と午後に各35問)、記述形式で2問が出題されます。筆記試験合格者のほぼ全員が口述試験に合格しますので、筆記試験が司法書士試験の本体といってもいいでしょう。出題範囲は憲法、民法をはじめとして11科目に及び、他の法律系の資格試験に比べてかなり広いものとなっています。また、午前と午後の択一式問題、および記述式問題にそれぞれ「合格基準点(足切り点)」が設定され、これらの三項目のうち一つでも基準に達しないものがあれば、合計得点にかかわらず不合格とされてしまうという試験制度上の難しさもあります。しかし、出題される問題の大半は条文に即した重要論点の理解を問うもので、難解な知識が求められているわけではありません。もちろん、誰もがすぐに解けるほど簡単なものではありませんが、適切な方法で学習をすれば、早ければ1-2年で合格に必要な力をつけることは可能です。その意味では、司法書士試験は、日々の学習の成果がストレートに反映される試験と言えるでしょう。
1)民法
民法は民事関係の法律の基本となる重要なもので、司法書士試験の試験範囲に属する法律のうち、憲法、刑法、司法書士法以外のすべての法律は民法を前提としています。そのため、民法の学習は、同時にこれらの科目の基礎学習を兼ねることになるため、重要論点は確実に理解できるまで繰り返し学習する必要があります。また、司法書士試験でも最も多い21問が出題され、午前の択一試験での出題の6割を占めることから、民法での高得点が午前の部の科目での足切りをクリアする前提条件となっています。民法各分野における近年の出題比率は、総則、債権、親族・相続編から各4問、物権編から9問となっており、司法書士業務と特にかかわりの深い物権編(所有権や抵当権についての規定)からの出題が目立ちます。
2)商法・会社法
受験案内では科目名が商法となっていますが、実際には会社法の試験です。会社法は平成18年に施行された新しい法律で、会社法での判例の蓄積もこれからという状態ですので、平成20年度試験までは条文自体の理解を問う問題が大半を占めてきました。この傾向はしばらくは継続すると考えられますので、現状での対策としては、条文の内容を正確に理解して記憶することが重要となります。しかし、会社法は条文の数が多く、条文自体難解なものも少なくありませんので、やみくもに条文を読み込むのではなく、予備校の講義や答練を利用するなど、ポイントを押さえた効率的な学習を心がける必要があります。
3)不動産登記法・商業登記法
択一式試験における不動産登記法と商業登記法からの題の出題は合わせて24問で、午後の択一式試験の約7割を占めています。そのため、これらの科目で確実に得点することが、午後の部の科目の足切りをクリアする前提条件となります。登記という司法書士の主要業務に直接かかわる科目のため、条文だけでなく施行規則や先例からも出題がありますが、繰り返し出題されるような先例の数は限られており、手に負えないということはありません。他の法律科目と同じく、条文に即した基本事項の理解を心がければ、成果を挙げることができるでしょう。
また、不登産登記法と商業登記法は、記述式問題の出題科目でもあります。記述式問題とは、与えられた事実関係や書類の記載から登記すべき事項を判断し、指定された登記申請書の記載事項を解答欄に記入するという形式の問題です。登記の可否の判断に必要な知識はほぼ択一の学習で対応することができますが、申請書の作成という面での記述式問題固有の課題への備えは欠かせません。具体的には申請書に記載する定型的な文言などの習得ですが、これらはすべて自分の手で解答欄に記入することになるため、最も精度の高い記憶が要求されることになります。
さらに、不動産登記法と商業登記法に関しては、午後の部の科目で択一式と記述式問題が同時に出題されることから、時間配分という特有の難しさも生じます。特に、ここ数年は記述式問題の情報量と記述量がともに増加しているため、記述式問題を解くための時間をどう確保するのかが合否を分けるという状況も見られるようになってきました。その結果、最近の試験では、正確さだけでなく、解答のスピード力が最も強く要求される科目となっています。
3)憲法、刑法、民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、供託法、司法書士法
これまで紹介した科目が「主要4科目」と呼ばれるのに対して、憲法をはじめとするそれ以外の7科目は「マイナー科目」とも呼ばれています。確かにこれらの科目からの出題は、択一式試験問題70問中17問にとどまりますが、合格基準点と足切点がともに高い水準で推移している現在の司法書士試験においては、おろそかにすることはできません。とはいえ、主要4科目の重要性は明らかですので、本試験の解答だけでなく、日々の学習においても効率を意識して取り組まなければならない科目といえます。
3.合格に向けての取り組み
では、どのような取り組みを行えば、司法書士試験の短期合格を実現することができるのでしょうか。それぞれの試験科目についてのポイントは既に紹介してきましたが、司法書士試験合格に向けての学習そのものについても検討してみましょう。
司法書士試験の特徴は、これまで述べてきたとおり、広い出題分野から、それぞれの分野における基本事項の理解を問う出題が大半を占めるということにあります。したがって、試験に合格するためには、必要な論点を過不足なく、確実にマスターすることが何よりも重要です。具体的には、頻出論点の把握、不要な知識のそぎ落とし、各科目への適切な時間とエネルギーの配分、日々の学習を通じての知識の定着とその使い方の習熟などが必要となります。しかし、これらを独力で行うことは多くの困難を伴います。自分の力を客観的に判断することは、誰にとっても難しいものだからです。
また、効率的な勉強を心がけたとしても、相当量の学習が必要となり、また年に一度しか試験が行われないため、合格までに一定の時間がかかることは避けられません。そのため、学習を継続すること自体も大きなテーマとなるでしょう。合格を目指す以上は学習の継続は当然だと思うかもれませんが、効果的な学習を1年2年と継続することは、決して易しいことではありません。
以上の点を考えると、予備校の利用も短期合格に向けての現実的な選択肢の一つといえるでしょう。事実、予備校に蓄積されたノウハウを利用すると共に、講義や答練から自分に必要な課題を見つけ出してこれを克服することが、司法書士試験の特徴に適った学習スタイルといえます。
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