「合格へのきっかけ」

後藤 知弘さん

{ プロローグ }

2002年6月。

石井和人先生のガイダンスを聞きに初めてクレアールを訪れた。

当時、私は理科系の大学院へ入学した直後だったが将来の就職のことを考えて 簿記検定の勉強を始めていた。 最初は半ば義務感で勉強していたものの、 その面白さ、凄さに引き込まれすっかりはまってしまい、

6月の検定までの わずか数ヶ月で3級から1級までを自分で本を買ってきて勉強していた。

といっても、そんな状態で検定に合格する力が身につくはずもなく、 6月に受験した1級は当然不合格。

検定のために勉強していたというよりは、 興味があって楽しんでいたという方が正しいのかもしれない。

クレアールは簿記検定の会場で配られたパンフレットで知った。

「非常識合格法」という怪しげな響きと 当時あまりよく知らなかった公認会計士という職業への興味から

ガイダンスに足を運んでみることにした。

ガイダンスを聞いてから、 「非常識合格法」という考え方に共感し、 会計士を目指してみようかと思ったし、

対応して下さった事務局の融通の利いた対応に クレアールでやってみようと思ったものの、 二の足を踏んでいた。 理由はいくつかあったが、 そのうちの一つはクレアールの

上級クラスは簿記1級までの知識を前提としていること。

当時の私にはかなり無理があった。

ここは、1級までの勉強をきちんとするために、合格目標年度を 一年遅らせるべきかもしれない。

しかし、1年でも早く合格したかった私は 見切り発車であることを承知で 7月から基本マスターの授業を受けることにし、 開講するまでの間に必死に勉強することにした。

\section*{ 新たな決意 }

月日は流れ、一年後の短答式本試験。

結局、見切り発車だったのか 簿記をなかなか得意科目にすることが出来なかった為、 理論科目の勉強にも身が入らず、 3月の短答答練では偏差値で40前後しか取れなかった。

しかし4月の短答模試では何とか平均点近くを取り、 5月の最後の短答模試では偏差値で50台後半を確保し 猛然とラストスパートをかけた。

成績ってこんなに伸びるんだと自分で驚くと同時に、 妙な自信が芽生えだし、短答合格へ確信を覚えていた。

しかし、結果は玉砕。

今にして思えば、 本試験で点が取れる勉強ではなく答練で点を取る勉強をしていたので、

合格するわけが無いと思うし 当然の結果だったと思うが、一年前の私には受け入れ難い事実だった。

今、何をすべきか。

簿記1級は11月の検定で取得していたものの、簿記に自信が持てなかった。

簿記の基礎力がないのかもしれない。

やはり、合格目標年度を一年遅らせるべきだったのかもしれない。 ちょっと後悔したものの、私は立ち直りが早かった。

こうなったら、基礎固めをしっかりしよう。思い切って3級から復習しよう。そう決意したもののさすがに本棚から過去に使っていた本を使う気にはなれなかったので、 翌朝本屋へ行き新たな本を購入した。

当たり前と言えば当たり前だが、本はスラスラと進んだ。

この調子で、2級もやって1級、基本期の復習・・・と思いを馳せていた。

\section*{ 思わぬコトバ }

だが、3級から復習を始めたその日の夜、師匠 ( 塾 ( 現在は合格ゼミ ) のチューター ) から思わぬことを言われた。 「今は難しいことをやった方が良い」

「今、基礎をしっかり固めて基本期が始まったら応用期のことをやろうと思っても基本期が始まったら基本期のことで命一杯になっちゃうから、

財務諸表論でいえば金融商品、監査論でいえば報告論、商法でいえば企業結合、 今年あまり手をつけられなかったところをやった方が良い」 さて?どうするか。私は悩んだ。

100人の合格者がいれば100通りの勉強方法がある。 絶対的な勉強方法は無い。

自分の考え方を貫くべきだ。 人間自分の考えと全く逆のことを言われると反論したくなるものである。

だが、私は短答不合格者の立場である一方、 師匠は論文式試験に合格し会計士補として社会に出ているという紛れもない事実があった。

「受験生にアドバイスできるのは合格者だけ。素直に耳を傾ける。」

石井和人先生のそんな言葉が悩む私の脳裏をよぎった。

自分の考えを貫いた結果、失敗した。短答不合格となった。

それは紛れも無い事実だった。 ここは自分の考え方を改めるべきなのかもしれない。

そうと決まれば話は早かった。 その日のうちに、3級からの復習計画は封印し、買ったばかりの3級テキストは本棚に収められた。

基本期が始まるまでに3級から復習するのではなく応用答練の復習からすることにした。 当面の目標は「基本期の簿記演習1回目で満点を取ること」

\section*{ 簿記強化月間 }

翌日から簿記応用答練の復習が始まった。

全部で20回、40問もあったので、 とりあえず前半10回、全20問に復習対象を絞ることにした。

どのような順番で解いていくかがネックだったが、 1回目から順番に解いていくのは芸が無い。

一分野ずつ潰していった方が効果的と思ったため、 というよりは、色々な分野に手を出すほどの余裕がなかったため、 今日は連結と決めれば連結ばかり4題、 今日は特殊商品売買と決めれば特殊商品売買の問題ばかり4題と 毎日テーマを決めて解いていた。

結果としてこの解き方は成功だった。

同じ分野の問題を一日中解いているため、その日最初に解いてモヤモヤっとした部分が 後に別の問題を解いている時に理解できたことも多々あった。

この時心がけたこととして、 問題用紙、解答用紙はシャーペンで薄く書き、消しゴムで消して

再利用したりせず、 毎回必ずコピーを取って使用するようにした。

当然お金はかかり大量のコピーカードを消費し、 大量のコピー用紙も消費してしまうため地球に優しくないが、 再利用する際にかすかにシャーペンの字が見えてしまうと復習の効果が半減すると

思ったからである。

いざ始めてみたものの、道のりは決して順調ではなかった。

簿記の勉強しかしていないのにもかかわらず、 1日に2問しか解けなかった日もあった。

考えてみれば、時間を気にしても仕方ないので、 始めの頃は時間を気にすることなく、 むしろ理解すること、財務諸表の構造を理解すること、

自分の頭の中に簿記のスキームを作ることに重点を置いた。

月日は流れ、 迎えた簿記演習一回目。本試験でもないのに異常な程、緊張してしまった。

結果は何とか満点が取れた。

嬉しさよりも安堵感が漂った。

簿記に対してほんの少しだけ自信が持てた。

\section*{ 簿記が出来ると楽になる }

その後、応用答練の後半10回分の復習を進めた結果、 簿記は得意科目に変わっていた。

簿記が出来るようになると、かなり気が楽になった。

正直、ここまで楽になるとは思わなかった。

以前は理論科目を勉強していても計算科目が気になって 身が入らなかったが、

理論科目の勉強にじっくりと腰を据えて取り組めるようになった。

自習室では多くの人が電卓を叩いている。

それだけ、簿記という科目は受験生にとって重い科目だと思うし、

早めに得意にしておきたい科目なのだと思う。

簿記の答練の日に答練に備えて 簿記の問題を自習時間に解く必要が無くなった。

簿記は1日1題解けと言う。答練で2題解くのだから

答練の問題以外に何か解く必要があるのか。

本来その時間は理論科目の勉強をすべきであろう。

当たり前のことのように思えるが、そこまで余裕を持てないのが現実である。

私はやっとの思いで簿記を得意に出来たため 2年目は理論科目の勉強に十分な時間を充てることが出来た。

仮に、あの時全く逆の選択をし3級からの復習計画を実行していたらどうなっていたか。おそらく、計算科目も固まらず、理論科目にも手がつかず、

結局、7教科の渦に巻き込まれ、 今こうして合格体験記を書いている状況には無いと思う。

私にとってあの時の師匠の言葉が合格への大きなきっかけとなったことは間違いない。

素直に耳を傾けたおかげで私は救われた。

\section*{ クレアールの良さ }

多くの人があげるように、

クレアールの良さは非常識合格法に基づいた薄いテキストであり、 豪華講師陣にあると思う。

薄いテキストは勉強する量が少ないというだけでなく、 全体像を把握するのが容易であり、 各教科のスキームを作るのが容易になるのと同時に、 テキストに掲載されている範囲が狭いため、 頭を使わざるを得ず、自然に応用力がつく というとても大きなメリットがあった。

厚いテキストを使っていれば、 テキストそのままの問題が出題される可能性は高くなるが、

その分だけ応用力はつかなかっただろう。

細かいところが出題されればされるほど、 厚いテキストではなく、 非常識合格法に基づいた薄いテキストが威力を発揮すると思う。

しかし、それ以上に クレアールには きっかけをつかむチャンスが沢山あるというメリットがある。

もちろん、きっかけは勉強法についてだけでは無い。

合格への最初のきっかけは、間違いなく会計士を目指した理由であり、 クレアールに申し込みをしたときの気持ちであろう。

しかし、その時の気持ちだけで一年間勉強し続けられる人がどれだけいるだろうか。

多くの人は自分の思い通りに進まず投げ出したい気持ちになるのではないだろうか。

そんな時でも、クレアールにはやる気にさせてくれるきっかけが転がっていた。

ライブクラスであれば、大抵一日中5階の教室で勉強できるので、 朝早くから毎日頑張っている人たちの姿を見ながら 自分自身を奮い立たせることが出来た。

大規模な学校ではないので、何人もの頑張っていた人たちが合格する姿を見ることが出来、来年の自分の姿に重ね合わせた。

さらに、石井和人先生の非常識合格法徹底セミナー・合格ゼミなどを通じて勉強法についての話を聞くことが出来た。

また、合格ゼミを通じて、新人会計士補の仕事の様子などを知ることが出来、 憧れを抱いていた。

私は他校のことは良く知らないのでなんとも言えないが、 クレアールのアットホームなところが、このようなメリットを生んでいるのだと思う。

\section*{ エピローグ }

今、つくづく感じるが、合格のために一番必要なのは 謙虚さではないかと思う。

人間誰しも自分の考えはあると思うし、自分の考えを主張しそれを 貫き、わが道を行くことは大切なことかもしれない。

しかし、会計士試験においてはそれは封印すべきだろう。

会計士になる為の選抜が試験という形態で行われる以上わが道を行くことは 受験生ににはとても危険な行為であるからだ。

最後に、素晴らしい講義、薄いテキストを提供してくださった クレアール会計士アカデミーの豪華先生方、

なおいろいろと願いを聞いてくださった佃さん、 わがままに耳を傾けて下さった下川さんをはじめとする事務局の方々、 そして「心配してないからね」と言いながらも一年半ほどの間、何かと御心配して下さり合格への大きなきっかけを下さった、師匠こと風間宏規師に感謝申し上げます。